表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流
37/261

34話

妖狐族→狐人族に変更しました。

「ここサルーンは、先程まで我々がいた冒険者ギルドの近くに、今朝方来た商人の様な者が集う商業ギルドと、鍛冶工場が併設された武具屋。それと傷を治すポーションや魔力を回復させるマジックポーション、毒を治す毒消しや野営の際に使用するテントと言ったものを取扱う道具屋があります。

後は…凛殿には物足りないでしょうが、肉屋や八百屋、食事を提供する食事処や宿屋が何箇所かある位ですね。」


「成程。因みに、魔道具(マジックアイテム)を扱うお店と言うのは…。」


「魔石を含め、道具屋に少しある位ですね。サルーンは死滅の森を目前にした辺境の地、近隣の魔物も鉄級や銅級が主なのであまり需要が…。それに、物資が滞る事自体珍しくないと言いますか…。」


「苦労されてるのですね。」


「はい…。」


凛達はアルフォンスと話を交えつつ、街の中を案内して貰っていた。

火燐は退屈なのか(しき)りにあくびをしており、雫はこしこしと目元を擦る姿が見られたりするが。


「(折角の機会だし、勉強も兼ねて色々と買いたい所ではあるんだけど…未だに無一文だからなぁ。先にオークキングかフォレストドラゴンの素材を売ってでも資金を用意しておくべきだった。)」


そしてアルフォンスに連れられる形で店に入っては、それぞれの店主から「冷やかしは帰れ」との視線を向けられる為、凛は堪らず内心苦笑いとなる。




「…ひとまず、街の案内は以上となります。後は奴隷商を残すだけですね。」


「ありがとうございます。」


「ここまでで何か質問等はありますか?」


「いえ、今の所は特に…あ、そうでした。ガイウスさん達と交渉した結果、サルーンでお店を開く事になりました。商品の1つに、先日渡したクッキーと同じ様なのものを並べる予定です。」


「本当ですか!?妻と機会があったらまた食べたいねー、なんて話した所だったんですよ。なので、仕事が終わり次第報告させて頂きますね。いやー、これからが楽しみだなぁ!」


凛とアルフォンスは精肉店の外で一旦止まった後、再び移動を始めながらにこやかな雰囲気で会話を行う。


やがて、一行は冒険者ギルド裏手にある建物…奴隷商に到着した。

どうやら奴隷商は地下にあるらしく、アルフォンスは下へ続く階段を左手で指し示しながら口を開く。


「さて、こちらが今回の目的地である奴隷商になります。」


「まさか地上ではなく地下に奴隷商があるとは…。」


「ええ、利用される方は口を揃えてそう仰られます。まぁ、珍しいと言えば珍しいのでしょうが…では入りましょうか。」


「お願いします。」


凛はサーチを介し、サルーンを調べると言った行為はした事がなかった。(単純にサルーンや屋敷の周りに意識が向いていたり、プライバシーの侵害だと思って控えたのもある)


一行はアルフォンス先導の元で階段を進み始め、降りた先にある木造の扉を経て奴隷商の中へ入る。




部屋は15畳程の広さで、階段と同じく石造りで出来ていた。

そして入ってすぐの位置にカウンターがあり、他は何もなく左右に通路が広がっているだけの様だった。


そのカウンターには、背中まで伸ばした赤茶色の髪を1本で纏め、垂れ目で優しそうな表情の30代前半と思われる女性が座っている。


「マーサさん、こんにちは。」


「これはアルフォンス様。本日はどう言ったご用件でしょうか?」


アルフォンスは笑顔でカウンターにいた女性に声を掛け、女性ことマーサは立ち上がり、お辞儀を終えてから用件を尋ねる。


「私は案内役でして、こちらの凛殿が奴隷を見てみたいとの事で伺わせて頂きました。」


「左様でございましたか。初めまして、私はここの奴隷商を仕切らせて頂いております、マーサと申します。」


「こちらこそ初めまして、僕は凛 八月朔日と申します。」


「まぁ、お貴族様でございましたか。これは失礼致しました。」


「いえ、僕は貴族ではありません。」


「?」


「こほん。早速で申し訳ないのですが、こちらで取り扱っている奴隷を見せて頂いても宜しいでしょうか?」


「あ、はい畏まりました。ご案内致しますね。」


アルフォンスは右手で指し示しながら凛の紹介を行い、マーサは凛が名字持ちから貴族だと判断。

申し訳なさそうに頭を深く下げ、凛の説明に首を傾げる場面があったものの、凛に促されて左側の通路の案内をする事に。




移動中、アルフォンスからの説明で、マーサが父親から奴隷商を引き継いだ店主である事が分かった。


「わ、私の事はどうでも良いのです。」


凛達は感心した表情となり、マーサはそう言って恥ずかしいのを誤魔化す様に、奴隷になる要因は犯罪を犯すだけでなく、身寄りがいなくなったり、何らかの事情で生活を維持するのが困難になった場合も生じると話す。


丁度その頃に奴隷達が収められている檻に一行は辿り着き、マーサは改めて奴隷達の紹介、それと奴隷になった経緯を説明し始める。


奴隷達は(6畳程の部屋に)2人1組で入っており、12部屋ある内の9部屋を使用。

収められているのは全て人間で、男性9人、女性5人の計14人が収められている様だった。

いずれも首に首輪が付けられ、沈んだ表情だったり、ギラついた視線を凛達に向けている。(ただし3人だけめちゃくちゃ怯えているが)




マーサの説明に凛が受け答えし、たまに火燐と雫も混ざって奴隷達と会話した結果、8人の男女(全員人間)を買う事が決まった。(その内の3人は安堵、1人はきょとんとし、1人は渋い顔、最後の3人は絶望の表情を浮かべていたが)


「…これで奴隷についての説明は以上となります。」


そう言って、マーサはカウンターに向けて歩き出す。


しかし凛はサーチ越しに、いまいる場所の反対側…つまり入って右側の通路にもう1人いる事が分かっていた。


「マーサさん、まだ紹介していない方がもう1人いらっしゃるのではありませんか?」


「! 何故それを…はぁ、分かりました。ご案内致します。」


マーサは凛からの問い掛けに驚きを露にした後、少しだけ迷う素振りを見せる。

しかしこちらを真っ直ぐ見続ける凛に根負けし、溜め息交じりで移動し始める。


「(でも、あの子がいると分かったと言う事は、もしかしたら…。)」


と同時に、何やら淡い期待も抱いていたりする。




凛達が再び移動を開始し、右側の通路の半分程にまで来ると、先程までにはなかった()えた臭いがして来た。

凛達は呼吸が不要、マーサは分かっていた為に表情が変わる事はなかった。

しかしアルフォンスだけ「う"っ」と言いながら口元に手をやり、辛そうな様子で眉を(ひそ)める。


「…ここです。」


「………。」


マーサが檻の少し手前で話し、凛が檻の前に立って向こうを見てみる。

すると、壁に頭と背を預け、手足を投げ出しながら脱力した様に座る1人の女の子がいた。


その女の子の見た目は18歳位、肩上まで伸ばした髪は元が綺麗な黄色か金色だった事を思わせる。

だが今はくすんでおり、全く手入れしていないのかボサボサとなっている。


そして汚れた白いワンピースを身に纏い、犬の様な耳と尻尾を生やしているのだが、左耳、右肘から先、左膝から先が欠けている様だった。

右肘、左膝、それと右目の周辺に包帯が巻かれ、いずれも少し黄色がかった赤色で染まっている。


だからなのだろうか、生気が感じられない表情を浮かべながら涎を垂らし、凛達が来ても何の反応も示さずにボーッとしている。


「…こちらの少女は狐人族でして、最近まで30人程の仲間と共に、街の北にある森で生活をしていたそうです。ですが食料となるものが尽きてしまい、団体で移動した所を盗賊に襲われたとの事です。」


「…話の腰を折ってすみません。その盗賊と言うのは…。」


「恐らくですが、先程火燐殿方が捕縛された盗賊とは別になるかと。」


「盗賊ってそんなにいるものなんですね。」


「はい。王国内で20近くいると伺っています。帝国や獣国、商国はもっと多いとか。」


「それはどうにかする必要が…。」


アルフォンスの情報から、凛は目の前にいる少女みたいな犠牲者を減らす為の案を考え始め、しかしすぐに話の途中だった事を思い出し、マーサへ続けるよう促す。


「あ、すみません。続きをお願いします。」


「畏まりました。彼女は重症を負いながらも盗賊の頭を倒し、仲間へ上手く逃げるよう告げて気を失ったそうです。丁度その頃、たまたま近くにいた隊商(キャラバン)が騒ぎを聞き付けて彼女達の元を訪れ、彼らの護衛が盗賊を追い払い、彼女を保護しました。

ですが彼女の傷は酷く、自分達では手に負えないとの事で、3日程前に彼女をここへ置いていかれました。」


少女は隊商に保護されたものの、(商品である)上級ポーションだとそこまで効果がない程に弱っていた。

上級ポーション以上のものは手持ちになく、部位欠損を回復出来る程の回復魔法が使える場所まで1週間掛かるとして、彼女の回復力に期待を込めつつ、食事代と布団をマーサに預けて旅立った。


「これまで何度かこちら(檻の前)から声を掛けたり、中へ入ってご飯を与えたり致しましたが全く反応がなくて…。正直、今晩か明日中には死んでしまうのではと思っておりました…。」


「そうでしたか…。」


マーサは悲痛な表情で説明を終え、凛も辛そうな表情となる。

因みに、どちらも少女に視線が向いている為に気付いていない様だが、部屋の右側部分には布団が敷かれてあった。(ただし、少女は使う気が全くなかった為に綺麗なままだが)




「(ナビ。)」


《既に念話が出来るよう、調整は済ませております。》


「(流石だね、ありがとう。君…君…聞こえるかい?)」


凛が念話越しに話し掛けると、少女の瞳がゆっくりと凛の方向に向いた。


「(…あたしを呼ぶのはお前か?もうすぐ死ぬって奴に今更何の用さ。あたしはどうにか仲間を守れたってだけで満足だし、仮に生きれるってなってもこの体ではな…。だからさ、あたしの事は放っておいて欲しい。)」


「…マーサさん、金額を上げて貰っても構いません。今からこの子の治療をしたいので檻を開けて下さい。」


「…上げる訳がないですよ。宜しくお願い致します。」


凛は少女からの返答後、俯きながらマーサに話し掛けた。

マーサは今にも泣きそうな表情で檻の鍵を開け、少女を凛に託すかの様に深く頭を下げる。


凛はそんなマーサに目もくれず、真っ直ぐ少女の元へ向かう。


「(お前…?一体何を…?)」


「良いから君は動かないで。まずは余計な菌を落とす…『清浄』。頼むから治ってくれよ…『パーフェクトヒール』!」


少女は凛を警戒して体を起こそうとし、そこを凛が左肩に手をやる形で抑える。

そして凛は傷が出来て時間が経っている事を考慮し、普段より魔力を費やして効果を高めた清浄を、続けて光系最上級回復魔法である『パーフェクトヒール』を少女に掛ける。


すると白い光が少女の体を包み、20秒程で手足等が生えた元の綺麗な状態の体へ戻った。

少女は何度か瞬きを行った後、驚いた様子で自らの手足に視線を向ける。


パーフェクトヒールは回復魔法でありながら、傷等を受ける前の状態に戻す再生魔法にも分類され、あらゆる状態異常にも効果がある。

その為、(病気を除き)生きてさえいればすぐに全快出来るのだが、現在は本職の集まりである神聖国さえも使い手がいなかったりする。


少女ははっとなり、凛の右腕を掴んでお礼を言おうとする。


「…! ぁ…ありが…。」


だが元々弱っている状態にも関わらず、回復魔法による効果で更に体力を使う事となり、最後まで言い切れず気を失ってしまう。


「…ふう。パーフェクトヒールのおかげで完治は出来たけど、余計に無理をさせてしまったな…。」


そう言って、凛は少女の体を抱き抱えて檻に戻ると、火燐が両手を広げながら待っていた。

どうやら少女を寄越せと言いたいらしく、凛は苦笑いを浮かべながら火燐に少女を託す。


一方、アルフォンスは先程のエリアハイヒールを見た経験から、部位欠損を回復させる効果のある『エクストラヒール』を、マーサは何らかの手段で活力を与えるものだとばかり思っていた。

しかし実際は詠唱無しで光系最高難易度であるパーフェクトヒールを行使すると言う、見事なまでに斜め上の結果で終わった為、揃って白目を剥いて立ち尽くす羽目に。(凛達は回復した少女について楽しそうに話し合っているが)




その後、凛がアルフォンス達に話し掛け、我に返った2人は凛に追及したり、深くお辞儀する等して応えた。


「それではマーサさん。先程の8人とこの子を購入致しますので、精算をお願いします。」


「分かりました。ですがその前に…こちらの少女を助けて頂いた事、重ねてお礼を申し上げます。ここまで安らかな寝顔を見るのは初めてですし、ようやく肩の荷が下りた気分です。」


マーサは話しながら再び頭を深く下げ、安堵の表情で凛達の案内し始める。


それから、一行は再び受付に戻った後、マーサは奴隷達の用意をすると告げ、その場を離れた。

凛はその間に資金を調達して来ると言って階段を上がり始めた所、アルフォンスがズボンのポケットから小さな巾着袋を取り出し、ガイウスから金貨5枚を預かっていると告げて凛に差し出す。


「(それをもっと早く言って貰えれば、お店の人から白い目で見られる事はなかったのにな…。)」


凛はそんな事を思いつつ、困った笑みでお礼を述べて巾着袋を受け取る。


それから10分程経ち、(体を拭く等して)身綺麗になった奴隷達と共にマーサが戻って来た。

マーサは全部で金貨2枚だと話し、凛は預かった巾着袋から金貨2枚を取り出して支払いを行う。


凛が今回購入した8人の内、4人はサルーンから少し離れた村で暮らしていた者達で、村が貧しいからと言う理由で間引かれた様だ。

未亡人であるニーナ(24歳)とその娘であるナナ(8歳)はどちらも金髪で黄色い瞳をしており、ニーナが背中までのセミロング、ナナが肩までの長さを三つ編みにしている。

事故で右腕を失ったトーマス(36歳)は焦げ茶色の瞳とショートヘアーの髪型、親を事故で亡くした少女コーラル(14歳)は薄いオレンジ色の瞳とショートボブの髪型の様だ。


いずれも身寄りがいなかったり、生活に支障があるとして優先的に回された(落とされた)


残る4人は先程火燐達が倒した盗賊達で、1人は女性、残りはリヤカーを引いた3人組だった。

女性はジェシカ(28歳)と言い、藍色の瞳と髪色を持ち、背中までの長さを上で纏めている。

火燐から簡単にのされる(一応魔銀級に近い腕前で、盗賊達の中でも上位者)も、諦めずに何度か挑んだ事で気に入られた。


最後はダニー、エディ、カーターの3人組で、いずれも16歳。

盗賊達の中で1番の下っぱらしく、すぐにテンパったりドジを踏んでは先輩から睨まれ、その度に良いリアクションをしたのを雫が気に入った。


ニーナ達はいかにも村人の様な格好を、ジェシカは布面積の少ない衣装で色っぽい、3人組はいかにも小物みたいな見た目をしている。

しかし実は裏で火燐と雫が4人をこの奴隷商に連れて来させるよう手を回し、それは本人達を含め、凛達も知らなかったりする。




「マーサさん、今回はありがとうございました。また機会がありましたら是非お願いします。」


「こちらこそありがとうございます。その時はまたお願い致します。」


凛はマーサと言葉や握手を交わし、美羽達やニーナ達を連れて建物から出る。


そして火燐、雫がいい加減眠くなって来たと話し、狐人族の少女を休ませるのも兼ね、一行は冒険者ギルドへ向かう事に。


到着後、凛は受付カウンターにて、(ゴーガンから許可を貰った事も含め)宿直室の一角を借りたい旨を伝える。

受付の女性は了承の意を伝えたのを合図に凛達がカウンター横を通り、女性が思い出した様にしてワッズが呼んでいると(少し大きめの声で)話す。


これに凛は手を振りながら分かったと告げ、そのまま宿直室に向かう。

室内に入った後、凛は入口横にポータルを設置し、ニーナ達に自分達の後ろに付いて来るよう告げ、凛、美羽、火燐、雫の順でポータルを潜る。(これに勿論ニーナ達は驚くのだが割愛する)


一行はポータルを介し、屋敷の敷地内に到着。

凛を先頭に屋敷へ入り、リビングで寛いでいた皆に挨拶や顛末を簡単に伝え、ニーナ達を3階へ案内する。

そこで好きな部屋を選び、火燐と雫には少女を休ませたら2階に来る様にと話し、階段を降りる。


ニーナ達は軽く動揺しながら動き始めるのだが、ジェシカは違った様だ。

凛が消え、火燐達ももうすぐいなくなると分かった途端、何か良からぬ考えが浮かんだのかギラリと目が光った。


しかし火燐が去り際に自分よりも美羽の方が強いと話し、それに雫が同調。

美羽も否定しない事から、(先程プライドを折られたばかりなのもあって)がっくりと項垂れ、部屋を選びに向かった。


凛はその間、火燐と雫の部屋に手を加え、時間の感じ方を4倍に引き伸ばす作業を行っていた。

そして作業を終えた所で火燐と雫が自分の元へ到着、部屋の説明をすると喜んで部屋に入って行くのだった。

予定になかった筈が、盗賊3人組にジェシカまで仲間に、、、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ