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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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59話

(うわー、多いなぁ…。)


集落の南側が見える木の影に到着した旭が、最初に思ったのはそれだった。


移動の途中から(凛に教わった)気配を殺した足運びに切り替え、南側へ来たまでは良かった。

ここ南側は西・北・東の3方向と比べ、外敵が来る割合が多いのだろう。

他のエリア(東西南北+中央)より面積が広く、守りもオーガ5体にトロール3体と最も厚い。


(って言うか、ここを1人で落とせとか酷くない?いや、暁様からやれと命令された以上、従うしかないんだけどさ…。)


溜め息混じりにそんな事を旭は考え、『体は熱く、()れど心は冷静に』の精神で静かにやる気を(みなぎ)らせる。




ゴブリンの集落が滅ぼされた際、旭は怖くて隠れる事しか出来なかった自分を恥じた。

仮令(たとえ)、親が兵士で無理矢理やらされたとしても…だ。


救出され、最大戦力である凛や美羽を参考に2本の小太刀を扱う武器として選択。

2人の真似をしながら訓練や討伐に臨んだ結果、暁達の中で最も斥候(せっこう)向きと言うか素早く、注意深い動きが出来る様になった彼。(他は性格故になのか、サボり癖があったりするが)


強さも、同族の中ではとの注釈は付くが紅葉、暁に次ぐ3番目。

これ位の規模の敵であれば、暁達や凛達の相手をする方が余程キツいとの考えから、特に気負わずに済んだ。




出来るだけ気配を消し、相手方の様子を窺う彼。

やがて、1番近くにいたオーガが背を向けたのを確認して駆け出すも、運良く(旭にとっては運悪く)別の位置にいたオーガがそちらを向き、存在に気付いて叫び声を上げる。

それに(ともな)い、旭が目標とするオーガも体の向きを変えるも…少しばかり遅かった様だ。


振り向いたタイミングで何かが首に刺さった事に気付き、視線を落としたオーガが見たもの。

それは縦長の刃。

旭が先程まで左手に持っていた、小太刀だった。


オーガの行動を予測した旭が得物を投射。

万一防がれたとしても大丈夫なよう、追撃の構えを取りながらでの疾走だ。

小太刀は狙いよりも若干下にはなったが見事刺さり、オーガは原因が判明した事でより痛みが増し、両手を首へやりながら苦しそうにする。


抜きたい、けど後の事を考えると抜けない。

心の葛藤を表している様だった。


その間に旭はオーガの元へ辿(たど)り着き、未だ首と胸の境目にある小太刀の柄部分を左手でキャッチ。

力を入れ、そのまま捻る形で一気に首を斬り落とす。


(まずは1体…!おっと。)


旭は倒れていくオーガを横目で見、視線を正面へ戻すや2体のオーガが棍棒と斧で攻撃せんと迫るのが分かった。

旭はオーガ達の攻撃を左右の小太刀で受け止め、新たに右方向から飛び込んで来たトロールの叩き付けを、バックステップで避難。


すると、今度は左側にオーガとトロールが1体ずつ。

右側へ50メートル程離れた位置にトロールが出現。

旭は数が少ない右側から先に片付けようとして走り始めるのだが、途中物陰に隠れ潜んでいたオーガに横腹を殴られ、住居の1つへ衝突。


(痛ってぇ…。)


壁を貫通し、反対側の壁に激しくぶつかったところでようやく停止。

苛立ちながら立ち上がり、左手で小太刀2本を持ち、空いた右手で体のあちこちに付いた汚れを払う。


(油断し過ぎた罰って訳ね…良いぜ、なら本気を出してやるよ。)


自らを律し、にやけ顔を浮かべながらこちらへ歩くオーガへ挑む。

だが彼は、彼らは知らない。

旭は適当さを前面に出してはいるものの、実は隠れた努力家。

(こと)身体強化に於いては、暁より上の技量である事を。


最初こそ勝てると思い込んでいたオーガも、やる気になった(身体強化を施した)旭からあっさりと腕を斬り落とされ、即時戦意喪失。

腕だけでなく武器まで失った為にその場から逃げ出し、しかしすぐに追い付かれ、呆気なく止めを刺される運びに。




オーガを倒した旭が外へ出ると、そう遠くない位置に残り全てのオーガとトロールが待ち構えていた。


(…やれやれ、1箇所に戦力を纏めるとか勘弁して欲しいんだけどなぁ。あちらさんもやる気って事か。)


その光景を目の当たりにした旭は溜め息交じりで肩を竦め、最大まで身体強化(フルブースト)

全力で駆け出した。

オーガ達も気合いを入れ、直後に双方が接触。


旭の右の小太刀と、オーガが持つ大剣が交差。

(つば)()り合いへと持って行かれ、それが罠だと分かる頃に他のオーガ達が彼の周りを囲い、一斉攻撃を仕掛ける。


旭は咄嗟にオーガを蹴り飛ばし、他の5体による武器の振り下ろし、横薙ぎ、振り上げ、突きを左右の小太刀で捌き、軽く(かす)ったタイミングで蹴り飛ばしたオーガも参戦。

更に苛烈さが増す。


冷や汗を掻きつつもそれら全てを(さば)き、隙を見付けて距離を取った結果。

どうにか先の擦り傷だけで済ませる事が出来た。


(危なかった!暁様、後で恨みますからね!)


この場にいない暁へ不満を漏らす彼。

同時に、今の一連でコツみたいなのを掴んだらしい。

時折敵の攻撃を仲間がいる方向へ誘導し、当てるなんて芸当を披露してみせた。


となれば、オーガ達が躊躇(ちゅうちょ)するのは必然。

自分の攻撃の行き先が、敵ではなく味方に向かう…と言う『もしも』の想いが恐れへ繋がり、旭に当たる直前で中断。

そこを突かれ、1体、また1体とその数を減らしていった。


気付けば、オーガとトロールが残り1体ずつにまで少なくなってしまった。

2体は目配せし、正面からの同時攻撃を敢行。

旭は振り下ろされたそれらを左右の小太刀で受け止め、少しの間膠着状態。


ただ片や必死、片や顔色を窺えるだけの余裕がある位には差があり、余裕がある側。

旭が前へ進みながら力を抜くのに従い、2体の攻撃は吸い寄せられる様にして地面へ。


さぞ悔しがるか驚くかと思いきや、彼らが浮かべるのは苦悶の表情だった。


どうやら旭の仕業らしい。

彼は通り抜け様に見舞った強烈なボディブロウにより、2体は痙攣(けいれん)

持っていた武器を手放したを最後に、旭が持つ小太刀によって首を落とされた。


(…全く。俺がここへ来たから良かったものの、これが月夜や小夜だったらどうなっていたやら。だから暁様は俺をここへ向かわせたんだろうけど。)


今しがた(たお)した2体。

他に追撃がないかを確認を終えた旭が左右の腰にある鞘へ小太刀を収め、深い深い溜め息をつく。




場所は変わり、集落の中央。

暁と紅葉、それとグレーターオーガ達による睨み合いが続けられていた。


尤も、睨むのはグレーターオーガの方だけで、2人は涼しい顔。

そして、紅葉が前に出るのを機に状況が動き出す。


「当事者である貴方が(オーガキングの相手は)相応しいでしょう。あの方々(グレーターオーガ達)のお相手は私が致します。」


「はっ。ありがたき…。」


「…が、(今回の戦いを)凛様が見ておいでです。皆まで言わずとも分かりますね?」


「心得ております。姫様…失礼、紅葉様。差し出がましいのは重々承知ですが、お気を付け下さいますよう…。」


「ええ、勿論です。」


そう言って、後ろを向いた紅葉が軽く微笑む。


チャンス到来!とばかりにグレーターオーガの1体が紅葉に斬り掛かり、危険だと捉えた藍火と玄が「あっ」と漏らす。

紅葉は体の向きをそのままに、帯へ差した(あくつ)を左手で抜き放ち、防御。


キィンとの音を響かせ、ぶつかる圷とバスタードソード。

紅葉だけでなくグレーターオーガの動きも止まり、後者は凄まじい形相で力押し(ゴリ押し)しようとするも、初級魔法ロックパイル(岩の杭)を眉間に放たれる方が先だった。


グレーターオーガは迫るロックパイルから逃れるのに必死。

首を横へ()らすのに意識を向けるあまり、つい腕の力が緩んでしまう。(余裕がなくなったとも)


「…それではあちらも準備が整った様ですし、私は行って参ります。」


グレーターオーガの方へ体を向ける紅葉。

帯に差した颯を右手で抜き、「はっ!」と頭を下げた暁が後退する。


颯を前に(かざ)し、颯の先端から突風が発生。

体勢を立て直そうと、一旦距離を取ったグレーターオーガを更に後方へ吹き飛ばしてみせた。


グレーターオーガは強制的に元いた場所へ戻されるのだが、受けた衝撃は相当なものだったらしい。

身に纏った鎧、その腹部だけが大きく凹んでいた。

苦い表情のグレーターオーガが体を起こし、他の3体。

それに藍火と玄を加えた5名は、大きく口を開ける形で驚きを露にする。


そんな彼らを他所に微笑みを浮かべ、左右の手で颯と圷を持ちながら歩き始める紅葉。


笑うとは、相応の強さを有する事の表れ。

余裕の態度を崩さない=プレッシャーへと繋がり、小さいはずの彼女が不思議と大きく見える。


錯覚を覚えたグレーターオーガ達は途端に恐ろしくなり、揃って後退(あとずさ)りするのだった。

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