43話 12日目
いつもありがとうございます。
エンジェルとデーモンの強さを銀級→銀級中位に、超効率化で得られる魔素量を20倍→50倍に変更致します。
12日目 午前6時半頃
火燐と雫は未だにダイニングで朝食を食べ続けており、それ以外は全員リビングにいた。
凛は篝や狐人や村人の子供達、藍火、ナナに囲まれ、かなり興奮気味で凛の話を聞いている。
また、凛の斜め後ろにいるカリナは、一片たりとも聞き逃すまいと熱心にメモを取る。
別な所では、ニーナ、トーマス、コーラル、ウタル、サムと言った代表者達が1箇所に集まり、何やら難しい表情で話し合いを行っている。
また別なテーブルでは、座る暁と旭に対し、ジェシカ達が緊張の面持ちで一生懸命アピールをしていた。
だが2人は少し鈍感な所があり、抑揚のない声で受け答えをする。
ジェシカ達はそれをアピール不足だと捉え、益々必死な様子で言葉を重ねていく。
その向かいに座る美羽達や紅葉、月夜の5人は、村人や元盗賊の男性達から口説かれていた。
彼女達は凛や暁達と話や打ち合わせがしたいと思っており、困った笑顔で相槌を打つ。
月夜に至っては、自分から話しているにも関わらず、目ではなく体を見ている事に苛立った様子を見せる。
そしてある意味1番目立つであろうリーリアはと言うと、最も端にあるソファーで寛いでいた。
彼女はデーモンに進化した玄を自身の胸に後頭部を埋める形で可愛がり、右隣に座る小夜や(美羽達の所から避難して)左隣に座ったイルマやエルマもそれは同様だった。
そして彼らの後ろには、玄に似てはいるが少し幼い顔立ちをしており、黒髪を肩下まで真っ直ぐ伸ばした女の子が立っていた。
彼女は気持ち良さそうにする玄に対し、興味ありげな表情を向ける。
その少女だが、元は紅葉が連れて来た雌ゴブリンだったりする。
彼女は紅葉達や玄よりも堂々とし、またマイペースで自由との理由から『遥』と名付けられた。
遥は名付けの影響により、ゴブリン→ホブゴブリン→インプ→レッサーデーモンを経て、玄と同じデーモンになる…かと思いきや、レッサーデーモンからの派生であるサキュバスへと進化していた。
どうやら、玄がリーリアを気に入ってるとの判断から大人っぽくなりたいと願い、その結果デーモンではなくサキュバスへと至った様だ。
玄は銀級上位、遥は銀級と。
強さに差が出てしまったものの、遥は『変身』、『魅了』、そして『催淫』のスキルを得た。
魅了と催淫は相手よりも自分の方が格上と言う制限はあるものの、文字通り相手を魅了したり性的興奮を促すスキル。
そして変身は自身を思い描く姿に変えるスキルで、ドラゴンや人間の姿の藍火は勿論、火燐、紅葉、リーリア、ジェシカと言った大人の魅力が溢れる女性にもなれる。
翡翠は黒鉄級上位のイタカとなり、『時空間適性』、『滑空』、『加護付与』を、
楓も同じく黒鉄級上位のマイノグーラとなり、『時空間適性』、『眷属召喚』、『加護付与』のスキルをそれぞれ獲得。
翡翠達も火燐達と同様、ポータルによる移動や自分の属性の加護を与えるのが可能となった。
翡翠が得た滑空は、何もしなくても空に浮き続けられたり、今まで以上に空中をスムーズに移動出来る効果が。
楓の眷属召喚は、ティンダロスの猟犬と呼ばれる、全長10メートルはある青っぽい犬の様なナニカ(犬ではない)を3体まで呼べる効果を持つ。
午前7時過ぎ
「翡翠達が得たスキルの検証を行ってみようか。」
そう告げて凛が移動を始め、最終的に全員が屋敷の敷地内に集まった。
翡翠は跳躍した後に滞空スキルを使用し、周辺一帯を滑ってみせるかの様な動きを披露。
地上では、楓が3体のティンダロスの猟犬を喚び出して見せた。
凛達はどちらも関心した様子となる一方。
エルマ達や藍火を始めとした者達は、その恐ろしい見た目に震え上がった。
「ナビ。この子達を…そうだな。例えばトイプードル、チワワ、小さな柴犬みたいな見た目にする事って出来る?」
《可能です。》
直後、ポンッと音と共に変化が起きた。
それまでの全長10メートルはあった禍々しい風貌のティンダロスの猟犬達が、全長50センチ程のトイプードル、(ロングコートタイプの)チワワ、柴犬っぽい姿へと変化。
3体共青みがかっていたり、尖った舌や尻尾を持つ等。
普通の犬とは色々と異なるものの、それでも非常に愛くるしい見た目となった。
美羽達は「はっはっはっはっ…」と呼吸し、つぶらな瞳をこちらに向けながら尻尾を振る仕草にノックアウト。
戻って来た翡翠と共に、黄色い声を上げて子犬達を可愛がり始める。
子犬達は見た目や大きさこそ違うものの、やってる事自体は先程と同じ。
だが今は戦闘とは無縁である筈のニーナ達ですら、全く警戒した素振りを見せていない。
トーマス達はそれが恐ろしくなり、女性達、子犬達、そして切っ掛けとなった凛の順番で戦慄の表情を向ける。
その凛だが、皆から少し離れた位置で楓と話をしていた。
やがて楓が「お願いします…」と告げ、子犬達が一吠えした後、地面に吸い込まれる形で姿を消す。
美羽達は子犬達がいなくなった事で、落ち込んだり残念がった為、凛は彼女達に謝罪。
その後、改めて遥に変身スキルの検証をするよう促した。
遥はスキルの使い方が分からないのか、10秒が経っても特に変化は起きなかった。
凛にこの人みたいになりたいと思えば大丈夫と伝え、頷いた遥は目を閉じて集中し始める。
それを機に遥の体が少しずつ大きくなっていき、やがてリーリアに似た、綺麗でナイスバディーな大人の女性へと姿を変えた。
しかし丁度そのタイミングで服が破れ、全裸の状態となってしまう。
暁と旭を除いた男性陣はこぞって興奮し、凛と美羽は慌てて遥の元へ向かった。
遥は事情が分からないらしく不思議そうにしており、どうにか無事にローブを着せる事に成功。
凛達が一安心と言った様子を見せる一方、男性陣はあからさまにがっかりし、女性陣から冷たい視線を向けられる。
「ナビ。遥に『自動換装』スキルの装着をお願い。」
《畏まりました。》
凛は軽く後ろを見て苦笑いを浮かべ、ナビは早速作業に取り掛かった。
自動換装スキルは、対象者が変身等で見た目を変えた際、適したタイミングで特殊加工した衣服の着脱、或いは変更すると言うものだ。
昨晩、凛は藍火が姿を変える度に事故が起きるのを防ぐ目的で創った。
凛は遥に自動換装スキルの説明を行うも、いまいち彼女には伝わらなかったらしく、『?』が飛び交う様な表情を浮かべていた。
凛は困った笑みで「実践した方が早いか」と呟き、藍火を呼ぶ。
そしてドラゴン形態から人間の姿になって欲しいと頼み、彼女は快く承諾。
少し気合いが入った様子でブルーフレイムドラゴンへ姿を変え、すぐに元の人間へと戻る。
その際、着ているシャツとズボンが破れていない事を確認し、凛と共に喜び合った。
これにニーナ達を始めとした大人達が、微妙だったり顔を真っ青にする中。
笑顔の美羽と火燐が凛達に加わり、そこへ初めて見たテンション高めの篝や子供達も混ざっていく。
それから、凛は皆を静め、自分達もそれなりに大所帯となった為、凛達の様に死滅の森を進む者達とは別に4つのグループに分けると伝えた。
その4つのグループとは、凛が昨日建てた屋敷の管理、
オーガキングが支配していた集落を凛の領地とし、領地内に植えた作物の管理、
凛達の世界にある料理を覚えたり、商売を行うと言うものだ。
それぞれ、屋敷の掃除、食事や風呂の用意と片付け等、
凛達が植えた作物の手入れ、及び収穫、
屋敷のキッチンでひたすら料理を作り、凛から合格を貰えたら実際にサルーン等へ赴く、
商品やサービスに関する知識を学び、サルーンに出店予定の商店で客に提供するのが主な役割となる。
凛はそれらを出来るだけ分かりやすく皆へ説明し、
(暫定ではあるが)屋敷の管理をコーラル、
作物の管理はウタル、
料理はニーナ、
商売はトーマスがそれぞれ代表を務めると告げ、紹介を受けた者達は一斉に頭を下げた。
続けて、ジェシカ達元盗賊組は領地の安全を守る警備隊になって貰うと告げられる。
ジェシカが代表で凛に理由を尋ね、他の者達よりも戦闘に長けているからとの返事に、成程と納得の意を示す。
続けて、凛がしばらくは自分達と一緒に死滅の森を進んで欲しいと告げた所、ダニー達やディックが中心となって不満を漏らし始めた。
「何だ?お前等、凛の決定に文句でもあるのか?あ?」
しかし火燐のこの一言により、4人は青い顔で押し黙る様になる。
凛は火燐達を軽く宥め、人と接したり話したりする事が好きな者はトーマスの所へ、
料理をするのが好き、または凛の屋敷に来て知った物を自分も作ってみたいと思った者はニーナの所へ、
農業に関する作業が好き、或いは得意な者はウタルの所へ、
いずれも当てはまらない者はコーラルの所へ向かって欲しいと伝える。
村人達や狐人達は顔を見合せたり、近くにいる者と軽く会話してから移動を開始。
その結果、トーマスとニーナの所に8人、ウタルは24人、コーラルは6人の者が集まった。
そんな中、最後まで動かなかった者が2人いた。
灰色と黒い髪を持った虎の獣人のキールとカリナだ。
キールは強くなりたい、カリナは凛の役に立ちたいとの理由から死滅の森探索を希望。
凛は快く迎え入れ、2人と握手を交わした。
それから、各グループの代表者による決まりごとや注意事項の説明が始まるのだが、ナナは悲しげな表情を母親であるニーナに向けていた。
と言うのも、ナナは最初ニーナのいる料理のグループへ向かうも、「もう少し大きくなってからね」とやんわり断られ、その後コーラルに回収されたからだ。
そこへ雫が、「ナナ。屋敷の管理をするなら、メイド服は外せない」と言って、無限収納からヴィクトリアンタイプのメイド服を出して見せた。
ナナは目を輝かせながらメイド服を眺め、大事そうに受け取る。
そして勢い良く立ち上がり、説明中のコーラルの手を取って一緒に着ようと促すも、恥ずかしいからとの理由で断られてしまう。
ナナは了承してくれるものとばかり思っていた為、少しの間呆けた。
やがて目に涙を溜め、コーラルに視線を向けたままぷるぷると震え始める。
これにコーラルはたじたじになり、やがて盛大な溜め息と共に雫からメイド服を受け取った。
その後ろをナナが嬉しそうに付いて行き、2人は屋敷に入っていく。
凛はそんな彼女達を見送った後、雫に疑問をぶつける事にした。
「…そう言えば雫。あのメイド服、どうやって用意したの?」
「瑠璃を初めて見た時から、いつか役に立つと思って用意しておいたのだ…!」
雫は腰に両手を当てつつ、物凄いどや顔で答えた。
「そうなんだ。(全然答えになってないんだけど、ここまで嬉しそうにする雫は珍しいかも)」
凛は温かい笑顔を雫に向ける。
5分後
先に着替え終わったのか、ナナが1人だけ先に戻って来た。
メイド服姿のナナは可愛らしく、全員から褒められるとその場で横に1回転。
えへへーと言いながらにへらと笑う。
そんな彼女の様子を、半分だけ顔を出した状態のコーラルが見ていた。
それに気付いたナナはコーラルの元へ向かい、今の姿を皆に見て貰おうと腕を引っ張り始める。
コーラルは「えっ、ちょっと…まだ心の準備が…」等と言いながら引っ張られ、最後は皆の前に立たされてしまう。
コーラルは顔を真っ赤にして俯き、スカートの裾をぐっと掴む等して恥ずかしいのを必死に我慢する。
そこへ、凛がコーラルの肩に手を置く形で横に立ち、良く似合っていると伝える。
コーラルは恐る恐ると言った感じで顔を上げ、皆から真っ直ぐな表情で頷かれるのを目の当たりにすると、恥ずかしいやら嬉しいやら、よく分からない様な笑顔(?)となる。
これに凛達はほっこりした気分となった。
「ナナちゃんとコーラルさんがメイド服を来てくれましたので、今後は女性の制服をメイド服とします。男性の方は後で燕尾服を用意しておきますね。
ただ、女性でもメイド服はちょっと…と言う方は、燕尾服でも全然構いません。遠慮なく僕達に申し出て下さいね。」
凛は燕尾服を出しながら説明し、女性達は様々な反応を示す。
だが、続けて凛が「折角だし、普通の刃物なら弾ける位頑丈なものの方が良いかな?」と呟いた事で、ニーナ達からギョッとした表情を向けられる場面も。
そんな難しい表情をした凛の元に、火燐がやって来た。
「なぁ凛。翡翠達も進化した訳だし、こうやって外に集まってる。だからよ、この機会にオレらの加護を与えてみたら良いんじゃね?」
火燐達は進化した際、それぞれが得意とする属性の加護付与を得ている。
これにより、個人差はあるが、ほんの少しでも適性があれば彼女達の手によって引き上げる事が可能。
例え戦闘を行わない生活を送るとしても、今後何かしらで役に立つのではと考えた様だ。
「…成程。適性はあって困るものじゃないもんね。それじゃ…美羽は全員に適性があるかどうかを調べて貰える?」
凛は自分が全員分の適性を調べようかとも思ったが、経験を積ませるのに丁度良いと判断し、美羽に同意を求める。
「うん、分かった!」
「火燐、雫、翡翠、楓は適性がある人に加護付与をお願い。」
「ああ。」
「ん。」
「了ーーー解!」
「分かりました…。」
「僕は違う場所で待っていますので、終わった人からポータルを潜って来て下さい。」
凛は彼女達から同意を得られた事に満足し、そう言ってその場を後にした。
凛がいなくなってすぐ、篝が真っ先に美羽の所へ向かう。
そして彼女から両手を握られる形で10秒程調べて貰った結果、炎に適性がある事が分かった。
火燐の元へ移動し、やや前屈みになるよう言われ、その通りにすると、後頭部に手を当てられる。
「終わったぜ。」
10秒程が経った頃、火燐はそう言って手を離した。
「どうだ?多分、今のお前なら中級魔法位は撃てると思うんだが…。」
篝は両手を顔の前に掲げて交互に見やり、ゆっくりと目を閉じる。
「…確かに。今なら強い炎が放てそうな気がする。適性が上がるとはこの様な感じなのだな。」
徐に目を開き、掌の上にハンドボール位の大きさの火の玉を生成した後、それを握りつぶしながら言い放った。
美羽や火燐達は笑顔だったり満足そうに頷き、彼女以外の者達は『おお…』と声を漏らす等の感心した様子となる。
「そうか。なら凛の所にいってやれ。後はあいつがどうにかしてくれる筈だ。」
「分かった。」
篝は逸る気持ちを抑えて返事し、屋敷に入って行った。
ポータルを抜けると、(神界の大部屋みたく)一面真っ白な部屋に出た。
神界を知らない篝は、前方をきょろきょろと見渡す。
「待ってたよ。やっぱり篝が1番だったか。」
そこへ、1メートル程右の位置から凛が声を掛けて来た。
篝はぱぁっと明るくなり、尻尾をぶんぶん振る等して喜びを露にする。
「当然だ。凛の為ならあたしはどんな所だって行くぞ。」
「あはは、ありがとう。いきなりで悪いんだけど、ちょっと失礼するね。」
そう言って、凛は篝の両手を取る。
篝はいきなり手を握られた事に驚くも、凛が目を閉じて集中し始めたと分かり、それにつられて真面目な表情となった。
だがそれでもやはり恥ずかしいのか、顔が赤くなり始め、目を白黒させる等する。
「…うん、成程。それなら…。」
凛は篝がそんな風になっているとは全く気付いておらず、瞑目したまま独り言ちる。
30秒後、凛は目を開け、篝の両腕からゆっくりと手を離した。
篝は言葉こそ発さなかったものの、残念そうな様子を見せる。
「勝手で申し訳ないけど、君との間にリンクを繋がせて貰ったよ。」
「リンク…とは?」
「まぁ色々意味はあるんだけど、実際に魔法を使ってみれば分かると思う。」
「…?分かった。」
篝は不思議がるも、凛の言う事に間違いはないだろうとの判断から、フレイムスピア発動の準備に入る。
「フレイムスピア!…うぉっ!?」
そして前方に炎で出来た槍を飛ばし、しかしそれまで使用していたファイアボールとは全く異なる手応えに驚いた表情となるのだった。




