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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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43話

一方その頃、応接室では。


「紅葉ちゃん、クッキー美味しいねー♪」


「はい、美羽様。大変美味しゅうございます♪」


美羽と紅葉による、ほんわかとした空気が場を包んでいた。


ガイウス以外の者達も彼女らの雰囲気に当てられ、まったりとした表情だったり、鼻の下を伸ばしたりする。


同じサルーンでありながら、何故こうも緊張感が異なるのか。

声を大にして叫びたい位、彼の心裡(こころうち)は疑問や葛藤で埋め尽くされていた。


(報告が来るのを待つだけのはずが、こんなにも苦痛だと感じる日が来ようとは…。)


先程までの苛立ちはどこへやら。

軽く辟易(へきえき)とした面持ちのガイウスがそんな事を思い、部屋に設置された窓越しに外を眺める。




1分後


クッキーを食べているのが自分達だけだと、今更ながら感付いた美羽。

あっと声を上げ、クッキーが入った袋の口を恐る恐るガイウス達の方へと向ける。


「…ボク達ばかりごめんなさい。あの、良かったら皆さんも一緒に(クッキーを)食べませんか?」


頬を染め、ちょっぴり恥ずかしがる彼女はいじらしく、庇護欲を()き立てられる。


「いや、私は遠━━━」


「良いんですか!?それじゃお言葉に甘えさせて頂きますねー。」


故あって(・・・・)女性不信なのと、今の状況下ではとても食べる気になれない。

彼女の申し出を断ろうとするガイウスへ、まさかのアルフォンスによるインターセプト。


待ってましたとばかりに。

しかも実に軽やかな足取り(スキップ)で美羽の元へ。


「アルフォンス!おまっ!」


部下による、あまりにも身勝手な行動。

上司を差し置いて自ら前に進む等、誰が予想出来るだろうか。


いずれにせよ、完全に出し抜かれる形となったガイウス。

左手を前に突き出すと同時に椅子から立ち上がり、馬鹿(アルフォンス)を止めようとする。


「はい、アルフォンスさん♪」


しかし時既に遅し。

その頃には到着どころか、差し出されたクッキーを「ありがとうございます!」と受け取り、流れる様な手付きで口の中へ。


「う〜ん、やはり美味しいですねぇ…。」


挙げ句、満足げな様子でうんうんと頷いてみせた。


これを切っ掛けにアルフォンスも美羽達と共にクッキーを食べ始め、ガイウスは絶句。

口をパクパクとさせるのは彼だけで、他の者達は物凄く羨ましそうな目でアルフォンスを見る。


因みに、アルフォンス以外の警備2人。

(前述で軽く触れたが)彼らはもしかしたらお零れに与れる(お菓子を食べれる)かも…と淡い期待を胸にこの場へとやって来た。


しかしいざ蓋を開けてみれば、申し出ようとするよりも早くガイウスに先手を打たれ、隊長(アルフォンス)に(文字通り)美味しいところを持っていかれたが為に頓挫(とんざ)

唯一良い点を挙げるとすれば、美羽の可愛い仕草を拝めた事。

あざといながらも魅力的な彼女の仕草に、思いっ切りハートを射抜かれていた。


故に美羽。

それと近いレベルの紅葉からチヤホヤされるアルフォンスが羨ましく、同時に(ねた)ましくも思う。

怨嗟の炎は留まるところを知らず、後で絶対(彼の妻に)告げ口して(チクって)やろうと心に決める。


「昨日も食べさせて頂いた時も美味しいと感じましたが…今日はそれ以上ですね。何か違いでも?」


「おっ、良く分かったねー?昨日のは作り置き(既製品)で、今食べてるのは今朝焼いたものなんだー♪」


僭越(せんえつ)ながら、違いの分かる男だと自負しておりますので…。」


「おお、カッコイイ!」


「と言うのは冗談でして。別物、とまではいかないにせよ結構差があります。昨日食べた者も気付けるかと…因みに、こちらのクッキーをお作りになられたのは?」


「勿論マスターだよ♪」


「凛様ですね。何でも、前回より良い素材を使用されたとか…。」


サクサクルースへ凛が進化したのに付随し、スキルの性能が向上。

併せて、万物創造だったりアクティベーションで生み出せるものの品質もレベルアップ。


そうとは知らないアルフォンスは成程…と目を見開き、感動に打ち(ひし)がれる。


「その様な貴重な物を…凛殿はお強いだけでなく、実に多才であらせられる。もしも凛殿が男性ではなく、女性。しかも私が独身だったら嫁に欲しい位ですね。」


「ふふっ、マスターはボク達の(・・・・)なの。だからアルフォンスさんにはあーげないっ♪」


「及ばずながら、私も凛様のお側に控えたく思います…。」


「いやー、流石は凛殿。モテモテですねぇ!あっはっはっは!」


美羽と紅葉に挟まれたアルフォンスは、両手に花状態。

それも超高級なとの(ただ)し書きが付きそうな、美少女達がお相手と来た。


彼らのいる空間だけが盛り上がり、(日本で言うところの)まるでキャバクラみたいな雰囲気。

アルフォンスは浮かれに浮かれ、あまりにも自由が過ぎるとして流石に上司であるガイウスから叱責(突っ込み)が━━━


『………。』


一切なかった。

アルフォンスの振る舞いが振る舞いだった為、呆気に取られた部分も大いにあるが、最早会話に加わらせて欲しい等とはとても言い出せない空気になってしまったからだ。


非常に肩身が狭く、どうにかして脱却したいガイウス達。

一刻でも早く、凛に帰って来て欲しいとひたすら願うばかりだった。




5分後


「失礼致します!」


「ただ今戻りましたー。」


「お、お邪魔するっす…。」


凛達が帰還。

ガイウス達にとっては想望(そうぼう)の、首を長く長ーーーくして待った時間でもあった。


対する凛達側。

警備の男性、凛、ワイバーンの女性の順番での入室だ。

男性は元気が良いのは掛け声だけで、その表情は苦いを通り越して無。

反対に凛は笑顔で、彼に手を引かれる形で続く女性はかなりおどおどとした態度との注釈が付く。


これにガイウス達は誰!?とばかりに面食らい、


「凛様、そちらの方は?」


「マスター、新しいお仲間さん?」


紅葉と美羽は特に気にした様子はなく、不思議がるだけで終わる。


「まあまあ2人共、慌てないで。この子の紹介の前に、向こうで起きた出来事の説明が先だよ。」


美羽の口から出た新しい仲間と言うパワーワードに、凛と紅葉(ついでにワイバーンの女性も)以外の全員が様々な思惑を抱く。

そんな中、凛は彼女達を宥め、ここまでの経緯を説明。


「…と言う訳で、外壁は壊れ、負傷者は出たものの死亡した人は0。街の外で食い止めたので建物等の被害もありません。」


結果的に軽微で済んだ事に、ガイウス達は安堵の息を漏らす。


「それとこの子ですが、こう見えて実はワイバーンでして。故あって、今はこの(人間の)姿になって貰っています。」


しかし凛が左手で指し示しながらでの女性(フードは下ろして貰った)の紹介に、領主であるガイウスから待ったが。


「待て待て待て待て。死亡者がいないのは勿論ありがたい…が、つまり何だ?ワイバーンが人に変化したとでも?それこそ荒唐無稽な話に他ならないだろう。」


熟達したドラゴンでもあるまいし、と。

全く以て認めようとしない彼は警備の男性の方を向き、


「お前も一緒に行動していたのだろう?間違いがある部分は指摘してくれても良いのだぞ?」


『お前、分かっているだろうな?』と言わんばかりに圧を掛ける。


やはり来たか。

そう思いつつ、男性は微妙な顔のまま口を開く。


「…長が信じられないのは分かります。実際に目の当たりにした私ですら、同じ気持ちなのですから…ですが、これは本当の話なのです。」


「何?」


「凛様は1体だけ、厳密にはそちらの方だけを残し、瞬く間に9体ものワイバーンを討伐。そしてどう言う原理かは不明ですが、凛様とそちらのワイバーン殿は何やら通じ合った模様。ワイバーン殿は凛様に降伏の意を示され、そのまま街へ向かおうとしたので我々で止めました後、これからどうするかを協議中。突然頭を抱えられ、苦しみ始めました。

しばらくして徐々に小さくなり、最終的にこちらのお姿へと変容。この事は、私だけでなく門番達や街を守っていた冒険者全員が目撃しております。」


「そうか、街の防衛に向かった冒険者達がいたのだった。ならば否応なく信憑性は増す…と。全く、余計な問題ばかり運んでくれたものだ。」


「…!」


説明を受けても尚、思うところがあるのだろう。

ガイウスはギロリと女性を()め付け、それに当てられた女性がビクッと体を強張らせる。


「とは言え、どうしたものか…。」


かと思えば、すぐに難しい表情へ。

眉間に(しわ)を寄せ、顎に右手を当てながら考え込む。


ワイバーン10体が街を襲い、それを凛が未然に防いだ。


言葉にするとただそれだけなのだが、防いだ本人である凛が凄まじい美貌を誇る男性である事。

それらを無傷で成し遂げるだけの力量があり、問題解決に見合うだけの金額が提示出来るか不安。

長く生きたドラゴンならまだしも、見た感じ幼さを残した容姿のワイバーンがどうやって人になったのか等々。


考えるべき要項が一度に押し寄せ、上手く纏まらずにいる。


それを何故か、女性がワイバーンが変化した存在なのが信じられないと捉えた凛。

彼女の方を向き、1つの提案を出す。


「それじゃさ、手を繋いでいない左手だけをワイバーンに戻すって出来る?それが可能なら、少しは信じて貰えると思うんだけど。」


急に振られた。

それも見当違いな発言に、ガイウス達は「何事?」とばかりにキョトン顔へ。


「う、う~ん…?よく分からないっすけど、やるだけやってみるっす…。」


凛の気遣い(?)のおかげにより、不安が大分払拭された女性。

繋いでいる彼の左手の後に自分の左手をまじまじと見、うんうんと唸る。


やがて、女性に変化が。

目標である左手…ではなく、頭の方がワイバーンへと戻ってしまった。


『…!?』


ポンっと音を立てるのもそうだし、見るからにアンバランスな存在に驚愕するのは必然。

変わり果てた姿の彼女に全員が息を呑み、


「しまったっすー!!」


当人も当人で、頭に両手を当てて愕然(がくぜん)としていた。




それから、女性は必死に先程の顔へ変わろうとするも、彼女は人間初心者。

勝手が分からない上、自分ではなく第3者(ナビ)によって充てがわれた様相(ようそう)

姿見等で自身を確認していないのも重なってか中々思う様にいかず、テンパる一方。


その様な感じで、彼女が四苦八苦している間。

頭だけがワイバーンで残りは人間と言う、非常に不格好な状態を(さら)していた。


更には慌てまくるものだから、仮に無視しろとの指示が下されたとしても恐らく無理。

本人的には至って真面目つもりなのだろうが、端から見れば冗談(コミカル)でしかない。

凛達は酷く残念なものでも見た、と言いたげな視線を彼女に向けていた。


1分後。

凛の協力(サポート)を得て、ようやく目的を成し遂げた女性。


「戻れたっすー!ま、また人間になれなかったら、どうしようかと…ぐすっ…思"っ"だっ"ずぅ…。」


極度の緊張から開放され、気が緩んだのだろう。

その場にへたり込み、ポロポロと涙を溢し始めた。


これに凛、美羽、紅葉がギョッとなり、3人掛かりであやそうとする。


「ちょっとガイウスさん!」


「…!」


だが中々泣き止んでは貰えず、突然の美羽の(やや激しめの)呼び出しにビクッとなるガイウス。


「ガイウスさんもこの子をあやすのを手伝って!」


まさかの指令にガイウスは「わ、私がか?」と探る様にして尋ね、「当たり前でしょ!」と返答。


「元はと言えば、ガイウスさんが睨んだせいで泣き出したんだよ?」


「し、しかしだな…。」


「言い訳は良いから早く!」


「わ、分かった…。」


反論しようにも、美羽は自分よりも遥かに格上。

そんな彼女を怒らせては後が怖いとの判断から、重い足取りで彼女の元へ向かい、女性をあやしに掛かる。


だがガイウスは誰がどう見ても怖いと思える顔立ち。

その彼がぎこちない笑顔で接して来るものだから、反対に怖がられてしまう。


「…ガイウスさん。もう少し愛想良く出来ないの?」


「無茶を言うな!!」


当然の如く美羽からダメ出しを食らい、あまりの無茶振りにガイウスが憤慨。

それによりアルフォンスが「ぶほぉっ!」と吹き出し、他の者達もツボに入ったのか必死に笑いを(こら)える。


良く言えば正義感に溢れ、悪く言えば真面目一辺倒過ぎるあまり中々融通が利かない彼。

その弊害がここに来て顕著に表れ、アルフォンス達から見て余計に面白く思えたのだろう。




5分後


苦労(?)の甲斐あって、どうにか女性を泣き止ませる事に成功。

ただその代償と言うか、微妙な気まずさを室内に漂わせるとの結果を齎してもいたが。


「…ガイウスさん。」


「…!な、な、何だ?」


女性を訝しんだ様子で眺めていたせいか、突然の凛からの声掛けにガイウスはしどろもどろに。


「こんな形になってしまいましたが、一応は証明出来たと考えて宜しいですか?」


「う、うむ、そうだな。世界広しと言えど、斯様に珍妙な姿をした者は━━━」


恐らくおるまい。

そう答えようとしたところで美羽に睨まれていると察知し、言葉を引っ込める。


「…疑ってすまなかった。」


ガイウスは実際目にしても尚、(彼視点で)ネガティブな性格な女性=ワイバーンが成り立ってはいない…が、それはそれ。

美羽からのプレッシャーも重なり(耐え切れなかったとも)、女性に対して謝罪を行う。


それを見た女性は泣きながらにして凛に困った視線を向け、凛も凛で頭を下げられるのは全くの予想外。

話題を逸らすのも兼ね、ややぎこちない顔で女性の方を見る。


「そ、そう言えばなんだけど。どうして君達は街へ向かっていたのかな?」


「ずずっ…それはっすね、早い話が森から逃げる為だったんすよ。」


水を向けられた女性は鼻を(すす)り、泣き顔を残したままそう告げるのだった。

ワイバーン女性が一部戻すシーンですが、凛的には地獄◯生の鬼◯手のドラゴンバージョンをイメージしていたりします。

見事に裏切られましたがw

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