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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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36話 9日目

9日目 午前8時前


「はぁ…。」


凛達が住まう家より(およ)そ1キロ程離れた街、サルーン。

街の中央にある屋敷、その執務室にて、1人の男性が溜め息をついた。


男性の名はガイウス。

歳の頃は40歳半ばだろうか。

鷹を思わせる鋭い目付き、口元にはきっちり手入れされた髭を蓄え、ライトブラウンの色の髪を短く刈り上げた髪型をしている。


ガイウスはここサルーンの領主を務め、現在執務室の奥にある机に着席。

机の上に置かれた、1枚の羊皮紙を厳しい目で(にら)むとの状況だ。




辺境の街サルーン


そこはアウドニア王国で最も南東に位置する街。

少し東へ進むとダライド帝国。

西に向かえば、商業国家ミョルソドとの国境線にぶつかる場所にある。


北には山脈が広がり、南には大森林たる死滅の森が鎮座。

街から北西・北東・西南西方面へ数十キロ進むと、王国・帝国・商国の都市がそれぞれ存在。


ただそこまで遠くないが元で、南から死滅の森の魔物が。

端にある事が関係し、東の帝国方面からは過去に何回もちょっかいを出される…と言った感じで悪い要因が幾つも重なり、不人気の街扱い。


人口も2000人を切り、街と言うにはギリギリの規模。

屋敷と呼べる建物は、領主の館位。

ド田舎にある辺境の地として、衰退の一途を辿(たど)る。




そんなサルーンだが、8日前から大騒ぎになっていた。


理由は、外壁から見える位置に立派な屋敷が建ったから。

それも、何の前触れもなく…だ。


アルフォンス達警備からその様な報告を受けたガイウスは、死滅の森。

及び(くだん)の屋敷周辺にいる魔物にも、何らかの変化が生じ(刺激を与え)るのではと危険視。


そこから昨日に至るまでの間、見張りを強化するのは当然として。

冒険者ギルドと連携し、即座に対応出来るよう待機。

及び道具類を掻き集められるだけ掻き集め、不測の事態に備える等。


戦闘と睡眠時を除けば割とのほほんとした凛達とは裏腹に、かなり物々しい雰囲気が街全体を覆っていた。


しかしそうまでして手の込んだ準備をするも、屋敷や死滅の森に動きらしい動きは特に見せず(いたずら)に日々が過ぎるばかり。

痺れを切らせたガイウスがアルフォンス達を派遣。

危険を承知で建物の調査へ向かわせたとの流れに。


(もっと)も、街の外壁から見えていたのは、やや小高い坂道の先にある屋敷の3階部分。しかも裏側だけ。

凛達は2階から下しか使っておらず、日中はほとんどを死滅の森内にて過ごす。

夜になると明かりは()けるも、遮光カーテンを用いているので(裏側から見て)やはり真っ暗。

通行人は少なく、凛達が姿を見せる前か見せた後、()しくはどちらかが引き上げてからになる。


全ては悲しい()れ違い、情報不足が招いた結果と言えよう。


ともあれ、部下を連れたアルフォンスがサルーンを出発。

4時間程の後に無事帰っては来たのだが、謎の赤い箱を抱えながらでだった。


ガイウスは不思議に思ったものの、まずは顛末(てんまつ)を聞いてからだと判断。

そこからアルフォンスに説明を求めるまでは良かったのだが…やれ出されたお菓子が美味しかっただの。

やれ見える範囲、全てに()いて質が高く、紅茶も良い香りで上品な感じがしただの。

やれ主と思われる人物がオーガを従えて現れた挙げ句、美男美女しかいなかっただのと意味不明な報告ばかり。


ガイウスはアルフォンスへ対し、怒りを通り越して呆れ顔になったのは言うまでもない。


そんなこんなで紆余曲折あったものの、ようやく赤い箱の話へ。

中身は2つの球で、深碧(しんぺき)色をしたのがフォレストドラゴンの宝玉()

もう片方の無色透明の球は、全て魔力で構成された魔石だと(しら)される。


あまりのインパクトにガイウスは椅子ごと後ろへ()()り返り、心配するアルフォンス達の手を払い()け、軽くふらつきながら起き上がる。


容易には信じられないが、現時点で嘘だと決め付けるには早過ぎる。

どちらにせよ真偽(しんぎ)を確かめる必要があるとして、2つの球を鑑定するよう頼んだのが昨日の終わり。




それから一夜明けた現在。

彼の手元には纏められた鑑定結果が。

ガイウスは羊皮紙、続けて机の上に置かれた箱入りの2色の球に視線を移し、再び溜め息をつく。


「宝玉は恐らく本物、偽物である可能性が限りなく低い。魔石は高純度の魔力で出来ており、どちらも相場は不明…か。」


宝玉とは、端的に語ればレアドロップ品。

それなりに長く生きた龍の心臓部分横にある部位(素材)で、魔法を増幅し、魔力の流れを円滑するとの効果が。


勿論そのまま使用した方が得られる恩恵は大きいのだが、並の者だと手に余るどころか勿体ないまである。

なので適当な大きさに砕く。

又は形を整えた後、魔法使いが使用する杖の先端に嵌められたり、剣の装飾品の一部として埋め込まれる等。

戦闘を補助する媒体として使われる事がほとんど。


しかし長く生きたからと言って必ずある訳ではなく、折角討伐したのに宝玉を得られなかった場合の方が圧倒的に多い。


今回はたまたま。

それもあっさりと1体目のフォレストドラゴンから入手出来たものの、出ない時は百体以上倒しても全く出なかったりする。(逆に、今までの経験を元にしっかりとした戦闘を行っていれば、短時間で凛に倒される事はなかったとも)


その為、滅多に市場へは出回らず、出ても白金貨(数億円)白金板(数十億円)は下らない貴重なもの。


莫大な資産へ変わる金の卵にもなれば、(狙われるとの意味で)破滅へ一直線との可能性もあるフォレストドラゴンの宝玉━━━因みに、情報(データ)は既に取得済み━━━だが、凛は単純に珍しいもの(コレクション)として。

一緒に入れた魔石は凛が自身の純粋な魔力のみで創り上げ、何らかの用途として役立てて欲しい…みたいな感覚でそれぞれガイウスに贈っていた。


それと魔物からも、宝玉と同じく心臓部分横の位置で魔石と呼ばれるものが採取出来る。

ただしこちらは球状ではなく、種類によっては楕円(だえん)だったり三角。

一風変わったものだと星型だったりハート型なんてのも。


その魔石が(水を出したり光を照らす等の)魔導具(マジックアイテム)の燃料となるのだが、採取出来る魔物は基本銀級から上且つ10体に1体位の頻度。

見付けたらラッキー的な感覚だ。


凛はその点はナビ越しに知ってはいたものの、魔導具そのものが高価。

貴族や豪商、高位の冒険者以外はあまり必要視されないまでは気付いていなかったりする。




「全く、とんでもないものを贈ってくれたものだ。これが偽物であれば、苛立ちこそすれどれだけ気が楽だったか…。」


ドラゴンに宝玉が存在する事自体は把握済みではあったが、あくまで情報のみ。

それも若かりし頃に見た、百年以上前の文献での話だ。

実際に目の当たりにしたのは無論初めてだし、とてもではないがポンッと気軽に渡して良いものでもない。


ガイウスは頭を抱えたくなるのをどうにか抑え、精神を落ち着ける目的で(まぶた)を閉じ、深呼吸。

数回繰り返し、幾分か冷静になった事で何かに気付いたのだろう。


はっとした表情を浮かべ、すぐに考える素振りを見せる。


「…いや待て?ここは反対に、フォレストドラゴンを倒せるだけの強者と繋がりが持てる好機(チャンス)だと捉えれば…ふむ、ならば行動は早いに越した事はないか。おい、誰か。」


「はっ。」


「アルフォンスに、至急ここへ来るよう伝えてくれ。」


「分かりました。」


扉の向こうにいた男性へ指示を飛ばし、力が抜けたのだろう。

ふーと息を漏らし、深く椅子に腰掛ける。




その頃、凛達はと言うと。

死滅の森へ向かう為の身支度を、銘々(めいめい)が自室で整えているところだった。


昨晩、凛は美羽、火燐、雫、翡翠、楓、紅葉、暁の7人に、新たな武器と服を下賜(かし)

それらは各自が出した希望や要望を元に、或いは凛の判断に委ねるとの形で用意したものだ。


美羽達は貰ったばかりの衣装を自慢したり、試着した姿を見せ、互いに喜び合う。


それは今も変わらず、朝食後に自室へ向かう足取りも実に軽やか。

そんな美羽達を、エルマ達や旭達が羨ましそうに見ていた。


彼女ら、彼らは美羽達の後ろを歩く事が多い。

凛が武器等を与えている時もこっそりと、自慢や自室に戻ってから着替えた際も割と近くにいたり。


楽しそうに前を歩く美羽達を目標に、エルマ達は自分も近い内に貰えるよう頑張らねば…と。

密かに闘志を燃やすのだった。

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