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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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44話

『えっ!?』


『なっ!?』


「何だとぉ!?」


これは女性の言葉が(もたら)した反応。


最初が(凛サイドを除く)女性陣、次が男性陣、最後ガイウスの順だ。

美羽や紅葉ですら軽い同様を見せる中、凛1人だけが冷静だった。


「やはりか。ほぼ間違いなく、死滅の森に異変が起きていると見て良さそうだね。」


「そう…っすね。自分達、嫌な感じがして逃げて来たんすけど、その…途中でここ(サルーン)が見えて…。」


凛の意見に女性は微妙な顔で頷いた後、更に歯切れが悪くなったと言うか、かなり話し辛そうにする。


そんな彼女の煮え切らない態度にピンと来たのだろう。

途中で介入する人物が。


「…つまり、お前達は異変を感じ、森から離れた。しかし抜け出したは良いが、負けを認めた様で釈然としない。その憂さ晴らしも兼ね、街を襲った…そんなところか?」


ガイウスだ。

本日1番の渋面+確認するとの意味合いを込め、低い声で詰問。

「そ、それは…」と返す女性に視線はより険しくなり、眉間の皺は益々深いものへ。


「否定しないのだな。いや、出来ないの間違い…か?」


女性が言い淀む=肯定と捉えたガイウス。

視線だけでなくコメントまで鋭くなり、女性が「ち、違うっすよ!?」と慌てて否定に入る。


「自分、わざわざ混乱させるのもどうかと思ったっすし、そうしている内に(別な魔物に)追い付かれでもしたら、逃げた意味がないと思ったんす。だから(サルーンを)避けて行こうと言ってはみたんすけど…。」


「他の皆が納得しなかったんだ?」


「はいっす…。」


女性は凛のフォローに神妙な面持ちで相槌を打ち、


「適当に(ブレスを)吐いて、満足したら逃げる。だから(街に)向かっても大丈夫だって皆聞かなくて…。」


その言葉を最後に口を閉ざしてしまう。


「ガイウスさん。僕がフォレストドラゴンやアダマンタートルに襲われた場所ですが、死滅の森表層で…なんですよ。強さはどちらも黒鉄級なのに、です。おかしいと思いませんか?」


すると、今度は自分の番とでも考えたのだろう。

女性から視線を移した凛の問い掛けに、ガイウスは考える仕草を取る。


「む、そうだな…確かに、黒鉄級相当の魔物が出るのは(死滅の森の)中層からだと昔聞いた事がある。」


それから難しい表情を浮かべ、


「それが今や表層でも出る事態に…?ダメだ、あまりにも情報が足りない。」


思いっ切り(かぶり)を振る。


「だが調査しようにも場所が場所、強い冒険者が必要だ。欲を言えば黒鉄。そうでなければ最低でも金…いや魔銀級でないと話にならんだろう。」


「ガイウスさんはそう言った冒険者に心当たりは?」


「魔銀級なら多少心当たりはあるが…黒鉄級となるとまず無理だな。」


「即答…ですか。」


「黒鉄級冒険者は王国に1人しかいない、が背景にあるからだ。故に、(防衛との観点から)あまり王都から離れる事は出来ぬ。いや、良しとされぬが正解か。口先だけの腰抜けばかりが王都に集まっている所為(せい)でな。動けても、近くにある魔素点の調査辺りが精々と言うところであろう。」


「成程。そんな理由が…。」


「無論、特別な事情でもあれば話は別だがな。さて、どうしたものか…。」


凛からの質問に答えこそしたものの、ガイウスは手詰まりであると悟ったらしい。

顎へ手をやり、苦い顔のまま微動だにしなくなった。




アウドニア王国唯一の黒鉄級冒険者は、王都を中心に活動。

彼を呼ぶには国王や王国のグランドマスター(冒険者組合総長)の許可が必要となる。(理由はガイウスが述べた通り、保身の為)


仮に事が上手く運んだとしても、今度は別の問題が浮上。

サルーンから王都到着にまで掛かる距離だ。


双方を結ぶ距離は2000キロ程。

日本で例えた場合、本州の端から端を直線で結び、そこから更に500キロ位を足した長さに当たる。


互いを行き来するだけで結構な時間を要し、とても現実的とは言えない。

又、最後にして最大の壁として立ちはだかる━━━費用の問題。


高位の冒険者を雇うには膨大な。

それも黒鉄級ともなれば、正直想像も出来ない様な資金が必要。

サルーン中から()き集めたとしても微々たるもので、どの道詰んだ状態だとガイウスは思案する。


ついでに。

ガイウスがサルーン領主の座に就いてからこれまで。

彼を含む住民に悟られず、秘密裏に脅威を排除してくれる協力者が存在。

その協力者を凛はサーチ越しに認識してはいたが、どうしてそんなところ(街の周り)にいるんだろう。

死滅の森の中に人が?珍しい…位にしか感じていなかったり。


「…僕は冒険者ではありません。どこかの国に所属している訳でもないですし、王国がどの様な考えを持ち、判断を下そうが関係ない立場と言えるでしょう。」


「…?凛殿、いきなりどうしたのだ?」


それが伝播(でんぱ)し、室内を重い空気が包む中。

軽く迷う素振りを見せた凛が口を開き、皆の意識が彼に集中。


(うつむ)きがちだったガイウスも釣られる様にして顔を上げ、しかし話の意図が見えない彼の表情は不思議そのもの。


「アルフォンスさんから(話を)伺いませんでしたか?こちらは実力者の集まりである…と。」


対する凛は意識を美羽達に向けつつ、軽く微笑むだけ。

気持ち遠回しな気がしなくもないが、真っ先にハッとなったのはガイウス。


「…そうだった。俺とした事が冷静さを欠いてしまった様だ。凛殿に至っては、1人で(フォレスト)ドラゴンを倒せるだけの実力を有しているのにな。」


「はい。ですので、僕達が死滅の森へ調査に向かう方向で話を進めれば宜しいのではないかと。」


凛の言葉にガイウスは「確かに」と頷き、再び考える動作に移る。

ただ先程の陰鬱とした気分とは違い、今度は前向きなもの。

雰囲気も、幾分か柔らかくなっている。


「…ふむ。凛殿、そのフォレストドラゴンの死体を見る事は可能か?」


「勿論可能です。」


そう言って凛は軽く辺りを見回し、少しだけ残念そうな顔に。


「ただ、お見せしようにもこのお部屋では手狭と言いますか…ちょっと出せそうにないですね。」


「何…?凛殿はすぐにでもフォレストドラゴンの死体を見せれるのか?」


「ええ。僕は少し(・・)特殊な空間収納スキル持ちでして。先程のワイバーン達もそこに入ってます。」


「何と…!」


笑顔で(のたま)う凛に、ガイウスは信じられないとばかりに思いっきり目を見開いてみせた。




ガイウスからの問いに凛が無限収納(インベントリ)ではなく、空間収納(アイテムボックス)だと返した要因。

それは、無限収納スキル保有者が彼だけだからに他ならない。


空間収納スキル所持者が数千人から数万人に1人位と、かなり少ないながらも存在。

それに対し、無限収納は名前すら知られていない。


以前は倉庫からちょっとした一軒家位はあった空間収納スキルの容量も、今や最も優れた使い手で5メートル四方がせいぜい。

人々の弱体化に伴い、収納量もかなり縮小されてしまった。


それでも、スキル持ちの分だけ運べる荷物や物資の量が増えるのは明らかなメリット。

スキル持ちの存在が分かり次第、即座に王国、帝国、商国からスカウトがやって来るまでがセットとなっている。


王国は見栄の為に。

実力主義の帝国は軍事利用で。

商国は商売を目的に空間収納持ちを欲しており、優れた使い手を巡っての取り合いや殺傷沙汰も珍しくはない。


凛はここで正直に無限収納だと伝えてしまっても良かったのだが、ガイウス達に余計な混乱を招くと判断。

一先(ひとま)ず、色々と落ち着くまでは空間収納で通す事にした。




「…あ、そうだった。ついでにと言う訳ではないのですが、空間収納内に(魔物の死体が)沢山入ってるんですよ。良ければ素材の買い取りもして頂けるとありがたいなぁ、なんて…。」


空間収納ついでに、これまで倒した魔物達の事を思い出した凛。

窺う形で提案を持ち掛け、ガイウスを困らせる。


「は…?いやそれは勿論可能だが…冒険者ではない凛殿が売ると、買い取り額が半分に減ってしまうぞ?フォレストドラゴンを倒せるだけの実力があるのだ。冒険者になろうとは思わんのか?」


冒険者になるとギルドからライセンスが配布される。

冒険者ライセンスは身分証代わりにもなるが、今回の場合だと冒険者ギルドの会員。


つまり自分は彼の組織に身を置き、庇護を求めている(守って貰う)立場とも取られる。


「冒険者って、一定の階級にまで上がると一気に(しがらみ)や責任が…みたいな感じになるのではないですか?」


「ほう、良く知ってるな。確かに、金級よりも上になると義務が発生する。指名依頼との名目で貴族に呼び出されたり、国や都市、街から緊急依頼や大規模依頼等で強制的に…と言った具合にな。」


「仮に僕が冒険者だとして。今回のワイバーン襲撃の様な非常事態が起きた場合、結果は同じでも被害に大きな差があったのではと思いまして。

組織に属する以上、情報の伝達や共有。それと下される指示に従わなければいけないのは分かりますが、問題解決の為に時間を割かれたくないのが本音です。冒険者ギルドへ向かうとか、指示が来るまで自宅や宿で待つよりも先に、やるべき事はあるはずです。勿論、自己責任だからと好き勝手するつもりはありませんが…。」


「そうだな。その場に居合わせた場合は別として、他は貴殿の申す通り喫緊(きっきん)。それも突発で起きた際に取るべき対応ではないやも知れぬな。向こうの観点で見れば、だが。」


「その点、ギルドに入ってなければその場で判断や対応が可能です。冒険者の方々が来るまで救助や防衛に専念するのも良いですし、余裕があれば今回みたく終わらせる事も出来ます。僕が街の住民権のお願いをしたのは━━━」


「流石にそこまで言われれば分かる。フォレストドラゴンや、アダマンタートルを無傷で倒せるだけの腕前を持つ凛殿だ。間違いなく目を付けられ、どこかの首都や大物貴族から召集されるであろうな…。」


ガイウスは少しばかり遠い目をした後に椅子から立ち上がり、


「ここは凛殿の考えで街が救われた。いや、おかげで被害を皆無で終えられたと言っても良い。協力、感謝する。」


凛へ向け、深くお辞儀。


後ろにいるアルフォンス達は上司の対応に驚くも、凛の偉業に対する喜びや恩義は負けていない。

ガイウスに続き、次々と頭を下げていく。


「そんな!僕は当然の事をしたまでです!ですので皆さん、どうか顔を上げて下さい!」


「いや、街が無事で済んだのは凛殿の活躍があってこそ。もし貴殿らがいなかったと思うと…街の代表として、救った者に礼を言うのは至極当然の事だ。」


ガイウスの真っ直ぐな答えに凛は一旦は納得するもすぐに違うとの考えに至り、再び慌て始める。


「確かに!…じゃなくて、えぇっと…そうだ!ガイウスさん、お腹は空いてませんか?」


凛の提案に、ピクリとガイウスが反応。

何故に今?と思いつつ、(おもむろ)に頭を上げるのだった。

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