クリスマス特別番外編5th 286.5話
メリークリスマス♪
これはゾンドルキア公爵家の処遇が決まった後のお話。
「凛、それに皆。色々とありがとうな。助かったぜ。」
「これから宜しく頼む。」
「よろしくー!」
「宜しくお願いしますね。」
「宜しくねぇん。」
凛の屋敷、そのダイニングにて。
アレックス、ユリウス、ナル、黄緑色の髪をサイドポニーにした少女ティナ、マリアによる挨拶を合図に、彼らの歓迎会はスタートされた。
時刻は夕方。
本日より正式に仲間、或いは世話になるとの意志を元に開かれた催しとなる。
アレックスは単身…とはならず、リベリオン含め彼を慕う人達と。
貧民層生まれのユリウスは、同区画の中でも特に親しかったり纏めのポジションにいる者達と共に。
可憐な風貌をしたティナ、実はこう見えてマリアの1人娘の17歳。
全然似ても似つかない2人だが、紛れもなく母娘。
亡き夫(父)の遺伝子が、余程頑張ってくれたのだろう。
その彼は生前冒険者で、マリアによると王国黒鉄級冒険者のライアンに似ているとか。
生来体の弱いティナはウェルズの策略で人質に取られるも、姿を隠したファイによって無事救出。
現在はすぐにでも走り回れる程にまで快復し、その様な行いをする帝国は信用ならないを理由に2人は亡命。
これまで付き合いのあった人達には申し訳ないが、どちらも帝都に戻るつもりはないとの事。
そのついでに。
マリアの妹分のキャサリン━━━愛称はキャス。元はドミニクと言う男性で、マリアそっくりな容貌━━━を含めた者達も一緒に避難。
姉妹揃って体をクネクネと動かし、無事を喜んだとの報告が。
歓迎会開始早々、ナルは2リットルサイズのコーラを片手で煽り、もう片方の手で超特大サイズのポテトチップス(うすしお味)の袋から中身を掴み、豪快に食べるシーンを披露。
「うまっしゃああああ!」と貪るとの光景に、勧めた火燐が対抗。
朔夜や藍火ら大喰いメンバーも参戦し、周りが囃し立てると言った盛り上がりを見せた。
アレックスも勿論爆笑。
ナル達を指差し、反対の手でお腹を押さえる彼の元へ近付く、赤髪、緑髪、天色髪をした3人の女性。
彼女らは元インフェルノドラゴン、アークグリフォン、タートルドラゴンで、ゾンドルキア公爵が秘密裏に行っていた実験の生き残りでもある。
「…ん?ああ、お前達か。凛、こいつらの扱いはどうす(る)んだ?」
「うん?んー、僕の一存で決めるのもなぁ…君達はどうしたい?」
と、凛が3人に訊いたところ、返って来たのはアレックスに仕えたいとの内容だった。
本人は「え?俺?」と目を丸くし、向けられる3人の真っ直ぐな視線に戸惑いを隠せないでいる。
「いや、別に俺じゃなくても良いだろう。強い奴は他にゴロゴロいるんだし。」
「ゾンダさんへ対して怒り、3人を心配した事があったでしょ?多分それじゃないかなぁ。」
「えー、確かに腹は立ったし心配もしたが…マジか…。」
アレックス的に、ゾンダの所業が納得いかず、精神的に参っているであろうから気遣った。
ただそれだけ。
なのに寄せられる、3人からの期待や眼差し。
まさか良かれと思ったのが裏目に出るとは…と、予想外の結末にガックリ項垂れる。
「それじゃアレク、あの子達の名前は君が考えてね。」
そんなアレックスの肩にポンッと置かれた、凛の右手。
これから行われる名付けに備え、魔力の供給源になるつもりの様だ。
「は?名前?」
「そう、名前。」
「嘘だろ?」
「嘘じゃないよ。」
「俺が、名前を、考える…?」
「うん。あの子達を呼ぶのに名前がないと不便でしょ?それに、僕じゃなくアレクが考えた名前の方が喜ばれるんじゃないかなって。」
「名前位で大袈裟な…んなもん、ポチ、タマ、コロ辺りで十分だろ?」
当のアレックスは目を丸くしながらも適当感満載。
尚、前世でポチと呼ばれていたアリスが物凄い顔で凝縮しているがまるで気付いてなかったり。
「なんだか犬や猫みたいな…悪くはないかもだけど…。」
「いや、ダメでしょ。」
「でもよぉ…。」
「とにかくダメ!ぜーーーーったいダメです!!」
「そうだよ!この子達は女の子なんだよ?折角なら可愛い名前を付けてあげなきゃ!」
「えぇぇ…?」
アリ?ナシ?
若干の混乱もあってか苦笑いを浮かべる凛に、ステラと美羽が猛反発。
翡翠に楓、エルマやイルマ等の仲良しメンバーも同意とばかりに何度も頷き、火燐は「そうかぁ?」と訝しげ。
雫のみ、じー…っとタートルドラゴンだった少女をひたすらロックオンしているが。
「えー…。」
タジタジから渋い表情へ移行したのはアレックスだけの模様。
それから5分程話し合い、インフェルノドラゴンはフラム。
アークグリフォンはラファルからルを取ってラファ、タートルドラゴンはロゼと命名。
フラム達は名付けによる休息に入り、ダイニング横のスペースで休ませるとの運びに。
「さて…んじゃ創造神様について凛に語って貰おうかな。」
「さてでもんじゃでもないよ。と言うか唐突だね?」
「だってよぉー、ここにいるほとんどの奴らは目にしたんだろ?でも俺はザックリとしか知らねぇ。なら余計知りたいと思うじゃん?光輝や勉もそうだろ?」
「僕に振らないで下さいよ…。」
「左様、畏れ多いと言いますか…。」
強気なアレックスに対し、どこか及び腰の光輝と勉。
創造神こと里香の家族。
長女理彩に次女莉緒とお付き合いをしている彼らにとって、彼女の存在はラスボス裏ボスを軽く凌駕した存在。
相対すら烏滸がましく、指先1つどころか言葉を発しただけで消されるのでは…?と半端ないプレッシャーが圧し掛かり、今にも押し潰されそうな雰囲気を漂わせている。
「光輝君、急に顔色悪くなったけど大丈夫?」
「ツトムンもだよー。どしたん?」
青ざめ、理彩と莉緒の心配そうな声に「イエ、ダイジョウブデス」と返すのがせいぜいだった。
「いや、ビビり過ぎだろ。」
「そうだよ。ちょっと(?)変わってるだけで、優しいお姉ちゃんだよ?」
「ちょっとどころじゃないけどね。」
「うん、あたしから見てもかなり異常だと思う。」
アレックスが呆れ、凛がフォローするも姉2人は即否定。
真面での切り返しに凛だけが「そうかなー?」と不思議がる。
「ねぇお姉、アレなんて良いんじゃない?」
「アレじゃ分かんないわよ。」
「凛の進路が決まったお祝い。家族皆でラスベガスに行った話だよ。」
「あの子がいなくなる前に過ごした最後のクリスマスか…。」
「そそ。」
「因みに、家族全員で行ったのはイギリス。ラスベガスはその前の年ね。凛が年齢制限で引っ掛かるからって理由で諦めてそっちになったじゃない。まぁ、私も仕事で(ラスベガスには)参加出来なかったんだけど。」
「あっ。」
とあるクリスマス。
理彩、莉緒、里香、凛の4姉弟。
それと父蘭、母の祭(まつる、祭と書いてまつると読む)の姿がイギリス首都ロンドンに。
彼らはカジノの前に立ち、これからこの建物の中に入るのか…とどこか感慨深げだ。
「ほら、いつまでも突っ立ってないで中へ入りましょ。外は寒いわ。」
ただし里香を除いて。
彼女は神の力をチョチョイと使い、色々とすっ飛ばして最上級の扱いをゲット。
言葉を掛けて来る複数の黒服の外国人男性を適当にあしらい、煌びやかな服を揺らしながらコツコツと足音を鳴らす。
それに凛とした態度の理彩、にぱーっと笑う莉緒、「よ…良し」と気合いを入れる凛が続き、「な、何だあのゴージャスな姉妹…姉妹(?)は!?」みたいな感じで注目を掻っ攫ったりなかったり。
「カジノか…里香のおかげでイギリスに訪れる機会は何度かあったが、流石にココは初めてだな。」
「しかも家族皆で、ね。こんな日が来るとは思わなかったわ。」
「全くだ。」
メインホールへと移り、場内を見渡した後にフフッと笑い合う蘭と祭。
端正な顔立ちの蘭に、茶髪をシニョンに纏め、おっとりとした見た目の祭。
2人は美男美女だが、美人の度合いは子供達の方が上。
言い方は悪いが、鳶が鷹を生んだに近い。
妬みの類いは一切なく、むしろ誇りに思い、3女のおかげで自由気ままな生活が送れるとあって彼女には感謝しかない。(蘭名義で株等で荒稼ぎし、お馬さんとも仲良くなった気もしたが記憶の彼方へ)
さて、八月朔日家4姉弟の名前の最初が『り』で始まる所以。
それは母、祭に起因する。
先程も軽く述べた通り、彼女の名前の最後は『る』。
『り』ではなく『る』で終わる。
つるちゃん、るーちゃんの愛称で呼ばれる知人友人はまだマシ。
「まつる?変なのー」とか「誰かに祀って欲しいのかよ」、「ダッセー名前」なんてゲラゲラ笑われる事もままある彼女。
拳で黙らせて黙らせて黙らせて、黙らせ続けるあまり族を率いた経験が…位には嫌で嫌で仕方なかったとの過去が。
ともあれ、大人になったのを機にスパッと引退。
若気の至りを知らされていない蘭も妻の不憫さを理解し、結果子供達全員が『り』から始まったとの流れに。
唯一想定外な点を述べるとするならば、最も早く準備したはずの名前を用いられたのが4番目だった点。
挙げ句、姉弟の中で1番可愛かったのは皮肉でしかない。
「…で、コレはどう言う状況なのかしら?里香ちゃん。」
話は戻り、笑顔で尋ねる祭。
対する里香。
正座し、「あ、いえ、そのね?」と言い淀みながらダラダラ冷や汗を掻くしか出来ないでいる。
柔らかい表情、穏やかな口調。
にも関わらず、祭から放たれる得も言われぬ圧力がそこにはあった。
少し離れた位置にいる支配人と思しき人物もすっかり気圧され、何か言いたそうにするだけで口を開けずにいる。
あれから1時間と少しが経過し、里香は順調にメダルを稼いだ。
否、順調過ぎたと言っても良い。
凛が見ているからと無駄に張り切り、勝ちに勝ちを重ねたせいで運営側に目を付けられてしまったのだから。
彼女の後ろには箱に収められたメダルが。
両サイドには黒いスーツに身を包んだ屈強な男達が堆く積まれ、付近には恐縮しきった(或いは怯えた)様子の支配人らしき姿。
ものの見事に注目の的とならざるを得ない状況になっている。
里香曰く、イカサマを疑われ━━━未来視で先の展開を読んだので強ち間違いでもない━━━、いくら弁解しても聞き入れては貰えなかったらしい。
なら現時点で獲得したメダルを交換との案も却下され、持ち帰りも当然不可。
むしろこちらの方に非がある様な物言いに呆れ、溜め息と共に「全てに於いて3流ね、ガッカリだわ」と零す。(英語で)
カジノ側がこれにカチンとなり、まずは彼女を捕まえてから…とばかりに1人の男性が手を伸ばし、掴んでからの一本背負い。
そこから千切っては投げ、千切っては投げを繰り返し、段々と騒ぎが大きくなって今に至るとの事。
「いや…良い大人でしょ貴方?何やってるのよ。」
「カッとなってやりました。反省も後悔も━━━」
「里香ちゃん?」
「誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
如何に神と言えど母には勝てず、恥も外聞も捨てて土下座する里香。
いくらパッションが溢れたとは言え、やり過ぎは良くない。
10分近く説教された後に祭は支配人に水を向け、そっと耳打ち。
どうやら英語が話せたらしく、ただでさえ小刻みに体を動かしていた支配人を更に震わせ、青どころか土気色に。
そこからは普通にカジノをプレイ。
満足した1行は予約したホテルに向かったのだそう。
「いや怖っ、普通に怖いわ。絶対ヤバい人だろ、凛の母ちゃん。」
話を聞き終えたアレックスの反応。
それはドン引きからのダメ出しだった。
「アレックス君。世の中にはね、知らなくても良い事があるの。」
「普段は優しいんだけどね〜。」
「いつもじゃないの?」
「それは凛が可愛いからよ。知らないのは貴方と父さんだけ。莉緒や里香程じゃないけど、怖いと思う事は私でもたまにあったわ。」
「あー、何となく分かるかも?」
「言ったなー!」
「ちょ、ねぇねぇ!」
おちょくられたと思ったのか、ガバリと凛へ抱き着く莉緒。
悪い事言うのはこの口かー?うりうり、と片手で頬を引っ張り、残された手で軽くヘッドロック。
微笑ましい光景。
姉弟仲の良さに釣られ、全員がほっこりした瞬間だった。
尚、この日を境に皆がカジノへ興味を示したが理由でカジノを。
ユリウスがクリスマス(特にプレゼント)に興味を示し、そこからお菓子へ→チビ共に思いっ切り食べさせたい→なら駄菓子となり、駄菓子屋が追加されるのだった。
旧ゆるじあ含め、合算約800話超えにしてようやく出た八月朔日家の父と母w
又、ティナの髪色&髪型が旧ゆるじあとは別。
285話でちょこっとだけ触れた、ラニ達とは別でアレックスのお供がフラム達になります。(ロゼは盾の◯者のフィト◯アっぽい感じ)
後かなりどうでも良い事ですが、里香の千切っては投げの部分が千切って鼻毛に変換されるものだからつい吹き出してしまったのは内緒w




