304話
ステラは部下の男性へ伝えた雷輝石とは別に炎輝石、水輝石、風輝石、地輝石、光輝石、闇輝石が存在。
これらは凛がアミュレットを作製の後に用意し、各属性の物質変換スキルや纒雷スキルにアレンジを加えたもの。
それぞれの輝石はソフトボール位の大きさ、且つ色の付いたガラス玉の様な見た目だが使い捨て。
歴とした消耗品だ。
発動させるにはどちらかの手で輝石を持つ必要こそあるが、輝石に収められている魔力量に応じ、属性の魔法や攻撃が行える。
目的を果たす、若しくは空っぽの状態━━━くすんだ色の為分かりやすい━━━で無限収納へ直し次第ナビが使用済みと判断。
無限収納内で分解→新たな輝石として作製し直すまでがセット。
凛は最初に光属性の光輝石を創り、超級魔法エクストラヒールやグランドクロスが使える事を確認。
改良を加え、逐次他の輝石の作製へ取り掛かったとの流れへ。
因みに、輝石を作製するに至るまでの最大要因…それは回復。
万一事故や失敗等で重傷を負い、立ち直る手段として真っ先に光輝石。
正確にはエクストラヒールを試す辺り、凛の慎重さや優しさが前面に出ている。
話は戻り、人気のない路地裏にて。
ステラから了承を得た部下は捕縛したばかりの犯罪者へ対し、初の試みとなる雷輝石の中から雷系初級魔法のスタンボルトを選び、放射。
スタンボルトを当てられた犯罪者は痺れて動けなくなり、体が徐々に前方へ。
それでもお構いなしに試みは続けられ、経験を積ませる目的がてら弱めのスタンボルトを連続使用。
10近く当たった辺りで犯罪者はキャパを超えたのか、目を見開いたまま気絶した。
これで諸々終わり…かと思いきや、当人は何かに目覚めたらしい。
たまに悪さをしては黒装束の者を呼ぶよう叫び、スタンボルトを受けて喜ぶ変態さんへと成り果てたとか何とか。
ついでに、ステラはステラで朝食後の訓練の最後に凛から呼ばれ、輝石の説明&練習。
凛と2人だけだった事もあり、火遁・炎龍弾!や水遁・水龍弾!等とノリノリで叫ぶ彼女。
炎輝石や水輝石から炎や水で構成された蛇状の龍を生成、(他のも含め)撃ち出す度に喜んだのはお約束。
視点は火燐へ。
元極貧層近くを含め、一般層の各地にある犯罪者達が集まる建物へ向かった彼女。
ユリウス主導で何割かの者が移動、目を光らせていた脅威がいなくなる&場所的にゆとりが出来た所為か犯罪が活発化。
上が潰れた今、力を付けていずれは…と画策しているみたいだが、あくまでも犯罪者達の都合。
畢竟、彼女からすれば遠慮がいらなくなった訳で。
物理的説得を行っては建物内部にいた犯罪者達を強制的に外へ叩き出し、建物を燃やす。場合によっては犯罪者ごと。
ステラの部下やディシーバーズも同様に建物を制圧、その度に火燐が赴いては仕掛けを施し、遠隔操作で一斉に火柱を上げた。
今回の殴り込みで分かったのが、加害者…つまり犯罪者側に帝都の貴族が何家か絡んでいた事。
火燐は貴族達とその取り巻きだけに制裁を加え、吐き捨てるは次は屋敷ごと燃やすとの言葉。
彼女に恐れを為した貴族らはその場にへたり込んだり、悲鳴を上げてその場から去る等。
みっともない事この上なかった。
「あーあー、今日は午前中の内に商都へ行く予定だったのに、余計な邪魔の所為でそれどころじゃなくなっちまったじゃねぇか。それに案の定っつーか、貴族だけじゃなく元商業ギルドの奴も何人か裏で協力してたみてーだしぃ?…なんか腹立って来たな、やっぱ燃やすか?」
「火燐様、お願いですからそれだけはお止め下さい!!この通り!」
ポータルで元商業ギルド、現ホズミ商会帝都支部へ移動を済ませた火燐。
エントランスホールで面倒臭そうに独り言ち、必死の形相で土下座をする壮年男性は元商業ギルドマスター。
現在代表補佐の彼は、帝都の何ヵ所かに巨大な火柱が起きていたとの情報から、間違いなく火燐の仕業だと確信。
他の関係者達や客達が唖然とした様子となるも、今後の事で必死な為に敢えて無視。
そんな彼らを、ココでお留守番をしていた雫は澄まし顔で、シャルルとシャルロットはおー!と拍手しながら眺める。
「火燐。(旧ギルドマスターが)困ってるし、その辺で。」
「ちっ。まぁ凛がそう言うなら許してやるか。ただし2度目はねぇ、部下の教育はしっかりと行っとけ。」
「は、はいぃ!分かりましたー!!」
やって来た凛に苦笑いで諭され、舌打ち込みで不機嫌そうながらも矛を収めた火燐に男性は脱兎の如く逃げ出す。
如何に火燐が怖いかが周囲に伝わり、男性もやらかした部下だけでなく、こちらにまで飛び火するとの考えで頭がいっぱい。
とは言え収束を図らねばまずは始まらないとの思いから、帝都中を駆けずり回る羽目に。
その後、逃げたギルドマスターを見て溜め息をついた火燐を、苦笑いの表情のまま凛が慰める。
それから目まぐるしい展開に呆然となったアウラに話し掛け、お昼に近い時間なのも相まって一同はクリアフォレストへ。
「おお、凛殿達か。皆も今から昼食を摂るのだな。」
「お邪魔しているよ。」
「「ごきげんよう。」」
「お疲れ様です。」
凛達が屋敷からVIPホテルに向かうと、入ってすぐのところで既に半分程昼食を済ませたガイウスとゴーガン、アンジェリーナにリーゼロッテと遭遇。
4人はそれぞれ笑みを携えて凛に話し掛け、凛は2人を労いつつ隣へ座り、話をし始めた。
地下越しにではあるが、商国と繋がった影響からか更に人が増えたサルーン。
更に発展を遂げるべく、これまでに凛から得た大量の資金を投じて外部から大工等を呼ぼうとの案が出ている。
それだけ注目を集め、関心が向けられている事に本人よりも息子2人の方が誇らしげなのはご愛嬌。
妻のスザンナにはそこそこのお金を渡すを最後に、王都へ帰って貰った。
良い歳して帰りたくない等とゴネ、まとまったお金が実家には必要なのだろう?と告げるや慌てていなくなったが果たして…。
ともあれ、話はサルーンへ。
クリアフォレストに次ぐ発展振りとあって収入は右肩上がり、相応に人も集まるからか手狭になりつつある。
南には指南役から無料で、それも時間さえ許せば何度でも指導が受けられる運動場が存在。
実力がメキメキ上がると専らの評判で、ここで土台を作り上げ、ダンジョンなり死滅の森を始めとした魔素点で稼ぐが流行りと言うか主流。
人が飽和傾向にもあるので他3方向にも運動場を設ける案が出、採用がてら拡張との運びに。
折角なので運動場毎に鉄〜銅、銀、金、魔銀級で分けようとの意見も出たとか何とか。
そんなこんなで、大陸を4分割した内の大凡南西部分を中心に回る経済。
売上等はエクバハやヴォレスに劣るとは言え、活性度合いならば決して劣らず近日中には…と目される都市サルーン。
商国にはないダンジョンを有し、北には鉱石類が採れる鉱山型魔素点。
近辺の鉄〜銅級、及び死滅の森にいる銀級や金級の強さが中心の魔物を狩り、クリアフォレストや隣都市スクルドへ向かうまでの繋ぎとしても利用。
おかげで日を追う毎に知名度は増し、いずれ世界有数の都市として名を連ねる…かも知れない。
となれば、必然的に訪れる厄介な存在。
先日、ホズミ商会があるからを理由に王都南へ位置する都市バンディールを無理矢理占領。
それを根拠(若しくは建前)に、王国は信用ならないと撤退。
今では王国で唯一ホズミ商会を置く=莫大な利益を生むと捉えられ、すっかり貴族達から目を付けられたガイウス。
(実は騎士爵の)ガイウスを押し退け、自分がより上手くサルーンを治めると豪語する貴族(主に男爵以上の者達)が後を絶たない。
彼らのほとんどは(害意があるとして)凛の領地に入る事なく弾かれた者達。
単純にガイウス達の元へ足を運び、わざわざ八つ当たりや愚痴を溢したりする。
中にはそれで━━━不承不承ながら━━━納得する者もおり、暇な者共だとかそんな時間があるなら自領を発展させればと思い、零されるのも仕方ないと言えよう。
帝国は実力主義。
仮令騎士爵だろうがガイウスの強さ、堂々たる佇まいにただ者ではない…!(ゴクリ)と押し黙る者が大半を占めるのだが、王国は身分の高い者が低い者を使うのが当たり前の風潮。
なので未だに田舎男爵風情が生意気な…程度の考えしかない。
それでいて成り上がりを嫌うものだからやっかみが凄く、ガイウスは直談判だったり小言を聞かされる度に精神を磨り減らすとの日々を送っている。
又、精神を磨り減らすとの意味では2人の妻、王国第1王女アンジェリーナと帝国第1皇女リーゼロッテも同様。
帝国には抑止力、王国には立場で以て分からせるとの意味で常に傍に控え、それが却って貴族らを逆撫で。
(虎の威を借る狐的な意図で)良い身分ですなぁと揶揄され、2人から噛み付かれるか論破でタジタジになるか逃げ出すまでがセットにもなりつつある。
ガイウスはそんな感じで、彼の親友ゴーガンにもとばっちりが。
冒険者ギルドマスターであるゴーガンはダンジョンと連携、そちらの方でもある程度顔が利く。
客観的に見てかなり美味しいポジション故、頼んでもないのに代わってやると上から目線で。
それも日に最低数回は言われているのだそう。
ダメだと分かるや本人、或いは血縁の者が2人の補佐や妻や妾にと提案。
指南役についても、強引なスカウトがなくなる気配は一向に見えないのだとか。
さて、ガイウスらがVIPホテルで食事を摂る理由。
それは朝食の度にガイウスが疲れた顔で愚痴を溢し、申し訳なさそうな顔の後に訓練へ打ち込む事で一時的ではあるがストレスを発散。
訓練が終わってから仕事に行きたくなさそうな様相をここ毎日ずっと見て来たからに他ならない。
VIPホテルは文字通り要人。
つまり国の中枢を担う人物でないととの考えがガイウスとゴーガンにあり、これまでは遠慮するもレオンとゼノンがインターセプト。
2人はガイウス達も重要な存在には違いないからと、半ば強引にVIPホテルを利用するよう下達。
いざ行こうと乗り込む…前に、自分達だけでは間違いなく萎縮するが所以でアンジェリーナらに協力を要請したとの構図だ。
15分後
1行は昼食を摂りつつ談笑し、一先ず落ち着いたところ。
火燐は今も食べ続け、アウラはアウラで得も言われぬ美味さに我を忘れて。
何故か張り合う形で、ミラエラ姉妹も必死の形相でデザートを食べ進めている。
「はぁ…王国の貴族が面倒だとは分かってはいたが、あの馬鹿共。揃いも揃って今のサルーンは凛殿の協力があってこそ成り立っているのだと理解しようともせん。それどころか、ただただ利益を享受したいが為に領主の地位をよこせの一点張り。呆れるを通り越し、最早嘆かわしいすらある。」
「今のサルーンを統治する事が出来れば伯爵は固い。加えて、まだまだ伸び代があるって考えると辺境伯も夢じゃない訳だからね。それでいて治めているのが騎士爵、尚の事強気に出るってものだよ。」
「はぁ…あぁ、クソ。こんな事なら、パトリシア王女殿下に多少なりとも口利きを頼んでおけば良か…ん?そう言えばだが、パトリシア王女殿下はそろそろ王都へ着く頃ではないか?」
「いえ。パトリシア王女殿下達は今朝の段階でまだ7割程でしたし、今のペースだと王都に到着するまでもう2、3日掛かるのではないかと。」
「そうなのか…王都へ向かう時も顔色が優れない様に見えたし、進む速度が遅いのと何か関係があるのだろうか…。」
ガイウスは頬杖を突きながら愚痴を溢す。
そんな彼をゴーガンが苦笑いの表情で宥め、凛の答えに心配そうな表情となって呟く。
《マスター。そのパトリシア王女殿下ですが、どうやら現在フーリガン近くで襲われている模様。》
そんな折、凛の元にナビからその様な情報が届くのだった。




