286話
明日も投稿します!
午前11時前 凛の屋敷にて
凛を中心としたメンバーで、ゼノン含むロイヤルファミリーをクリアフォレスト内へ案内。
小休憩がてらダイニングでゆっくりしていたところ、訓練を終えたアレックス達が帰還。
凛、アレックス、ゼノン、オリビアの4人による軽い雑談が行われ、30秒が経った頃。
そちらへ近付く1人の少女━━━ナルの姿が。
人一倍張り切り、相応に頑張った影響なのだろう。
彼女の足取りは覚束なく、どこか痩せこけてすらいる。
何も語らず、皆の視線が自分に向かったと分かるやにへらと笑い、サムズアップ。
それで満足したらしく、引き続きふらふらな様子で離れ、その場にいる全員を困惑の色に染め上げた。
ナルがいなくなったを合図に、コホンとアレックスが咳払い。
「親父。レオン様からも聞いただろうが、獣国は今目覚ましい発展を遂げている。特に王都と(漁業都市)アゼルがな。商国はココやサルーンより少し劣る程度、聖国も近々着手する予定ではある。」
「…何が言いたい。」
「いくら了承したからって、いきなりVIPホテルは流石にやり過ぎだろうって話だ。」
厳密には貧民層を押し退け、そこを基点に帝都を再開発するとの案だ。
貧しくも善い性格の人達をユリウスが逃がしてくれたおかげで場所的にゆとりが生まれ、もし足りないとなっても支度金と称し、幾らかの資金をそこに住まう者へ下賜するとの方向で話が進んでいるのだとか。
「VIPホテルや宿が良いのは勿論分かってるぞ?俺も経験したからな。だが、見栄っ張りや身の丈以上の贅沢を欲しがる貴族が多い帝都だ。無理に無理を重ね、財政難に陥る奴が確実に出る。最悪な事に、領民まで巻き込んで。だからこそ段階を踏むべきだ。逃げる時間を稼ぐ意味を含めてな。自滅する分には全然構わねえが、それ以上にランドルフから不興を買うのは不味い。」
「…ジラルド候爵か。」
「ああ。帝国で誰よりも早く、そして深い関係になったのに我慢を強いられ続けたんだ。足踏み状態のままクリアフォレストとサルーンを眺めるしか出来ず、やっと制限が解除されたと思ったら先に帝都が栄えましたってなってみろ。下手すりゃ離反だ。
あそこの兵達は大分鍛えられたからなぁ…恐らく5人もいりゃ、団長・副団長以外の円卓の騎士の誰かと渡り合える。10だと団長・副団長。20なら親父ですらも、って感じじゃね?それ位のレベルの猛者に、あいつらは達しちまった訳だ。要は、ランドルフを敵に回すのは得策じゃない、バランスと采配を大事にってこった。」
「そう、か…凛様、因みにだがダグラスを治める気は?」
アレックスからの苦言を踏まえ、考える素振りを見せたゼノンが凛に水を向けるも返って来たのは「んー、ないですね」との否定的な意見。
「帝都と、ランドルフさんの治めるスクルド。どちらを選ぶかと問われましたら、スクルドになります。理由はアレックスが述べてくれた通りで、土台自体もあちらが上な点でしょうか。完成がその分だけ早まりますし、作業もスムーズなので。」
表面でこそ笑顔を取り繕ってはいるものの、ランドルフらスクルドを管理する側は不満を募らせる一方。
ただ、そのおかげか━━━或いは悔しさをバネに━━━やる気が増し、治安を守る兵達と切磋琢磨。
時間を見付けてはサルーンないしクリアフォレストへと赴き、良い汗を流しているとか何とか。
「それに他の首都等でもそうですが、最初は(抑え気味の)ホズミ商会とは別に、商店等を計1〜2店。多くてもせいぜい3店ですね。無理に出店したところで、ただ混乱を招くだけ。なので流れと言いますか、雰囲気を知って貰う事からいつも始めてます。」
「残念だ…これから帝国の者だけで話し合おうと思う。凛様、すまないが少し待ってはくれぬか?」
「勿論良いですよ。あ、最悪どちらも断って下さっても構わ━━━」
『それはない(です)。』
「凛様、それだけは有り得ませんわ。」
帝都を遥かに凌駕するクリアフォレストの発展振りを見せ付けられた今。
何もなしで戻るとの考えはゼノン達の中で一切ない様だ。
漏れなく全員からキッパリと断られ、オリビアに至っては満面の笑顔。
凛は苦笑いで「そうですか…」と答えるに留めた。
それから5分程話し合った結果、スクルドの扱いは凛に一任。
適時で構わないので、可能な限り帝都にも店を揃えて欲しいとなった。
以上を踏まえ、参考がてら獣国王都の様子を見に行きたいとの話になり、丁度来訪したフィリップとアーウィンがそれに乗っかる形に。
つい先日ゼノン夫妻が初めてクリアフォレストへ赴いた際、まず驚いたのが多種多様な者がいた事。
人・亜人・獣人関係なく道を歩き、笑い、(ちょっとしたいざこざで)顔を突き合わせ、一緒に食事を摂る。
すっかり慣れ親しんだのか周囲から気にする素振りはあまり感じられず、カルチャーショックを見せ付けられた気分だった。
逆に考えればある程度亜人獣人と接する機会も増えたとも取れ、レオン達が住まう王城に移動した後、外へ出ても獣人達の多さに少し圧倒された程度で済んだ。
それもレオンや凛達が歩き出した事で解消。
早い段階で回復し、息子や娘共々少し遅れる形で彼らの後ろを付いて行った。
「凄い列が出来ておるな…。」
「そうですね…。」
そんな1行が訪れたのは粉もの屋。
文字通り小麦粉を主体とした料理を提供するお店だ。
早い・安い・量が多い・(凛サイド的にはそこそこだが)味も美味いがウリで人気を博し、ズラリと並ぶ長蛇の列。
帝都にも行列が出来る店はあるにはあるが、数人か多くても十数人程度。
ゼノン、及び彼の隣に立つオリビアが複雑な表情になるのも仕方ないと言えよう。
「獣人ってぇのは大食らいがほとんどだからな。贅沢品も悪かねぇが、満足感が段違いだ。好物の肉(ついでに野菜)が追加出来る上、品数も豊富と来た。提供までが早いからせっかちな奴でも安心、しかも果実を使ったものに酒まである。様々なニーズに応えたココは最高の店なんじゃねえかと俺は思う。これで店舗数を増やしてくれりゃ、後は何も言う事はねぇな!」
『成程…。』
妻タリアの1言で急遽案内役に抜擢されたレオンの説明は尤もで、ゲスト全員が神妙な面持ちで頷く。
どこも食糧問題や改善は頭痛のタネ。
主原料である小麦はパンにするかスープに混ぜるが主な調理法の彼ら。
凛の屋敷で出された料理をただ美味しいで完結、その先がなかった為に今回の見学は改めて考えさせられる出来事となった。
その後、30分程度都内を見て回り、近い内に2〜3店舗追加するとの話をしつつ1行はクリアフォレストへ。
昼食を挟み、神聖国以外の面々で帝都帝城へと向かう。
到着するや、壮年の男性━━━宰相であるドレイク・ヴァン・ステアニア公爵から、門の前が貴族達で溢れかえっているとの報告が。
一通り膿を出し終え、1晩の内に商業ギルド帝都支部を解体→ホズミ商会として新設。
ある程度離れた一般区画に商店を1つ建て、営業を開始したのが今朝。
それと並行して城から使いの者を走らせ、帝都内にいる全ての貴族達へ(ホズミ商会関連施設の)店を新たに出す旨を伝達。
しかし報せを読んだ内の一部。
特に(粗品を貰うだけ貰っておきながら)異論を唱えた、反対派とも呼べる者達は納得いかなかったのだろう。
激怒し、これ以上好き勝手されてなるものかと言った内容を抗議しにわざわざやって来たとの流れだ。
「ほう、抜かしおる…ならば余自ら剣の錆にしてくれよう。」
ただ、これをゼノンが受け入れるはずがなく。
丁度執務室から出てすぐの位置だった事もあり、即座に室内へと引き返す彼。
青筋を立て、縋るドレイク宰相を引き摺りながら壁に飾ってある愛剣カレドヴルッフを手にし、再び外へ出ようとする。
本人然り、娘然り、息子然り。
悪・即・◯よろしく、斬り捨て御免が好きな1家だとツッコミが来そうな雰囲気全開だった。
「ゼノン様、ダメですよ。感情的になるなとは言いませんが、困るのは民達です。」
「だが、それでは示しが…。」
「関係者込みで当商会施設の利用を禁ずる、とでも告げれば十分かと。」
「ふむぅ…納得は出来ぬが致し方なし、か。相分かった、ならばその様に触れを出すとしよう。良い見せしめにもなるしな。」
皇帝、並びに宰相直々の言葉に顔を青くする貴族達。
後者はストレスから来る怨みが加わり、手助けした者に対しても厳しい罰則を与えるとのオマケ付き。
城門前で騒いだ当人達は勿論。
抗議すれば自分にもお零れが貰えるのではと勝手に期待、同道した家族に寄子に子飼いの者、便乗しようとした商人らはこの日を境に孤立。
誰からも手を差し伸べられずに衰退の一途を辿り、やがて没落するとの流れに。
一仕事を終え、ドレイクを伴ったゼノンが凛達のいる客間へと向かう。
「凛様、待たせたな。これで馬鹿共は静かに…む。其方は…紅葉だったか。」
部屋に入るや、凛のすぐ近くで静かに佇む紅葉の姿が彼の瞳に映る。
「はい、左様でございます。」
ゆっくりと胸の前に右手をやり、落ち着いた口調で返す彼女。
気品のある所作。
容姿を交えた美しさに帝国の男性陣(従者やウェルズ達皇族)がほう、と溜め息を漏らす。
「して、そこな者達は?」
「ブンドール候爵の手の者によって拉致、殺害までされた方々です。」
『………。』
ゼノンが別方向に焦点を定めた先にいたのは、16~42歳の様々な種族の男女が20人。
極々一部ですけどね…と凛から説明されても尚、直立不動を維持している。
「殺害された?ならば不死…には見えぬな。」
彼ら彼女らは死者特有の朽ちただったり青白い肌ではなく、生者のそれ。
むしろ、生気と言うか覇気すら感じさせた。
「恐れながら、皇帝陛下。彼らは間違いなく元死人。先頃まで肉体すらなかった者達でございます。数が多かった為に時間は掛かってしまいましたが、私が甦らせ、そちらにいるクロエが手を加えた結果でございます。」
「頑張ったんだよー♪」
楚々とした雰囲気の紅葉とは対照的に、クロエが両手を挙げながら嬉しそうにする。
鬼子母神である紅葉は魔法。
そして死霊魔術が得意。
何か条件を満たしたのだろう。
クロエは少し前、ノーライフクイーンからデスライフルーラーへと進化を果たした。
得たスキルは2つ。
デバフ無効化+超速再生+高速魔力回復効果のある超克に、肉体と魂を掌握する生命支配だ。
生命支配は生者を死者に置き換える事が出来、逆もまた然りとの効果が。
未だ沈黙を貫いたまま立つ彼らは、ブンドール達からあらゆる手段で連れて来られ、散々弄ばれたり扱き使われて命を落とした者達。
死しても尚強い未練だけが残り、何年。
下手すると何十年も彷徨い、彼らの存在を伝えられた紅葉によって復活。
クロエの協力もあり、一見するとただの人間や亜人や獣人の集まりの彼ら。
しかしその実態はスケルトン系、ゾンビ系(吸血鬼もこちら)、ゴースト系(リッチ等)、ドラゴンゾンビ系。
いずれかの上位種の強さを内包し、見合った実力を有している。
それだけ、もう2度と理不尽な目に遭いたくないとの表れ。
若しくは証左なのだろう。
因みに、男性は憧れからドラゴンゾンビ系。
女性は見た目重視(実年齢より若々しく見えるとの意味)でゾンビ系に比率が偏ったのは語るまでもない。
(今、凛様は死霊魔術でと言ったが、この紅葉なる者は妖鬼族にして死霊魔術師でもあったのか。死霊魔術師は何人か見たが…良くて銀級止まり。それも魔物だけ…よもや人も出来るとはな。
しかし初めて見る者がほとんど。それも、揃いも揃って我と同じか、少し上位の強さばかり。何の冗談だと笑い飛ばせたらどれだけ良いか…かなり癪ではあるが、レオンの奴に救われる結果となったか。)
命が惜しければ、決して敵対するな。
良いか?
冗談じゃねえからな?
本気になるなよ?絶対なるなよ?
分かったな?本当に頼むぞ?
衝撃のデカさに思いっ切り白目を剥く、ロイヤルファミリーと宰相ドレイク。
そんな彼らを他所に、ゼノンは助言をくれた好敵手(本当はとばっちりを食らいたくないだけ)を想い、益体もない事を考えるのだった。
レオンの念押しが凄い件w
クロエの進化条件ですが、数多の配下+複数の王を従えての特殊進化になります。
以下没ネタ↓
「━━━10だと団長・副団長。20なら親父ですらも、って感じじゃね?それ位のレベルの猛者に…うん?実際にやってみた方が分かりやすいかも知れねぇな。とりま30で募集掛けてみるか」
「止めて下さい死んでしまいます」
「まぁ、そう言わず。試し、あくまで試しだから…な?」
「はっ倒すぞ貴様」
数秒後、実際にはっ倒された━━━ゼノンが。
「な…何をするのだ、オリビア…」
「可愛い我が子にそんな事言っちゃメッ、ですよ」
「解せぬ…(がくり)」
「なんかスマン」




