表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/325

28話

同時刻。

「んがっ」と目覚めた火燐が上体を起こし、大きな欠伸をする。


「ふぁ~あ、良く寝たぜ。雫…はまだ寝てやが…ん?美羽、翡翠、楓がいねぇな。」


火燐は右目を擦りながら辺りを確認。

すやすやと眠る雫は一瞥(いちべつ)するだけに留め、姿が見えない3人を探そうとリビングダイニングルームへ。


「つか、顔がやたらベッタベタすんな…ここにも…って!誰だお前!?」


違和感を覚えた顔を触りつつ、洗面所に行こうとする彼女。

道中、大部屋の入口から向こう(火燐側からすれば外とも)を覗く怪しい人物(?)が立っている事に気付き、驚きのあまり出てしまう叫声(きょうせい)

これにより雫がパチリと目を覚まし、隣の部屋からエルマ達がひょっこり顔を覗かせる。


火燐の声は当然大部屋にも届いており、打ち合わせも兼ねた雑談中である凛達の意識も、自然とそちらへ吸い寄せられる。


「火燐ーどうかした…ん?そこにいるのって、もしかして紅葉?」


「はい…。」


紅葉が本人だと認め、火燐が「はぁぁぁ!?」と更に驚きを露にし、美羽達。

ついでにエルマ達までもが『えーーーっ!?』と驚愕。


「…ん?皆、どうかした?」


ただ寝起きの雫だけは未だ状況を把握しておらず、左手で目をこしこしと(こす)る。


そんな彼女に答えるものは誰もおらず、凛は何とも言えない表情を浮かべつつも、ひとまず無限収納から取り出したのは赤いジャージ。

そのジャージは美羽がいつも訓練の際に用いるもので、シーツの隙間から肌が見える=下は裸だろうから幾分かマシになるだろうと考えての事だ。


「やっぱりか。自分で言っておいてなんだけど、2本の角が生えてるしもしかしてと思っただけで、あまり自信はなかったんだよね…美羽、悪いんだけどさ、取り敢えず紅葉にこれ(ジャージ)を着せて貰っても良い?」


「えっ?あ、うん、そだね。分かった、ちょっと行って来るよー。」


凛の言葉で我に返った美羽は赤いジャージを受け取り、早速紅葉の元へ。




その後、紅葉への対応は美羽に任せ、他の者達はリビングダイニングルームへ。

程なくして美羽とジャージ姿の彼女が合流。


紅葉の髪型は先程述べた通りで、歳の頃は20前後。

日本人と言うか、東洋人に近い顔立ちのせいか女子高校生に見えなくもない。


それでいて凛や美羽に近い━━━火燐達に(まさ)るとも劣らない、非常に優れた美貌の持ち主。

その度合たるや、種族的に容姿の優れた者が多く、その部類に入るエルマやイルマよりも上な程。


当のエルマ達は西洋人の目鼻立ち。

これまで出会ったり見掛けた人達もこちら寄りで、鬼人に逢うのは初めて。


なので、凛に近からずとも遠からず的な外見。

つまり日本人っぽい顔立ち。

それと自らの容姿に自信を持つとかではないが、こうも魅力的な女性が多いのかと内心驚いてもいた。


更に、紅葉の魅力的な部分はもう1つ。


彼女の圧倒的な胸部装甲だ。

先刻はシーツで隠れていたが故に気付かず、翡翠級ではないにせよかなりのものをお持ち。


それを裏付けるかの如く、心()しか元気なさげに見える美羽を見る凛。

彼を除く、全員の視線が1点に集約。


「なんだか少し窮屈な様に感じられます…。」


その本人がソファーに座るや、最初に出たのがそれ。


胸に両手を当てながらの1言に、ほとんどの者が複雑な表情を浮かべる中、


(紅葉ちゃん…翡翠ちゃんへ迫る位には大きかった…。)


(後で絶対にもぐ。)


一部と言うか。

美羽は更に凹み、すっかり頭が冴えた雫は歯をギリギリギリギリ…と擦りながら怨嗟(えんさ)の目線を送る。

向けられた側である紅葉は、何故雫が怖い表情でこちらを見ているのかが分からず、得も知れぬ恐怖に体を震わせていた。


「ナビのログ(記録)を見て分かったんだけど、紅葉は名付けの影響でネームドモンスターと呼ばれる存在になった。そしてゴブリンからホブゴブリン、レッサー(下位の)オーガ、オーガを経て、妖鬼(ようき)に進化したんだって?」


「はい。凛様の仰る通りでございます。」


「やっぱり。さっきの返事の時も思ったけど、話し方に(よど)みがなくなってるね。」


凛の言葉に、皆がハッとした顔になる。


元々ゴブリンだった紅葉が、傾国級の美女へクラスアップ。

そのとんでもないインパクトのせいで、返事だけとは言え喋りが流暢(りゅうちょう)となった事に誰も気付かなかったからだ。


自分達は我を忘れる一方、凛だけが冷静。

謎の影が紅葉だと分かったのも彼だし、今も些細(ささい)な違いを感じ取ったのも彼。

流石だな、と皆の中で評価が上がる。


「…! はい。この姿となれました事、望外の喜びでございます。それと先程、凛様達の訓練のご様子を拝見させて頂きましたが…素晴らしい以外の言葉が見付からず、ただただ驚くばかり。改めて、私が仕えるべき御方は凛様以外いないのだと思い直した次第でございます。」


『………。』


「…前から思っていたんだけどさ。」


「はい、何でしょう?」


「紅葉の言葉遣いはちょーっと(かた)いかな。」


「か、堅い…?」


「そう。僕達はこれから一緒に過ごす訳だし、もっと気楽にしてくれて大丈夫だよ。」


「は、はい。気楽に、ですね。頑張らせ…頑張ります。」


「うん、その意気。いきなりだと難しいだろうから、少しずつ…だよ。」


「はい…!」


「それじゃ、皆集まってる事だし、時間も丁度良いから朝食にしよっか。僕は暁達が起きてるかを見て来る。」


「あっ、ならその間、ボクは朝食の用意をしておくね!」


「そう?ならお願いしようかな。」


美羽、凛の順で椅子を立ち、それぞれ動き出す。




2人以外の面々がそちらに視線を送る中、同じく凛達に視線を向けていた火燐が立ち上がる。


「んじゃあオレは顔でも洗…だった。なぁ翡翠、楓。お前らも大部屋にいたんだろ?皆で訓練とかでもしてたのか?」


キッチンで料理する美羽への配慮から、気持ち小さめな声量での質問。


「模擬戦ね。やったのは凛くんと美羽ちゃんの2人で、あたし達は見てただけ…って言うか。今のあたし達じゃとてもじゃないけど、あんなに高度な訓練は出来そうにないよぉ。もっともっと頑張らないと…。」


「正直、追い付くよりも突き放される一方になるんじゃないかと…。」


「楓ちゃん、それは言わないで…。」


「そんなにかよ…こりゃ、本気も本気で頑張れって事かねぇ…。」


火燐は沈む2人からの答えを受け、自ずと渋面に。

その後も彼女らの説明や確認が行われ、雫、エルマ、イルマの3人は彼女らのやり取りを静かに聞く。




そこへ、暁達を伴った凛が戻って来た。


暁はホブゴブリンから金級のオーガへ進化しており、身長2メートル越え。

見た目は如何にも赤鬼、みたいな(いか)つい風貌だ。


それに対し、休んでいた部屋を出る為の出口は2メートル位の高さしかない。

通り抜けようとして思いっきり額をぶつけ、その音で美羽や火燐達が気付くとの変わった登場方法となってしまったが。


暁の足は片方が浮いたままで止まり、やや窮屈そうに体勢を変えて部屋を出る姿は中々にシュール。

美羽達が微妙な顔になるのも仕方ないと言えよう。


彼の後ろにいる旭と月夜は、双方共銀級のレッサーオーガに進化。

旭は身長180センチ位でオレンジがかった色の体。

月夜は身長170センチ位でやや紫がかった色の体をしており、共に筋肉質な見た目へ。


小夜はホブゴブリンに進化。

大きさ的に通常の個体より小柄な様に感じられ、月夜と同じくやや紫がかった色の体となっている。


「暁達も起きてたみたいだから連れて来たよー。僕も美羽の手伝いに入るから、皆は準備が終わるまでもう少し待ってて。あ、立っている人は適当に座ってねー。」


暁の登場の仕方は、凛の中でなかった事になったらしい。

話しながら美羽と合流を済ませ、次々とテーブルの上に出来上がった朝食や皿等を並べていく。


一方の火燐達は凛のあっけらかんとした態度。

又は切り替えの早さに呆気に取られたものの、返事をしたり、座ったりする。

目的を忘れてしまった火燐は再び座ろうとし、そこを雫に指摘され、急いで洗面所へ。

速攻で準備を整え、戻って来た頃に凛達も座る。




テーブルの上には、透明な容器に入った牛乳。

それとコンソメスープ、コーンスープ、サラダ。

トースト、フレンチトースト、ベーコンエッグ、ヨーグルト、ホットケーキに、昨晩使ったものと同じジャムやソース等が置かれてある。


「一応用意してはみたけど、足らなかったりとか、昨日と同じだから違うのが欲しいとかあったら言ってね。それでは…頂きます。」


『頂きます。』


「い、頂きます?」


『(…イ、イタダキマス。)』


こうして朝食が始まるのだが、凛は朝食の一部に昨晩食べたものが入っているが元でクレームが来ると思っていた。


だが実際は真逆で、火燐達がホットケーキやフレンチトーストを中心に昨日とは違う組み合わせで楽しむ様子に安堵。


この様な朝食は初めてな紅葉達は戸惑ったりもしつつ、彼女らだけでなく暁達男性陣にも甘いものが好評だと判明。

(予備で取っておくつもりだった)追加の料理を凛が出し、皆のテンションが上がる様を目の当たりにした美羽がふふっと笑う。


ついでに、凛と美羽の2人だけは野菜多め(美羽のは長ねぎ入り)のグリーンスムージーを飲み物枠でチョイス。

皆の興味は引いたものの、その緑色でドロッとしたどう見ても美味しくなさそうなビジュアルの液体。

無理強いも何もしていないのに、謎の物体Xとも取れる飲み物を誰が飲むかで何故か軽く揉めた。


結果的に選ばれたのは翡翠。

凛のではなく(怖いもの見たさ込みで)美羽のスムージーを借り、試しに1口飲んでみる。

しかし、野菜を多く入れているからか甘みよりも青臭さ等の負の部分が強調され、そこに長ネギの風味もプラス。

かなり微妙な反応を示された。


しかし凛がバナナや林檎を加えたものを新たに作り直した事で一転。

かなり飲みやすいものへと変化した。

渡された翡翠は目を瞑りながら再度口に含み、先程とはまるで別物に変わったスムージーの美味さに目を見開き、一気に容器が空に。


それに当てられたのが火燐達だ。

先程のマイナス感情は(はる)彼方(かなた)へと消し飛び、翡翠と言う前列が発生したが為に自分も飲みたい飲みたいと言い出し、凛に白羽の矢が。


追加で人数分作らされる主を、美羽は哀れんだ表情で見ていた。




朝食が済み、凛は紅葉が赤いジャージのまま。

暁達は起こした時に急遽着て貰ったローブのままでは悪いと思い、火燐達の分も含めた皆の服を用意する事に。


現在の紅葉の姿を考慮して話し合った結果、暁達も紅葉の後を追う形で進化する可能性が高い。

その場合、日本人に近い顔立ちである彼女らは、洋服よりも和服が似合うのではないかとの意見に。


その場で用意した簡単な黒い和服を紅葉に着て貰い、試しにと2本の鉄扇を帯に差す。

これが非常に様になり、紅葉は皆から絶賛され、恥ずかしそうにする。


暁達には、肌の色と同じ系統の和服を着て貰った。

皆から中々似合うと褒められ、満更でもない様子を見せる彼ら。

1行は大部屋へ向かい、様々な武器を目にする。


凛によって床へ並べられたそれらは、直剣、短剣、大剣、斧、大斧、短槍、槍、刀、大太刀、小太刀、薙刀(なぎなた)、棍棒の12種類。

武器を指し示しつつ、凛はこの中に好みのものがあるかを尋ねる。


その結果、暁は大太刀、旭は小太刀を2本、月夜は薙刀と答え、各自に渡す。

小夜も月夜と同じく薙刀が良いと言われたのだが、彼女は少し小柄だ。

バランスが悪いとの意見が上がり、短槍2本で我慢して貰った。


それと、火燐達4人は凛が余裕が出来るまでは簡単な服で良いとなった。

なので雫、翡翠、楓は髪色よりも少し明るめのワンピース。

火燐はワインレッドのシャツに黒いズボンとなった。




準備を終えた凛達はポータルを使い、再びゴブリンの集落へ。


そこでナビに近くで誰か襲われていないかを探るよう頼み、特に被害らしき情報はないとの報告に、凛が安堵の表情を浮かべる。


「誰も近くで襲われていないのが分かったし、今日は森の中へ入ってみようか。暁も進化したら紅葉みたいな見た目になるかも知れないしね…そう言えば、改めて思ったんだけど、紅葉は姫って呼ばれてただけあって、かなり綺麗になったよね。」


凛が述べ、激しく同意とばかりに全員がこくこくと頷く。


「そんな…恥ずかしいです…。」


「それに…強さも美羽と同じ位になってる。」


「へーすげー。って事は、オレ達よりも紅葉の方が上じゃん。」


「で、ですが、私は今まで戦った経験がございません…と言うよりも動き方が分からないと申しますか…。」


「あー、そういやそうだった。わりぃ、今のは忘れてくれ。」


火燐は自分の発言で紅葉に気を遣わせたと思ったのだろう。

背を向け、手をひらひらと動かしながら前を歩く。




((オーガ)視点から見て)紅葉は身長が160センチ位にまで縮んでしまったものの、内包している魔素量が凄まじい。

強さは美羽に近い魔銀級の妖鬼となり、亜人と呼ばれる種族の1つ鬼人族へと進化。


それ以外にも、旭達が進化したレッサーオーガは銀級。

暁のオーガは金級で、いずれもまだ先へ進化出来る可能性がある。


「(ゴブリンだった紅葉が今は魔銀級の強さか。そりゃ魔素が減る訳だよね。)…そうそう。今日は仮の拠点を建てようと思うんだ。」


「拠点?あー…そーいや昨日、何か言ってたっけな。」


凛の言葉を受け、気恥ずかしさから前を歩いていた火燐が戻って来る。


「うん。けど集落があったここだと紅葉達に悪いでしょ?だからゴブリンさん達を供養した後、別な場所に建てようかなって。」


「凛様、ありがとうございます。」


凛の心配りに紅葉がお辞儀し、彼女に続く形で暁達も頭を下げる。


「僕にはこれ位しか出来ないけどね。」


「いえ、そのお気持ちだけで皆も救われるかと…。」


「ありがとう。皆は拠点の場所をどこにするとか、集落の建物をどうしたいって要望や意見はある?」


「拠点の場所ねぇ…ん?あそこはどうだ?エルマ達がいた木があったとこ。アレなら(サルーン)にも近いし、(木の)高さも中々。離れた場所でも十分に目立つだろ。それと建物だが、オレは神界みたいな感じで良いんじゃねえかと思う。」


火燐の提案に、全員から同意を得られた凛が頷きで返す。


「分かった。特に反対意見もないみたいだし、それでいこうか。それじゃ皆、手分けしてゴブリンさん達の供養を始めよう。」


『おー!』


全員が一斉に動き、集落内。

及び近隣にまで散らばり、亡くなった人達の回収を行う。

作業自体はナビの協力もあって1時間程で終え、亡骸を凛が土魔法で開けた穴へと入れる。


そのまま土を被せ、土葬と言う形で埋葬したかったのだが、ここは地球ではなく異世界。

アンデッド(生ける屍)として甦る可能性があるとの懸念から、非常に申し訳ないが炎魔法で灰にした後に埋めるとなった。




彼らの供養を済ませた後。

凛は最終チェックと称し、無事な建物を一通り見て回る。


「ここに設置しておいたポータルは消した、と。それじゃ最後に、誰か来ても良いよう、幾つか非常食を置いておこうかな…よし、お邪魔しました。」


見回りを終えた凛は、集落の入口付近にある建物。

その中へ入ってすぐのところに、カ○リー○イト等の非常食やペットボトルの水を数点置く。


最後に再度両手を合わせ、亡くなったゴブリン達の冥福を祈り、皆と共に集落を去った。


それから1週間後


「これはぁ…?」


凛が用意した非常食。

それらを左右の手で持ち、不思議がる者が訪れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ