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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
王国の街サルーンとの交流

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27話

凛達が歩く様をじっと(のぞ)き見る、2つの影。


「…行っちゃった。」


「うん。皆、楽しそうに作業してたよね。」


「そうだねぇ…。」


「「良いなぁ…。」」


エルマとイルマだ。


彼女達はキッチンの賑やかさで目を覚ましてはいたものの、楽しそうな雰囲気を壊したら申し訳ないとの懸念から参加を辞退。

しかし諦め切れないとの思いから今までずっと眺めており、後で自分達もメンバーに加えて貰うと決意。


その為の作戦会議をしに、2人はベッドへ戻る。




「…?」


同時刻、別な部屋で1人の女性が目を覚ました。


その女性は艶のある黒髪を腰まで真っ直ぐ伸ばした…所謂(いわゆる)姫カットと呼ばれる髪型。

若干下を向いているせいか表情は分からなかったが、綺麗な鼻筋で唇は(うる)み、黒髪から2本の角が覗いていた。


(私は…。)


寝起きで頭が回らないのだろう。

上半身を起こした女性は角と()の間に右手を当て、回復するのを待つ。

そして少しばかり良くなった頃、彼女の耳に何か硬い物同士がぶつかる音が届けられ、聞こえた方角。

入口の方に視線を向ける。


気付けばベッドから降り、これまた無意識の内に掴んだベッドのシーツを体に纏わせ、引き()りながらゆっくりと歩く。




その数分前、場所は大部屋。

翡翠と楓は入口横の壁、凛と美羽は中心付近にそれぞれが立っていた。


凛と美羽は向かい合い、凛は練習用の鞘付き木刀を。

美羽は同じく練習目的で用意した2本の木剣を各自所持するとの構図だ。


「まずは、名付けの後遺症がないかの確認から始めるね。」


「うん分かった!マスター、いつでもどーぞっ♪」


美羽の言葉を受けた凛が踏み出し、武器による打ち合いが開始。

昨日の名付けの影響も考え、初めは手加減して…との意味合いらしい。


彼の攻撃を受ける美羽は、普段よりも幾分か弱く感じ、不思議そうにする。

しかし時間が経つ毎に少しずつ力と速度が上がっていくのが分かり、自分もそれに応えなければとの考えへ。


彼女も徐々に段階(ギア)を上げ、2人の攻防は激しさを増していく。




5分後


カッ、カカン


凛は美羽が繰り出した連続攻撃を鞘と木剣で防いだ後、距離を取る目的でバックステップ。


「うん。今のところ、特に問題はないみたいだ…美羽、何か手数の多そうな魔法を放ってみてくれる?」


「うん分かった。今のボクで使える魔法と言ったらあれだよね…行くよ!エレメンタルアロー!」


美羽は笑顔で頷き、かと思えば真面目な表情で早口()で3()秒程()詠唱()を行った後、エレメンタルアローを発動。


すると、彼女の頭上の位置に、炎・氷・風・土の属性を帯びた球状の塊が出現。

1つ1つがバスケットボール位の大きさがあり、そしてそれぞれの球から、(かつ)て雫が放ったアイスニードル。

それと同じ大きさの4種類の属性を帯びた矢が次々と撃ち出され、結構な速度で(もっ)て凛へ迫る。




エレメンタルアローは複合系上級魔法の1つ。

炎・水・風・土属性全てに、しかも上級以上の適正がある者でしか使えないとの制限付きだ。


今回、美羽は自分の頭上に纏めて呼び出す形でエレメンタルアローを行使。

しかし本来、(凛みたく空間認識能力に長けた人物とは別に)見えている範囲であれば、配置場所を自由に選べるのに加え、各属性の矢を任意のタイミングで5発ずつ発射する事も可能。


なので確実に当てようと時間を掛けても良し。

今みたく一気に攻め立てるのもまた良しの使い勝手に優れた魔法でもある。




美羽が発動させたエレメンタルアローにより、マシンガンみたく放たれる4つの属性を帯びた矢の様な弾。


「はぁっ!よっ、よっ、てぇぇいっ!!」


凛は木刀と鞘に魔力を纏わせ、打ち消す。

或いは避け、弾き返して別な矢に当てる等する。


少しして、風の矢を消滅させたのを合図に風の球が消失。

他の炎・氷・土属性の球は既になくなっており、木刀を鞘に収めた凛がビットを1基、その場に()び出す。


「ありがとう。それじゃ最後に、以前と変わらずにビットが使えるかだね。最初はこの1基だけで、特に問題なさそうなら少しずつ増やしてみるよ。」


「はーい!」


美羽の快活な返事を受け、凛はビットを操作。

少し離れた位置にいる美羽へ対し、威力を弱めた魔力弾を撃ち出してみる。


美羽は真横に回避。

凛は彼女の跳んだ方向へビットを動かし、今度は2連続で魔力弾を発射。

美羽が着地と同時に振るわれた左右の木剣でカンカンッと弾かれ、明後日の方向へと飛ぶ。


一連の流れを確認した凛は美羽の正面だけでなく側面、背面から魔力弾を撃つ事計10発。

その全てを美羽は(かわ)すか防ぐかして(しの)ぎ、操作するビットを1基から2基に増やす。




更に5分が経過。


凛は4基のビットを駆使し、様々な角度から魔力弾を射出。

それらを美羽は2本の木剣で弾き、魔力を纏わせて消失。

時にステップで避け、アクロバティックな動きで(かわ)したりもしていた。


ふむ、と凛が頷くを合図に攻撃が止まり、自身の近くへビットを移動。

満足したと捉えた美羽は軽い(またた)きの後、トトト…と彼の下へ向かう。


「うん、ビットの練習はこんな感じかな。協力ありがとう。」


「どういたしまして♪ボクも、マスターみたいにビットを上手く使いたいんだけどなー。でも攻撃の度に動かしては狙いを定めるのもだし、4点配置からの防御!…的な感じで切り替えるのが難しい…。」


凛が操作するビットは攻防一体を兼ねたもの。

それぞれが独立しての単発攻撃を常とし、数基を連結させ、ガトリングガンみたいな動きでの連射だったり、エネルギーを収束させてのチャージショットも可能。


ただ、上記の方法は普通の者が相手なら通用するが、凛とまともに付き合える場合はそれに含まれない。

つまり美羽クラスになると簡単に見切られ、弾速も地球で言う銃弾の3割位なのでやはり躱されてしまい、すぐに距離を詰められる始末。


これは美羽に散々見せびらかした凛が悪いのだが、ともあれ今回は通常の運用として。

翡翠や楓へは今のが基本だと知って貰うのも兼ね、1基ずつ動かすとの運びに。


又、美羽が語った4点防御。

所謂Iフィー◯ドバリアだけでなく、単基毎に球状。

或いはビーム◯ールドみたく範囲を絞る事で、より強固にした防御膜が展開出来るとの機能がビットには備わっている。


「ならさ、まだ試作段階ではあるんだけど…この板状のビットを使ってみる?美羽も動かすだけなら出来てたしさ。」


凛は話しながらビットを消し、代わりに無限収納から1枚の鉄板の様なものを取り出す。


その板は厚さが3センチ、高さ50センチ程で縦に長い正二等辺三角形の形をしている。

色は鈍色で頂角に底角、いずれの部分も刃物みたく鋭いのが見て取れた。


「これも一応ビットでさ、魔力操作の応用で…こうやって相手を斬ったり角の部分で突いたりするだけじゃなく、魔力を纏わせる事も出来る。こっちは魔力操作+身体強化の延長線って感じかな?」


凛は空中に浮いた板状のビットで弧を描き、頂角部分を前に突く動きを見せ、白いオーラを纏わせる。


「そしてこれは6枚1組になるよう設定してて…こう重ねたら即席の盾にもなるんだ。」


続けて、無限収納から同じ物を5枚取り出し、頭上で縦・横・斜めにぐるぐると回す、または近くをヒュンヒュンと飛ばす動作をする。

最後、自身の前に鉄板6枚全てを重ね、高さ1メートル位、縦長の六角形を形成。


その光景に3人は「おぉーー!」と叫ぶのだが、微妙に意味合いが異なり、美羽は嬉しさや感激。

翡翠と楓は単純な…と言うか、どれだけ多彩なのかとの驚きから来ている。




その後、凛は六角形を崩し、6枚の内の5枚を無限収納へ仕舞い、残った1枚を自身のすぐ横の位置に固定。


「圧縮したり改造した金属が中心だから強度は十分。単体でも盾代わりに出来るから、攻撃と防御を同時に行う手段としても使えるよ。」


右手の甲をコツコツと平面部分に当て、硬さと目的をアピール。


「うわー凄ーーい!ね、ね、マスター。これ…本当にボクが使って良いの?」


目をキラキラさせた美羽が問う。


地球で知識や技術、思考(イメージ)(つちか)った凛とは違い、彼女は生まれてまだ1月。

如何に一般人から遠く掛け離れたスペックを誇る彼女でも、主と同じステージへ立つには足りないものがあまりに多過ぎる。


それを見兼ねた凛からの救済。

期待以上に嬉しさが湧き上がり、彼の想いに応えたいとの願望も瞳に込められている。


「うん。むしろ美羽用にと思って用意したものなんだ。」


「マスター…!」


「今は最終調整をしている段階でさ、完成までもうちょっとだけ掛かると思う。だから期待させて申し訳ないんだけど、出来るまで待ってて貰って良い?」


「もっちろん!楽しみだなぁ♪」


「分かった。それじゃ…まだ時間はあるみたいだし、もう少しだけ手合わせしよっか。」


「はーい♪」


凛は時計を見た後に無限収納から木刀を取り出し、美羽もそれに倣う。


「凛くん達ってさ、もしかして普段からあんな感じなのかな…。」


再び模擬戦が始まり、先程より幾分か上がったテンションやボルテージに比例し、より戦闘が激しいものになった中での翡翠の呟き。

彼我(ひが)の実力差は明白で、目標にするには少々難易度が高過ぎない?とでも思ったかも知れない。


「分かりません…けどお2人共笑ってますし、本気を出したら更に激しくなるのかも…。」


「うへぇ…こりゃ、あたし達も置いていかれないよう頑張らないとだねぇ…。」


「はい…。」


今も尚笑顔で。

それでいて地上だったら相当な被害になるであろう技や魔法を連発する2人に、翡翠と楓の2人はげんなりとした表情を浮かべる。




そんな翡翠達以外にも、凛達の様子を見ている者がもう1人。


「…凄い、とても凄いです。凛様、美羽様。お2方共、素晴らしくお強いのですね。これでしたら…。」


先程のシーツを纏った女性だ。

リビングダイニングルーム側から顔を覗かせ、大部屋の中を観察。

彼女は表情の変化こそ少ないものの、その胸中は歓喜で満たされ、今後について想いを()せるのだった。

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