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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画

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41話

その後も、篝による凛の説明は続いた。


「先程の話の続きだが、凛は自分が創ったアルファと言う女性と手合わせをし始めてな━━━」


だが、彼女の話を聞いているのは興奮気味の子供達だけ。

大人達は1箇所に集まり、何やら青い顔で話し合いを行っている。


どうやら彼らの中で凛は化物となっており、いかにして彼女の不興を買わないでこの場を上手くやり過ごすか、その事だけに意識が向いている様だ。


「その内、2人は戦いの場を地上から空中へ移し、見るのが追い付かない程に速い━━。」


篝はそんな彼らに全く気付いておらず、自分の世界へ入りながら話を続けている。

凛は篝にこれ以上任せたら悪循環になると思い、説明を変わろうと前に出た。


「篝。篝。」


「そこであたしは…うん?凛、どうかしたのか?」


「僕の事を説明してくれるのはありがたいんだけど…大人の方々は怖がってるみたいだよ。」


「何!? …本当だ。あたしはただ、皆に凛の凄さを伝えたかっただけなのに…。」


「分かってる。気持ちは充分に伝わったから。ありがとう篝。」


「凛…。」


篝は申し訳なさそうに呟き、凛は彼女の方を軽くぽんぽんと叩いた後、狐人達の前に歩みを進めた。


「改めまして。僕は凛と申します。見た目はこんなですが、一応男です。」


『男!?』


この説明に狐人全員が驚いた。


「凛は男だったのか!?」


『!?』


ついでに今初めて知った篝も驚き、サム達は何故お前が驚くんだと言わんばかりの表情を彼女に向ける。


篝はそんな彼らを他所に後ろを向き、凛は男…ならあたしにも可能性が…等と呟き始めた。

(篝の呟きは聞こえていない)凛はそんな篝を見て苦笑いを浮かべつつ、ひとまず話を続ける事に。


「篝とは奴隷商で知り合う形になりましたが、僕は彼女を、仲間であり、家族だと思っています。」


「家族…。」


「はい。なので篝には主従関係ではなく仲間でとお願いしたのですが…配下が良いからとの理由で断られてしまいまして…。」


「当然だ。一緒にいられる可能性は仲間よりも配下の方が高いからな!」


「え?配下になった理由ってそれなの?」


「勿論他にも色々と理由はある…が、1番は何かと聞かれたらそうなるな。」


篝は困惑する凛に対し自信満々で答え、何とも言えない雰囲気が凛達を襲った。


凛が「いくら配下でも、任務や依頼とかで離れる機会は沢山あるんだよ?」と話し、篝は「そうなのか!?」と驚くのを皆が見ている中、


「ふ、ふふ…。」


サムが何やら俯きながら笑いを堪え始め、皆の注目が彼に集まる。


「失礼。メリ…篝がここまで自分を表に出すのはいつぶりだろう。そう思うと可笑(おか)しくなってしまいました…申し訳ありません、非礼をお詫び致します。」


そう言ってサムは居住まいを正し、凛に深く頭を下げた。




それから話はトントン拍子で進み、奴隷商での出来事や皆で一緒の屋敷に住んでいる旨の内容を伝える。

話が終わる頃には雰囲気が大分柔らかいものになり、次はサム達の番となった。


サムは一瞬強張ったものの、視線をやった篝から頷かれ、意を決した表情で語り始める。


話の内容は凛の予想通りと言うか、狐人達は獣人と言う事で(王国内で)厳しい扱いを受けており、常に苦しい生活を強いられているそうだ。

そこへ追い打ちを掛けるかの様に、前リーダーである篝の父ゾルダーが2年前に他界。(母のハノラは篝を産んですぐに亡くなっている)


狐人族は(獣人族の中で)身体能力がそこまで高くはないものの、火の扱いに長けた種族だ。

篝の父ゾルダーはサムを含めた集団内で1番の強さを持つ。


その彼がいなくなり、戦闘力が落ちた事で一気に苦しくなった。

ここ2年程で、餓死した者を含めて半分程にまで人数が減ってしまう。


今はこの森でやり過ごしつつ、木になっている実や生えているキノコでどうにか凌いでるとの事。




ゾルダー(前リーダー)がいなくなり、どうにか皆を纏めようとはしたのだが…どうやら役不足だった様だ。私がリーダーになってから、何人もこの世から去る結果となってしまった。」


「それは違う。」


「メリル?」


「あたし達はサムが必死に頑張る姿をずっと見て来た。だから感謝こそすれ、文句を言う資格は誰にもない。」


「だが…。」


「それにだ、サム。お前、このまま1人だけ行方を眩ませるつもりでいるな?」


これに狐人達ははっとなり、サムに視線が集まる。


「…仕方ないんだ。私のせいでこの現状を招いてしまった。なのに手を差し伸べられたからすがろう等と、それではゾルダー達に申し訳が立たなくなる…。」


「良いんだ。あたしはサムも今までの苦労から報われるべきだと思う。皆もそうだろう?」


そう言って篝は周りを見渡し、狐人達は同意するかの様に大きく頷いた。


「…ありがとう。」


サムは感極まって涙し、そんな彼の元に皆が寄り添っていく。




5分程でサムは落ち着き、そこへ安堵も重なってかお腹の鳴る者が続出。

一拍置いて笑いが起き、落()着いた()所で食事を摂ろうとなった。


凛はその場にポータルを設置し、篝が案内役、美羽はサム達に清浄魔法(クリーン)を掛ける役として先に向かわせる。

サム達は篝達がいきなり消えた事にどよめき、凛がポータルの説明をしても半信半疑と言う感じだった。


やがて待ち兼ねた篝がポータル越しに顔を出し、驚くサムの腕を引っ張る形で移動を行う。

それを合図に、狐人達は次々とポータルを潜っていった。


「ただ今戻りました。」


そこへ、紅葉が1体のゴブリンと手を繋ぐ形で姿を現した。


「あれ?見ないと思ったらその子の所にいたんだ。」


凛は改良された空間認識能力でゴブリンの事を把握しており、興味ありげにこちらを見ていたのも知っていた。

だが途中からサム達の方に意識を向け、彼らを屋敷に送り届けてから向かうつもりでいた。


「凛様もご存知だったのですね。先程から(森に入ってから)常に呼ばれる感じがしておりまして…なので、私の方から出向き、声を掛けさせて頂きました。」


「そうなんだ。(宜しくね。)」


「(! うん、宜しくー!)」


凛は紅葉と話した後にゴブリンの方を向き、念話でやり取りする。

ゴブリンは一瞬驚きはしたものの、すぐに元気良く返事を返した。


『………。』


そんな凛達の様子を狐人達は不思議そうに見ており、凛が紅葉が元ゴブリンで感情に敏感だと説明すると、(配下に魔物がいる事に腑に落ちない部分はあるものの)ひとまずは理解して貰えた。




それから、凛達も一旦屋敷へ向かうのだが、屋敷の周辺で魔物の討伐を行っている翡翠達はまだしも、何故か屋敷で寛いでいる筈の火燐と雫までいなかった。


凛はナビに火燐達がどこに行ったかを尋ねるも、ナビは自分が所用を頼んだとしか答えては貰えなかった。

取り敢えずサム達とゴブリンの食事の用意を済ませ、何かあった時用に篝と紅葉を屋敷に残し、美羽やニーナ達を連れて再び森に戻る。


移動後、凛はポータルを回収し、今度は使い捨てタイプのポータルを設置。

20キロ程北北西に進んだ所にある、ニーナ達の暮らしていた村付近を出口に定め、再びポータルを潜った。


一行は村がギリギリ視認出来る場所に出ると、ニーナ、トーマス、コーラルが先導する形で凛達を案内。

だが村へ近付くにつれ、何か争いでもあったのか複数の建物の一部が破壊、血の跡と思われる場所が何箇所かあるのが分かった。


事態を重く見たニーナ達は急いで村へ入り、生き残っている者がいないかの捜索を開始。

そこに凛も加わり、美羽は怖がるナナをひたすら宥めていた。


(凛が探索や空間認識能力を使い)10分程で村長含む18人の生存が確認出来た。

いずれも、空腹だったり脱水症状を起こしてはいたものの、命に別状はなかった。


現在は村の中で最も大きい村長宅に皆を集め、彼らに消化に良いスープを振る舞い、同時に『バイタライズ』の魔法を掛けて回っている所だ。

バイタライズは篝を助けたのを教訓に開発した魔法で、相手に活力を与えたり活性化させる効果がある。


凛は村人全員の容態が回復したのを確認後、壮年の男性こと村長のウタルに経緯を求めた。




凛達がいるのはコーストと言う村で、東に少し進むと、弱いながらも魔素点(マナスポット)であるスナフ山が。

西北西の方角へ15キロ程離れた場所には、クレナと言う街がそれぞれ存在する。


王都からサルーンや商国へ向かう際、ほぼ全ての者達が通り道だったり、利便性の理由でクレナや(アダムが治める)コーリンの街を経由する。

その為、コーストの存在は地元に住む人位しか認知されておらず、しかもあまりの貧しさからどこの領にも属していない。


若い者程街や都市に向かう傾向が強く、働き手は減る一方。

そこへ貧しさ故に行った口減らしも相まって、昔は何百人かいた村も、今ではほんの僅かしか残っていない…と言うのはニーナ達から聞いており、ウタルも同様の説明を凛に行う。


ここから先はニーナ達が知らない内容となるのだが、2日前に村が盗賊に襲われたらしい。

しかも、ただでさえ少ない食料を根こそぎ持っていかれてしまったそうだ。


盗賊達は脅しも兼ねてウタル達や建物を攻撃しはしたが、食料を得るや否やすぐに村を去っていった。

ウタル達はしばらく呆けた後、急いで怪我人を治療して村中から資金をかき集め、ノトと言う青年にクレナで食料を買って来るよう頼んだ。


だが2日明けた今になってもノトは戻らず、この時点で既に村人達はかなりの空腹状態だったとの事。


「災難でしたね…。」


「はは、全くです。皆様が来て下さらなかったら、我々はどうなっていた事やら…。」


「村長。あまり言いたかないんだが…どうしてノトなんかに頼んだんだ?あいつの素行の悪さは村中が知ってるだろ?クレナに行って帰って来るだけなら、ハンスのおっさんでも良かった筈だ。」


ノトは23歳の男性で、面倒事を嫌がり、指摘や注意されるとすぐに(へそ)を曲げ、近くにいる人や物へ当たり散らす性格の持ち主。

ハンスは44歳の男性で、強面だが愛嬌が良く、また真面目な性格で皆に慕われている。


そのハンスだが、(腹部に傷を負ったのか)巻かれた包帯が血や膿で滲んでいる状態だった。

凛達が来た時は辛そうな表情の上に大量の冷や汗を流しており、呼吸も荒かった事から、彼が1番危なかったとも言える。


トーマスはノトの性格からして資金を持ち逃げしたのでは?と疑問に思った様だ。


「トーマス。お前は見ていないから分からんかも知らんが、ハンスは盗賊が来た時に怪我を負った。」


「腹の傷はそん時のだったのか…。」


「そうだ。一応は魔物が現れるのでな、万一の事を考えたらとても無理はさせられる状況ではなかった。

それとノトの件だが、彼が自分から立候補して来たんだ。しかも急いで戻るからと力説され、他に適任者がいなかったから彼に託したのだが…。」


「そのまま持ち逃げされた可能性は?」


「分からん。が、戻って来ない所を見るに、その可能性は十分にあると思っている。」


そう言って、ウタルは凛の方を向く。


「凛様。この度は食料をお分け下さり、ありがとうございます。その上で厚かましいのは重々承知なのですが、奴隷でも何でも構いません。我々を貴方様の元に置いて頂けないでしょうか。この通りです。」


そして、言葉の最後で深く頭を下げ、他の村人達は真っ直ぐな視線を凛に向ける。


ウタルはトーマスの腕が治っているのに勿論気付いており、それは他の村人達も同じだった。

そしてニーナ達の凛に対する態度から、とても素晴らしい才能を持ち、しかも優しい主人に巡り会えたと判断。

村を放棄し、生き残る為に自分達も凛へ付いて行く事を決意する。


凛は行き先が死滅の森になるが構わないかと尋ね、ウタル達は揃って驚きはしたものの、ニーナ達に全く怯んだ様子が見られなかった為「大丈夫です」と答えた。




それからウタル達は30分程で身支度を終え、凛達と共にポータルで屋敷に向かう。

皆でリビングに入り、食事を終えたサム達と対面。


(知らない間柄だった為)両者共に身構えはしたものの、凛から互いの説明を受けて一気に親近感が湧いた様だ。

代表でウタルとサムが握手し、他の者達も相手に挨拶したり声を掛けたりしていた。


凛はタイミング的に丁度良いと判断し、皆を浴室へ案内してから男性側に入ろうとするも、ニーナ、トーマス、コーラルの3人から全力で拒否される。

トーマスが男性側を、ニーナとコーラルと紅葉が女性側(ゴブリン含む)を案内するとなり、渋々美羽と2人でウタル達の昼食を用意するとなった。


それから2時間程経ち、入浴や食事、屋敷や凛達についての説明を終えた頃。(雌ゴブリンが紅葉に言われるがまま食事を摂っている事に驚かれ、紅葉が元ゴブリンだと知らされてもっと驚かれた)


火燐達と翡翠達がほぼ同時に、それから少し遅れる形でジェシカ達が帰宅して来るのだった。


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