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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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73話

高級そうな服に身を包んだ男性こと、アダム・フォン・ガストン子爵。

彼の言葉により、場が静寂に包まれた。


(ちっ、アダム本人が来たか。代理で済ませれば良かったものを…しかしどうやって?奴が治めるケイレブ(領都)から、ここまで来るのに普通だと1日掛かり…そうか、小心者でありながら金や欲にがめつい奴の事だ。早朝にでも報せを受け、急ぎ赴いたが正解だろうな。)


ガイウスの想像の通り、アダムは自身が治める領都ケイレブから東。若しくは南東。

コースト、シャウエ、コーリンを経て、ここサルーンに到達。

日が昇るよりも前の時間に緊急との名目で伝達が入り、最低限の準備を済ませ、都市や街毎に早馬を乗り継ぎ、西門にいる門番達の制止を振り切るとの形で。


尚、彼の頭の中はフォレストドラゴンで一杯。

何が何でも接収し、爵位向上の糸口にする気満々とも。




無論、その様な自分勝手な真似を凛が許すはずもなく。


「…美羽。悪いんだけど、翡翠、楓、イルマとでバーベキューを進めて貰っても良いかな?残りのメンバーは美羽達のフォローをお願い。」


「マスターはどうするの?」


「僕は火燐と雫と一緒にちょっとお話(・・)して来る。ガイウスさん、後はお任せしますね。」


「うむ、相分(あいわ)かった。それでは、ただ今を以て今回の催し物(バーベキュー)を開始とする!」


『……ウォォォォォォオオオオオオオオ!!』


アダムを眺めながら美羽やガイウスに指示や提案を出し、上がる大歓声。


その間、前方にいる彼は「巫山戯(ふざけ)るな!私が許可していないのに出来る訳ないだろうが!」

「許さんぞ!今すぐ発言を撤回しろ!アレは私のものだ!」等と宣うも、誰1人として相手にされずただただ雑音として掻き消されるだけ。


人々はお目当てのグリルへ向かうのに全神経を注ぎ、そのグリルを担当する翡翠達が点火。

続けて調理台の上に肉の塊を…とのタイミングで美羽が慌てて駆け出し、凛はそんな彼女を見送る。


振り返り、アダムがいる方向へ踏み出すや、不敵な笑みの火燐。

澄まし顔の雫が後ろに付く。




凛はアダムから20メートル程手前で停止。

顔を真っ赤にする彼から、怒りをぶつけられた。


「貴様ぁ…私の断りもなしに勝手な真似を━━━」


「何故、貴方の許可がいるのですか?」


「何故…だと?はぁ、これだから下賎(げせん)の者は…その様な事も分からんとはな。」


「そりゃこっちのセリフだっつーの。あの肉は凛がフォレストドラゴンを倒して得たってのに、なんでてめぇなんぞに渡さなきゃいけねぇんだ。つか、そもそもお前誰だよ。」


この言葉にアダムは「は?」と固まるのだが、(美人に関心を持たれたと勘違いし)仕方ないなぁと言いたげな様子で話し始める。


因みに、彼は美女に目がない。

しかも━━━黙ってればとの注釈は付くが━━━目の覚める様な美しさとあって、美少女枠の凛と雫に(なび)こうとしないのはそれが所以(ゆえん)


「ふん、この私を知らないとはな。良いか、私は━━━。」


「あ、いや。別に、お前の事が知りたいとかで言った訳じゃねぇんだけど…。」


しかし火燐が気まずい様な。

ほんのちょっぴり居た堪れなさそうな呟きにより一帯を覆う、何とも言えない空気。


体をぷるぷる震わせるアダム。

羞恥と(いきどお)りから来るもので、兵達は「あんた何してくれてんの!?」も表現せんばかりの目を火燐に向ける。


「これは酷い…」と凛が苦笑いになるのも仕方ないと言わざるを得ず、火燐が強引に話を進める。


「取り敢えず、引き取った肉をどう使おうがオレ達の勝手。」


「ん。これから開かれるのは、落ち込んでる(街の)皆を励ます為のバーベキュー。」


「「関係ねぇ(ない)部外者(貴方達)は引っ込んでろ(黙ってて)。」


さも自然な風に乗っかった挙げ句、ハモらせる雫。


「えっと…今日はお祝いみたいなものですし、肉が欲しいのでしたら人数分お渡し致します。なので折角来て頂いたところを申し訳ありませんが、このままお帰り願えないでしょうか?」


ちょっとだけ困惑気味の凛が齎すは、一見すると提案。

実際は楽しい気分なのに水を差すな、素直に引けば見逃すとの譲歩に他ならない。


その点に気付いたのだろう。

視線の先を火燐から彼に変えたアダムが、徐々に苛ついていく。


一方の兵士達。

「ドラゴン?」「あの子達の内の誰かが倒したのか?」「まさか」「とてもそんな風には見えんぞ」「だよな」と言った感じで楽観視。

ざわついているだけで、全く緊迫した様子は見られなかった。


むしろ凛達の容姿から、たまたま弱り切った状態のフォレストドラゴンを倒した程度にしか思っていない。

アダムもそれは同じ。

女3人だけで何が出来ると踏み、やがて自分を馬鹿にした(と本人は思っている)事への怒りから身の程を分からせ(適当に痛め付け)、彼女らを捕縛。

見せしめも兼ね、手元に置くか奴隷にして売るとの皮算用を立てる。


「構わん。お前達、やれ。」


アダムの中で既に勝ちは確定。

これだけの人数差は覆しようがないとの考えから来ている。


怒りを鎮める目的でなのだろう。

顔を左手で覆い、反対の手でしっしっと追い払う仕草で兵達に指示。

兵達は「あまりにも多勢に無勢では?」との考えから顔を見合わせるも、下された命令は絶対。

すぐに正面を向き、掛け声と共に走り出す。


今のやり取りで幾分か落ち着いたのか、アダムが(左手で顔を覆ったまま)首を左右に振る。


「全く…この私の手を煩せるから惨めな結果に━━━」


『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』


しかし言い切るよりも早く悲鳴が聞こえた。

凛、火燐、雫の3人ではなく兵達の、だが。


「…は?」とアダムが顔を上げた瞬間。

前を走っていたはずの複数の兵が頭上を飛び、そのまま後ろへ向かうとの光景を目の当たりに。


数秒後、ややぎこちない動きで視線を正面へ。

そこにはいつの間にか水色の()の少女がおり、右手に持つ(ブルー)をこちらへ向けているとの状況だった。




「ひ、怯むな!相手はたったの3人だぞ!」


1人の兵士の叫びで我に返った兵達(ついでにアダムも)が(せわ)しなく足を動かすのと対照的に、余裕の表情でてくてく歩く雫。


「喰らえ!」


先頭にいた兵士が繰り出した攻撃が当たる━━━かと思いきや、少し重心を動かす形でスッと回避。


「せいっ!」

「はぁっ!」

「だぁぁぁ…がっ!」


立て続けに攻撃を仕掛けるも軽々と(かわ)され、3番目の者に至っては風系初級魔法エアブロウによる反撃(カウンター)を喰らう始末。


「…クソ、馬鹿にしやがって!」


直径50センチ位の風の塊をぶつけられ、10メートル近く吹き飛ばされた兵士が上体を起こし、忌々しそうな表情で再び挑む。


その後も、雫はまるでアイススケートみたくスイスイ~と兵達の攻撃を避け、隙あらばドウドウドウッとエアブロウを発射。

兵達の体力を奪い、弱らせ、やがて戦闘不能へを繰り返して数を減らす。


「囲め!囲んで集中攻撃だ!」


1人の兵士が息を荒げながら叫ぶを合図に、兵達は雫を取り囲んでの一斉攻撃を敢行。


「なっ!飛んだ!?」


だが、同等クラスならまだしも、格下も格下が相手だと対処も容易。

雫がふわりと浮いたかと思えば10メートルを超す高さにまで上がり、虚しく空を斬るだけの結果となった。


「まさかあの黄色い球は…不味い!」


上空にて、雫は雷系中級魔法のパラライズボールを投下。

直径1メートル程の微弱な雷(電気)の塊であるその球は、(雫から見て)前方斜め下に着弾。

雫の真下にいた兵士は当然として、アダムやその周辺にいた兵達までをも巻き込んだ。


彼らは麻痺状態に。

全員が地面へ倒れ伏す形で動けなくなり、雫はそんな彼らを見下ろしつつゆっくりと着地。


「はーー、つっかえ。あんだけ意気込んどいてこのザマたぁ(とは)な…だがまぁ、雫が相手じゃ仕方ねぇか。」


「ねえ火燐。」


「ん?」


「雫の移動って、フ()ーティ()グを風で操作したものだよね。しかも風とか雷魔法まで扱えてるし、同時使用も可能になったんだ?」


肩慣らしにすらならない兵達の惨状(やられっぷり)にしらけ気味だった火燐も、凛からの問いで少しだけ嬉しそうな容貌に。


「ああ、それな。雫はクティーラに進化した影響か、全属性に適性が生まれたんだよ。それと魔法の同時発動は、並列思考ってのを使ったからだな。」


「へぇー、それは凄いね。僕もうかうかしてられないや。」


凛は全ての属性を最上級まで扱える上、スーパーコンピューターをも凌ぐ処理速度を持つナビのサポートが追加。

初級や中級魔法なら毎秒数十~数百発射が可能、ようやく近付けたと思ったら流麗な刀捌きが待っている。


「いや、お前の方が全然(すげ)ぇじゃねぇか。何言ってやがんだ…。」


彼は密かに1人軍隊(ワンマンアーミー)と呼ばれ、火燐も「もうコイツだけで良いんじゃね?」と思った内の1人。

呆れ顔で突っ込みを入れるのは自然としか言いようがなかった。


「雫の事は分かったとして、火燐も進化して何か得られたものは?」


「オレか?オレはな…。」


「この…得体の知れぬ者共め。我らが黙ってやられると思うな!」


「お、丁度良いのが来た。オレのはこれだ。」


そう言って、火燐は右手を前に(かざ)し、こちらへ向かって来た兵士に青い炎をぶつける。

青い炎は兵士に当たり、瞬く間に上半身を覆い尽くした。


「うわ、あっっっ…つくない?むしろ冷たい位だ。幻術か何かか?」


「なら熱くしてやるよ。」


始めこそ不思議そうにするだけだった兵士も、火燐が指をパチンと鳴らした途端熱がり始め、耐え切れず地面を転がる。

火燐が手を前に(かざ)し、動きが止まったかと思えば鉄で出来た鎧の上半身部分だけがパリィィンと砕け散った。


「鎧が砕けた?もしかして、金属に急激な温度変化を与えると壊れるって言う…。」


「そう、それだ。冷炎(れいえん)っつってな。上は3000度、下は-200度で調整出来る粘着性の青い炎が生み出せる様になったんだ。そのおかげか、水にも適性がな。」


「うわー凄い凄い。格好良いよ火燐。」


凛に褒められ、ニヨニヨするのを(こら)えようとする火燐。

しかしやはり我慢出来ず、ついには明後日の方を向くのだった。

雫が地上を滑る際、トリプルアクセル等をとか考えたのですが、着てるのセーラー服だしなぁと思い断念しましたw

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