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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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65話

話は今から1時間と少し前、サルーンの屋敷の執務室。

家主であるガイウスが書類仕事中、扉をノックされる事から始まる。


「誰だ?」


ガイウスは作業の手を止め、警戒の色を見せる。


「僕だよ。」


「なんだ、ゴーガンか。まぁ入れ。」


「お邪魔するよ。」


しかし尋ねた相手が分かった途端に霧散。

互いが慣れた様子で迎え、迎えられてのやり取りを行う。




ゴーガンがソファーに座り、向かい合う形でガイウスが腰を落ち着かせ、メイドに茶を入れるよう促す。


「急にどうしたんだ?」


「いやなに。今日の夕方、凛君が(フォレストドラゴンの肉を受け取りに)来るだろう?だからその前に打ち合わせでもと思ってね。」


「打ち合わせ?今からか?」


「うん。ほら、凛君が昨日、魔銀級までの魔物を解体目的で持ち込むみたいな話をしていただろう?アレの件とか。」


「…ああ、成程。今のままだとすぐに設備も人手も足りなくなり、飽和状態に(おちい)るからか。」


「そうなんだよ。これ(リスト)に載っている魔物ですら、何回かに分けて貰いたいのが本音だ。しかも1週間かそこいらで、と来た。もし追加で来ようものなら…後は分かるね?」


「さっきからはっきりしない口振りだな。何かあったのか?」


「これは商国方面から来た者の情報なんだけど…昨日、この街はワイバーンから襲撃を受けたよね。」


「ああ、そうだな。」


「あれよりもほんの少し後に、物凄い数のワイバーンが凛君の屋敷へ飛んで来たらしい。」


「俺は何も聞いていないぞ?」


「それはそうだろう、僕もついさっき知ったばかりの情報だしね。」


「…詳しく聞かせてくれ。」


ガイウスが居住まいを正し、ゴーガンもより真剣な表情へ。




凛の屋敷はこの世界にある建物とは少し様式が異なった造りをしているが理由なのか、最近はちょっとした名物として認識され始めていた。

昨日も、(ガイウスに呼ばれて)馬車で凛達が街に向かう様子を見たのが複数名いたりする。


20分後、森の向こう側から大量のワイバーンが飛来。

その場にいた5人の内、4人は商国方面に逃げ、取り敢えず事なきを得た。


しかし残った男性は腰が抜けて動けなくなり、逃げるどころではなくなってしまう。

男性は尻餅を突いたまま顔の前に両手を構えるも、どうやらワイバーン達はサルーンに向かったらしく、こちらも一安心。


それから10分近く経ち、ようやく落ち着き、立ち上がったところへ今度はその数倍の規模のワイバーンが迫って来るではないか。

キャパシティーを越えた男性は気絶し、先程サルーンの宿で飛び起きながら目覚めたとの事。


「ワイバーンから被害を受けたとの報告は届いていないし、その人が嘘を付いている風には見えなかった。

(凛の屋敷とサルーン襲来時)微妙に方角が違っていたのと、こちら側に意識が向くあまり誰も気付かなかったのは皮肉でしかないけどね…ともあれ、凛殿も昨日は普通に過ごし、帰った点から(かんが)みるに、彼の仲間がワイバーン達を倒したと見て間違いないと思う。」


「そうか…。(大都市でもない限り、そんなものに襲われたら壊滅は必須。街の南に屋敷が出来たと聞いた時は壊してやろうかとも考えたが…実行に移さず友誼を結んで正解、としか思えんな。時間差で大量のワイバーンが来るなぞ、想像したくもない。)」


ゴーガンが締めくくり、ガイウスは難しい表情でそんな心裡(こころうち)を抱く。

すると今度は、扉をガンガンガンと激しく叩く音が。


ガイウスはゴーガンと見合ってから「入れ」と促し、開放と同時にアルフォンスが飛び込んで来た。

ゴーガンの存在に本人は軽く驚いたものの、すぐにガイウスの方を向き、敬礼の構えを取る。


「お忙しいところ失礼します!街周辺で盗賊や非常に強い魔物が出現したらしく、怪我人多数!その中には、使者の方々も含まれております!」


使者と言うのは、今朝方フォレストドラゴンの件で揉めた3人の事を指す。

彼らはあの後急いで自分達よりも更に上の役職の元へ戻り、必要な資金や人員を揃え、サルーンへ。

(状態が良いとの理由で)相場より少し高い金額をガイウスに預け、再出発したばかり。


そこでようやく一段落ついて解散となった為、ガイウスは10分前後しか執務作業を行えなかったりする。(ガイウスが今からか?と尋ねたのは、ギリギリまで進めたかったが所以(ゆえん))


「現在は冒険者ギルドに集められ、我々と冒険者で対応してはいますが…正直全然手が足りていないとの状況です。」


「他の街や都市へ応援は?」


「それが…被害が広がるだけだから止めた方が良いと言われました。」


「誰の意見だ?」


「使者の方からです。魔物はゴブリンの見た目をしていたそうですが、向こうで雇った冒険者がまるで歯が立たなかったとか。死者も出たとの事です。」


「ゴブリンの見た目なのに歯が立たない…か。」


「ゴーガン?」


「もしかしたら、戦った相手とやらは上位種かもとの考えが浮かんでね。凛君が話したグレーターゴブリンとか、ああ言った感じの。君も覚えがあるだろう?」


「ああ、あいつらか。少し大きいだけのゴブリンかと思いきや、やたら苦戦した記憶があるな。当時はよく勝てたものだ…と、思い出に浸ってる場合ではなかった。ゴーガン、我々もギルドへ向かうぞ。」


「分かった。」


ガイウスの言葉を皮切りに、3人は早速移動。


冒険者ギルドに到着後、ガイウスとゴーガンは中の様子を見てすぐに息を呑んだ。

怪我人が少なくとも20人はおり、その内の6割は椅子に座れる位には元気。

しかし残る4割。

体のあちこちに、矢や刃物が原因で深手を負う大怪我をしていた。


怪我の軽い者は後回し。

魔法に心得のある者が横に寝させた重傷者へ回復魔法を施すものの、いずれもヒール相当で効果はイマイチ。

矢に強い毒が塗られ、それが災いして現状維持が精一杯と言い換えた方が良いかも知れない。


回復魔法を掛け続けているにも関わらず、一向に良くなる兆しが見えないのがその証左だった。


「くっ、よもやこうなるとは。多少無理をしてでも教会への寄付を続けるべきだったか…。」


ガイウスは苦い表情の後、警備の者に商業ギルドや道具屋から治療に使えそうな物を調達する旨を伝達。

その甲斐あって最悪の事態は免れたものの、予断を許さない状況のまま時間が過ぎ、凛と美羽の登場で現在に至る。




「おぉ、凛殿に美羽殿か!折角来て貰ったところを悪いのだが…生憎(あいにく)今は立て込んでいてな。しばらく相手出来そうにない。」


ガイウスは2人が来たのが分かるや相好(そうごう)を崩すも、すぐに申し訳なさそうな表情に。


「それは構いませんが…一体何があったのですか?」


「何でも、盗賊と魔物に襲われたらしくてな。怪我の酷い者のほとんどは、強いゴブリン達による被害だそうだ。」


「強いゴブリン?」


「マスター。それって、さっき戦ったスプリガン達の事じゃない?」


「あー、あれか!」


「? 凛殿、どうかしたのか?」


「あ、いえ。先程、森の中でスプリガンを筆頭とするゴブリンの集団に襲われたって話です。」


『!?』


ガイウスが不思議そうに問い、返って来た答えで自身だけでなくその場にいた全員に衝撃が走る。

「スプリガン?」「それって、魔銀級の魔物じゃあ」「森…まさか死滅の森…?」「マジかよ…」と言った、ひそひそ話が(ささや)かれるまでに。


「…つかぬ事を聞くが、ゴブリンの集団と言うのは、他にどの様な者がいたのだ?」


「近接や斥候役のレッドキャップにゴブリンアサシン、遠距離担当のゴブリンボウマスターにゴブリンセージが数体ずつでしたね。強さは…最低でも金級はあったかな?後はその下にマーダー、ファントムが続くと言った感じでしょうか。」


「マスター。バグベアを忘れてるよー。」


「そうだった。それら全部で40体位(正確には43体)を、仲間と協力して倒しました。」


凛の発言に多くの者が絶句し、ゴーガンは苦笑い。

ガイウスはガイウスで、先程親友が話したワイバーンの件の通りか、下手すればそれ以上だと否応(いやおう)なしに分からされたと内心冷や汗を掻きつつ、同時にこれ以上の被害が出ない事に安堵。


空間全体が何とも言えない雰囲気を纏い、回復魔法を行っていた者の手も自然と止まる。

その影響で治療を受けていた者達の顔色が急速に悪くなり、変化に気付いた凛が(無詠唱で)光系上級魔法エリアハイヒールを発動。

すこし強めに魔力を込めたおかげか、40畳程ある冒険者ギルドのカウンター前全てに範囲が及び、後回しにされた軽度の者は勿論。

重傷者も全て完治させた。


ただ、いくら優れた回復魔法とは言え、解毒までは出来ないのが一般的。

しかしそこは里香(創造神)や白神の加護。

範囲や解釈の拡大…つまり解毒まで出来てしまい、プラスアルファで魔力を費やしたものだからより強力と化した。


これに人々は度肝を抜かれ、ガイウスやゴーガンも(王都で冒険者活動をしていた時を含め)ここまで効果を持ったハイヒールを見た経験がないを理由に唖然。

一瞬だけ光ったと思ったら、数秒後には完治したのだから無理もない。


「これで皆さん落ち着けたと思いますし、詳しい話を━━━」


『いやいやいや待て待て待て。』


「「?」」


そんな彼らを他所に、1人満足げな様子で頷く等してさらりと話を進める凛。

だが我に返ったガイウス達からの突っ込みの方が早く、美羽共々きょとんとした顔を向けられる。


これにガイウスは軽くイラッとしたものの、すぐに凛が光属性魔法の。

それもかなり優れた使い手である事を外部へ、特に神聖国へ知られる前に防ぐのが先決だと判断。


続けて詳しい話をすべく、凛、美羽、ゴーガンの3人にギルドマスターの部屋へ行くよう促す。


「今起きた内容は他言無用とする。分かったな?」


2、3歩進んでから振り返り、時間稼ぎにしかならないだろうがやらないよりはマシとの思いで箝口令(かんこうれい)を敷いた。




「凛殿、昨日も伝えたからまたかと思うやも知れぬが…協力感謝する。」


ギルドマスター室へ入り、凛と対面する形でガイウスが腰を下ろすや、いの一番に頭を下げた。


それから20分程掛け、情報交換が終了。


凛は考える素振りを見せ、相対する2人は2人で凛達がスプリガン1行の前にオーガキング達を討伐。

その影響で暁達が更に強くなる(進化する)のだと知り、複雑や好奇心を(にじ)ませた顔付きに。


途中、ガイウスは思い出した様にして凛を見てみる。

自分達よりも遥か高みにいるにも関わらず、全く満足していない風に感じられた。


軽い嘆息の後に息を吸い、しばし瞑目。

やがて、意を決した表情で話を切り出すのだった。

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