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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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40話

高度を上げつつ、改めてワイバーン達を確認する凛。


水色っぽい鱗に体皮。

首がそこそこ長く、腕…或いは前脚と呼べる部分と翼が1つになった、所謂(いわゆる)西洋タイプのドラゴンの様だった。


凛がある程度距離を縮めると、ワイバーン達が一斉にブレスを発射。

空は自分達のテリトリー。

小さき存在(人間)風情が生意気な、との表れなのかも知れない。


それらを凛は(空中にいながらにして)軽々と躱し、やがて彼らと対峙。

尚も余裕を見せる彼の態度が気に入らないワイバーン達が、グルルルル…と唸り声を上げる。


そんな相手方の心境を知ってか知らずか、左手を明後日の方角へ勢い良く突き出す凛。

その先…無限収納から玄冬()を取り出し、右手を添え、低い体勢━━━所謂(いわゆる)、居合いの構えへと移行。


「…君達には悪いけど、このまま街へ向かわせる訳には行かない。おとなしく森に帰━━━」


言い終えるよりも早く、最も近くにいたワイバーンの答えがブレスだった。

凛は避けるどころか動く素振りすら見せず、地上からどよめきが起きる。


ブレスは急速に距離を詰め、あわや大惨事…になるかと思いきや。

慌てる事なく抜き放った武器(玄冬)により、(霧散させる形で)ブレスを無効化。


実は抜刀する際、玄冬に魔力を纏わせていたのだが…込めた時間は極わずか、直撃(インパクト)の瞬間だけ。

一見するとただ武器をぶつけただけでブレスが掻き消えた風にしか感じられず、この場にいた全員が息を呑む。


ワイバーン達もそれは同じで、目を奪われている内に肉薄。

気付けば直接触れられる位置に彼はおり、繰り出された袈裟斬りで1体が真っ二つに。


「グギャアアアアアア!!」


斬られたワイバーンは断末魔と共に、地面へと落ちて行く。


「よし…あっ!」


凛は落下するワイバーンから群れに視線を戻すと、その内の4体が移動を開始したところだった。


仲間が簡単にやられた腹いせか。

将又(はたまた)せめて一矢報いる目的での玉砕覚悟か。


ともあれやる気になったのは確かで、ワイバーン達は半分近い戦力で(もっ)て。

しかも、無理を押してでも街へ向かうとの選択肢を選んだ模様。


凛の手前でワイバーン達は2体ずつに分かれ、左右を通過。

それを察知した凛が後ろを向き、自身の近くに6本のウインドアローを顕現。

その表情は気負う…どころか伏し目がちなのは勘違いではなかった。


理由はドラゴン(ワイバーン)

ドラゴンと言えばファンタジー定番の種族で、凛にとっては憧れの1つ。

出来れば乗りたいし、ペットまでいかないにしても意思疎通位は図ってみたい。

しかし前回(死滅の森)に引き続き、今回も見送る形となったのが(彼の中で)非常に残念でならないのだろう。


「…仕方ない。僕は右の方へ向かうから、ナビは左側をお願い。」


《畏まりました。》


気持ちを切り替えた凛が顔を上げる。

ウインドアローの操作をナビに任せ、再び居合いの構えへ。

そして右足裏部分に天歩での足場を作り、猛烈な勢いで跳躍。


「はぁっ!」


別れた2体の内。

右側にいた個体の頭上を高速で通り抜けるのと同時、凛は両翼を切断。


ワイバーンにとって、翼は飛行手段兼、魔力を調整する為のバランサー。

両翼を失ったワイバーンは飛行継続が困難となり、「ギェェェェェ…」と後ろ足をバタつかせながら落ちて行く。


凛はそんなワイバーンに一瞥(いちべつ)もくれず、空中で急ブレーキ。


「…ふっ!」


即座に軌道修正を行い、残されたもう1体。

一転して逃げようとするワイバーンへ迫り、長く伸びた首を素早く斬り落としてから武器を収める。


「こっちは終わり、と。ナビが2体倒してくれているはずだから、残りは5た…い……?」


群れの方へ意識を移す凛。

すぐにでも追撃出来るよう、右手を前に掲げるも…残っているワイバーンは何故か1体のみ。

5体ではなく、単体にまでその数を減らしていた。


「「………。」」


凛は事情が飲み込めない。

最後に残ったワイバーンは降参とばかりに涙目を浮かべるとの意味で、互いに見詰め合う形に。




「えっと…ナビ。残りのワイバーンって…あの1体だけ?」


凛が気まずそうに告げる。


目の前にいるワイバーンは来た時から最後尾におり、羽ばたく以外の動作は見せなかった。

そんな彼(彼女?)に敵意は一切感じられず、このままやっつけるのは気が咎める(悪い気がする)との考えが生まれたのかも知れない。


《はい。ワイバーン2体相手に対し、ウインドアロー6本は過剰だと判断。ですので私の方でウインドアローを操作し、1本で1体。又は1本で2体のワイバーンの撃墜致しました。》


「ウインドアロー1本で2体…?」


ナビの言う通り、1つの攻撃で2つの結果が得られるのであれば、確かに余りが生じる。


そう考えた凛は目を凝らし、降参の意を示すワイバーンをじーーー…っと凝視。

するとワイバーンより少しだけ左斜め上。

及び右斜め上の座標に、ウインドアローが1本ずつ浮いているのを確認。


「あっ!良く見たら近くに(ウインドアローが)2本ある!」


《はい。あちらの1体は、元々敵意を感じておりませんでしたが、現在は完全に消失。他の個体は全て絶命したのを目の当たりにした事で、畏縮(いしゅく)したのではないかと考えられます。》


ナビは凛へ説明すると同時に、自らが操作したウインドアローがワイバーン達の眉間。

或いは首を貫通し、隣にいた個体までも巻き添えにして撃墜する場面(シーン)の映像を転送。

彼をして「うわぁ…」と引き攣らせた。


《余ったウインドアローを牽制に使用させて頂き、いつでも操作は可能です。マスター、如何いかがなさいますか?》


「(飛んでる相手の眉間に全弾命中させるとか、どこのヒットマンですかね。)…えっと、それじゃあ折角だし、このワイバーンと意思疎通━━━」


《既に済んでおり、『降伏するから、命までは取らないで欲しい』との事です。》


「そうなんだ…。(僕が尋ねる前にワイバーンとやり取りをして貰えたのはありがたいんだけど、せめて最後まで言わせて欲しかったな…。)」


ナビに話を(さえぎ)られた凛は、ややげんなり気味。

それでも、折角得られた機会。

表情を引き締め、ワイバーンとの対話を試みる。




「…僕の言葉が分かる?」


『ひっ!?分かるっす!だからこの通りっす、命だけは助けて欲しいっすー!!』


「おぉ、伝わった!」


何故三下口調なのかは置いておくとして。


声の高さから(かんが)みるに、生き残ったワイバーンは恐らく雌。

そして対話スキル越しとは言え、まさか自分とコンタクトを取れると思わなかったのだろう。

恐怖のあまりポロポロと涙を流し、更に悲壮感を漂わせた。


「色々とごめんね?でもこちらの都合上、君達をこのまま放置する訳にはいかなかったんだ。」


凛は変わった喋り方するなと思いつつ、尚もコミュニケーションを図る。


『気持ちは分かるっす。出来れば自分も来たくなかったっすから…。』


「そうなんだ?取り敢えず、僕は君の仲間達を回収しに行って来るよ。いつまでも放置と言う訳にはいかないからね。だから悪いんだけど、君は下で待ってて貰える?あ、移動はゆっくりで構わないから。」


『了解っす。自分、言われた通りにするっす!』


どこで覚えたのか、それまでひたすら羽ばたくばかりだったワイバーンが敬礼の構えへと移行。

その体勢のまま、静かに下降し始めた。


一気にではなく静かにと言う辺り、彼女は意外にも魔力の扱いに()けているのかも知れない。


そんな彼女を、器用な動きをするなぁ、とか。

やたら人間くさいけど、実は他のワイバーンも似たような感じだったんだろうか?的な表情で凛は眺める。


(そう言えば、こっちに来たワイバーンは()()()()()だったけど…家の方は大丈夫かな?)


続けて、彼はふと思い出した様子で屋敷がある方角を見やる。




その頃、凛の屋敷はと言うと


こちらの方でもワイバーン達との戦端(せんたん)が開かれ、現在進行系で奮闘中。


その数なんと50。

残された者総動員で襲撃者に当たる真っ最中でもあった。


「おらぁっ!」


「グァァァァ…。」


屋敷の上空にて。

火燐が大剣(ルージュ)を振るい、ワイバーン1体を斬り伏せる。


既に全体の4割程のワイバーンが絶命。

地面のあちこちに彼らの遺体が転がり、近くに居合わせた見物人達は()うに逃げ(おお)せているとの状況だ。


「ちっ。こいつら雑魚の癖に数だけは多いぜ…。」


大剣を肩に乗せた火燐が、ややうんざり気味でボヤく。


ルージュ(新しい武器)は実に素晴らしく、その性能を如何(いかん)なく発揮。

それを黒鉄級上位の彼女が振るい、ワイバーン達をまるで紙屑(かみくず)みたく屠り続けている。


「とは言え、うろちょろされるのも面倒だし…やるしかねぇか。次っ!」


しかし不満を漏らしたところで、何も解決しないのは明白。

すぐに気を取り直した彼女は、別なワイバーンに狙いを定める。


そんな火燐からそう離れていない…むしろ割と近くにエルマとイルマの姿はあった。

火燐とは対照的に、結構ギリギリの戦いを強いられているのが微妙に悲しい。


「うひゃあ!」


多少の差はあれど、エルマ達とワイバーンはどちらも金級の強さだからだ。


ワイバーンによる噛み付き攻撃を、エルマがあわわわ…!とのセリフの後に慌てて回避。

両翼を広げたワイバーンは、大凡(おおよそ)2トントラック位の大きさ。

それだけの質量のものが横向きの状態で。

しかも結構な速度で突っ込んで来るものだから、エルマが驚くのも仕方ないと言えよう。


すると今度は、別方向にいるワイバーン2体が、空中でわたわたするエルマに向けブレスを射出。

エルマは必死の表情でブレスを盾で防ぎ、若しくは避ける形でやり過ごす。


「あっぶなっ!?あたし達、火燐ちゃん達みたいに強くないんだよ!?1体だけでも一苦労なんだよ!?もっと手加減してよ!?」


「エルマちゃん…私達、もっと強くならなきゃだね。」


軽くキレかけたエルマをイルマが苦笑いで宥め、サポートに入る。




場所は変わり、火燐達より随分と高度が低い、屋敷から5メートル程真上の位置。

そこで雫と翡翠が背中合わせでワイバーン達を迎撃しまくっていた。


「ぐぬぬ…翡翠め、その(ヴェール)で複数の矢を同時に射るとかずるい。」


有利どころか一方的に見える光景。

ただ、雫的に何やら思うところがあるらしく、悔しそうな顔で下唇を噛み、同時にいくつもの魔法を行使するとの器用っぷりをやってのけた。


「そんな事言ってる場合じゃないでしょー!数が多いんだから仕方ないじゃない!ってか、雫ちゃんだって(ブルー)で複数の魔法を同時に飛ばしてるしー!」


翡翠は2~4本のウインドアローを掴んでは放ち、その内の半分でワイバーン弱らせ、もう半分で止めを刺すみたいな割合で撃墜。


それに対し、雫は初級のアイスニードルに加え、氷系中級魔法の1つ。

電柱を3分割にした位の大きさで、槍みたく先端を尖らせた『アイシクルスピア』。


同じく中級魔法の1つ。

属性を水に変え、一般的なレコード盤の様な形で高速回転により相手を切断する『アクアエッジ』を並行。

或いは多重展開し、単体だけでなくまとめて倒したりしていた。


つまり、ちまちま攻めるしかない翡翠に対し、雫は多方向を一斉に攻撃。

挙げ句ワイバーンの弱点属性を突けるのだから、不満を漏らすのはお門違い。


「さて、何の事か私には分からない…。」


すぐに自分側が不味いと踏んだ雫が適当なセリフで誤魔化し、


「雫ちゃん…実は意外と余裕?」


呆れ顔での翡翠のツッコミも加わって、微妙な空気だけが流れた。


と言うのも、2人共戦闘が始まってから立て続けに攻撃してはいるが、あまり疲れらしい疲れを感じていないからだ。


ナビによる超効率化は勿論。

凛が昨日渡した、(簡単ではあるが)魔力消費や魔力自動回復、体力自動回復の効果が付与された装備品によるものが大きい。


「…楓ちゃんにいつまでも障壁(バリア)を張らせるのも悪いし、一気に終わらせるよ。」


違和感を覚えたのは自分だけではない。

そう判断した翡翠が勝負に出━━━


「ん。」


少し遅れて雫も参戦。


更に、持ち場を片付け終えた火燐も加わり、殲滅行動へ。

ワイバーン達は瞬く間に駆逐され、その光景をエルマ達が若干物悲しそうに。

それでいて悔しさを含ませた瞳で見続けた。




4人目の主力こと楓。

屋敷の前に立つ彼女は、敷地全体を覆う形で魔力障壁を展開。

残ったメンバーの中で、それも凛に次いで防御に秀でる彼女が守りを一手に引き受け、火燐達が攻撃に専念出来る環境を用意する為でもある。


しかし彼女も翡翠達と同様。

凛から賜った新装備に身を包み、ナビの恩恵まで施されているとの状況だ。


故に、結構な魔力を込めて障壁を維持しているのにも関わらず、ほとんど疲れを感じていなかったりする。


「私、(魔力障壁で屋敷を)守るだけで終わりそうですね…何だか皆さんに悪い気がします…。」


自分は攻撃に参加せず、ただ得意()な事()行って(守って)いるだけ。

申し訳なさから、胸の前の位置で掲げる(マロン)の手に力が籠もる。


「俺達は皆様と違い、(飛ぶ事が出来ない為に戦闘の)出番がほとんどない。だからこそ楓様をお守りするのがせめてもの役目。皆、分かっているな?」


最後に暁達。

楓の周りに布陣する彼らは、もしワイバーン達が抜けてもすぐに動ける構えでいる。


「皆さん、ありがとうございます…。」


こくこくと頷く旭達に、優しく微笑んだ楓がお礼を述べるのだった。

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