表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/325

23話

食後、凛は改めてゴブリン達から話を伺う事に。


聞けば、彼らはゴブリンでありながら狩猟、略奪、暴行を行わない(珍しい)種族。

農耕や周辺にある自然の恵みを中心に生計を立てていたのだそう。


そしてこの集落は他と違い、何故か雄が2体いたら雌が1体はいると言う割合で存在。

集落内での繁殖が十二分に可能で、彼らの温厚な性格に惹かれた他種族の出入りもそれなりにあり、極小さな街位の豊かさで生活を送って来たらしい。


そんな中、数年前に集落内で『姫』が生まれた。

姫はいずれも2本の角を持ち、数十年から百年、二百年に1体現れると言う珍しい個体。

成長すると、集落に恩恵を(もたら)す存在とも言われている。


そんな姫の噂を、たまたま(先程のゴブリンキングとの戦闘の際、ちょこまかと逃げて火燐を苛立たせていた)グレーターゴブリンが耳にし、そのままゴブリンキングへ伝達したのがつい最近。


ゴブリンキングは姫を自分の傍に置く事で、所属する群れの地位を上げようと画策。

半ば強引に、彼女を集落から連れ去ってしまう。


そしてゴブリンキングは、姫を自分の()()にさえ入れてしまえば、残りの者は用済みだと判断。

姫を檻の付いた部屋に閉じ込めて少し経った頃、後顧(こうこ)(うれ)いを断つ目的で滅ぼす事を決める。


武器を手に、集落へと足を運んだゴブリンキング1団。

報せを聞いた集落の代表兼、姫の父親でもある年老いたゴブリンが前に出、見逃して欲しいと懇願(こんがん)

しかし、ゴブリンキングはこれを鼻で笑った挙げ句、これが返事だとばかりに右手の大剣で代表を縦に両断。


会話らしい会話もなく、一方的に代表が斬って捨てられるとの光景を目の当たりにしたゴブリン達。

集落に住まう者達もそれは(しか)りで、いきなりの事態に絶句するしかなかった。


ゴブリンキングはそんな彼らを尻目に、話は終わったとばかりに前進。

彼の後ろを、配下達が続く。


数瞬後、代表に仕えるホブゴブリンの内の1体(凛達に助け出されたのと同じ個体)が我に返り、いきなりの無礼極まる行為に(はらわた)が煮えくり返りそうになるのを必死に抑え、再度ゴブリンキング達に進むのを止めるよう熱願。

他のゴブリン達も攻撃を止めて欲しいと伝えるも、完全に無視。


ゴブリンキングは集落を攻めろと部下達に命令を下し、自身も手当たり次第に武器を振るう。

説得するゴブリン達は『いない者』として扱われた。


それを察した代表の近衛(ホブゴブリン)達は考え方を変え、自分らが皆を逃がす為の犠牲になる事を決める。

彼らは身を(てい)し、集落の中でも弱い者、加えて他種族の者達を集落の外へと逃がしていった。


その際、(助け出された)ホブゴブリンは武器で相手の攻撃を防ぐも、力負けが原因で吹き飛ばされ、民家へ直撃。

崩れた柱や壁に押し潰され、身動きが取れなくなる始末。


何とかして脱出しようと藻掻(もが)く最中、ゴブリンキングに勘付かれ、ゆっくりと歩み寄られる。

右手に持つ大剣の切っ先を眼前に突き付けられ、しばし(にら)み合いに。

やがて興味を失ったゴブリンキングが鼻で笑ったのを最後に、その場から離れて行ったとの事。


雄ゴブリンはホブゴブリンの部下的な扱いで、同族や人々を逃がす内に仲間が殺されていくとの光景に戦慄(せんりつ)を覚えた。

職務どころか全てを(なげう)ってその場から逃げ出し、床下収納がある家へ避難。

ゴブリンキング達が去るのをやり過ごした。


想いは通じ、彼らがいなくなっていざ脱出しようとした矢先。

地上部分が壊され、建物から出られなくなったと気付く。


それは、両親からここに隠れていなさいと言われたゴブリン姉妹も同じ。

彼女らもゴブリンキング達が暴れたせいで家屋が倒壊し、床下収納部分に閉じ込められてしまったのだそう。




結果、以前はゴブリン種だけで計200体以上はいた集落も、今は(姫を除き)4体だけ。

後に分かったのだが、外へ逃げた者達は残らず変わり果てた姿へと変貌(へんぼう)()げていた。


姫は目を覚ました4体と話し合い、2度とこのような理不尽な思いで同胞を傷付けられてはならない。

それらに打ち勝つべく、誰にも負けないだけの力を身に付けようとの意見に至る。


ただそうは決めたものの、ホブゴブリンと雄ゴブリン以外の全員が、戦闘は(おろ)か訓練すらした事がない全くの素人。

姫も勿論そちら側で、互いが互いをカバーしきれないまますぐにやられるのではとの見解に。


ならばゴブリンキング達を簡単に殲滅してみせた、凛達に助けを()おうとなったのだそう。


『(成程…配下になるのは勿論構わないんだけど、力に溺れないと約束出来る?)』


『(それは…どう言った意味でしょうか?)』


『(貴方達を見てると、ただ仲間を守りたいって言う風には見えないんだよね。特に…ホブゴブリンさん。)』


『(成程、それで…。)』


凛の言葉に姫は納得。

続けて、彼女は隣にいる一際大きいゴブリン…ホブゴブリンに視点を変え、伝えられた内容を説明。


ホブゴブリンは凛から水を向けられ、一頻(ひとしき)り姫から話を聞き終えても尚、何やら思うところがあるらしい。

正座のままほんの少し俯き、瞑目したかと思えば小刻みに体を震わせ、両拳を強く握り締める。


やがて覚悟を決めた彼は目をスッと開き、力強い視線で姫と正対する。


『(申し訳ありません。話を最後まで一切聞かず、一方的に仲間を殺されたと怒りが抑えられなかったそうです。これからは考えを改めるので、仲間を。延いては貴方様を守る為に尽力させては頂けないでしょうか、と申しております。)』


『(…分かった、その言葉を信じよう。)』


凛の頷きを含めての返事に、ゴブリン達の緊張の糸が少しだけ和らぐ。


『(そう言えば、今更だけど貴方達は何て呼べば良いのかな?名前とかあったりする?)』


『(いえ、私達に名前はございません。私の姫やこちらの側近や兵士の様に、役職名で呼ばれる事がほとんどでございます。)』


『(名前がないと呼ぶ時がなぁ…ゴブリンさんって声掛けたら全員に振り向かれる、なんて場合はちょっと反応に困るかも。)』


『(確かに…どう致しましょうか?)』


『(それじゃ良ければだけど、僕が貴方達の名前を考えても良いかな?勿論嫌なら断ってくれて構わない。)』


『(その様な事…!失礼致しました。こちらとしては願ってもない話ですが…その、宜しいのでしょうか?)』


『(? 勿論だよ。参考までに、後ろの美羽達の名前は僕が考えたんだ。)』


『(左様でございますか。変わった名をお付けになられたのですね。)』


『(そこら辺についてはまた追々。それじゃ、今から考えるから少し待っててね。)』


『(畏まりました…!)』


姫は申し訳なさそうな表情から一変。

両手を口の前にやる等して気持ち嬉しがり、他のゴブリン共々期待の籠もった眼差しを凛に向ける。




1分後


「…よし、決めた。」


『…!』


場が再び緊張感に包まれる。

無論、これから行われるであろうイベントについてだ。


美羽達は彼が一体どの様な名を与えるのだろうと期待に胸を膨らませ、ゴブリン達は『名前』を『付ける』意味をこの人()間は分かっているのか?と言いたげ。

そんな複雑な感情が入り混じる雰囲気となった。


「まずはホブゴブリンさんで、『(あかつき)』って名前にするよ。これは本来夜明けと言う意味なんだけど、皆の希望になって欲しいとの願いも込めて付けさせて貰うね。

もう1体のゴブリンさんは同じ位の時間から『(あさひ)』。ゴブリンのお姉さんは雌だし、太陽の反対の月から来て『月夜(つきよ)』、妹さんは『小夜(さよ)』だね。」


凛は1体1体の目をしっかり見て話し、最後に姫と向かい合う。


「そして姫ゴブリンさん。初めて君を、厳密に言えば額に生えた2本角を見た時、鬼みたいだなって思ったんだ。」


「オニ…デスカ?」


凛はマクスウェルから軽く魔物について聞かされ、オーガは大鬼。

ゴブリンは小鬼とも表記される旨を知る。


故に昔、地球にいたとされる鬼女を連想し━━━


「だからこのまま進化したら鬼姫なんて呼ばれる存在になったりするのかなー、なんて考えてさ。『紅葉(もみじ)』って名前が似合、う…ん……。」


凛が姫に紅葉と名前を付けた直後。

何かが一気に持って行かれる感じがした彼は、体の踏ん張りが利かなくなったらしい。

言い終えるよりも先に片膝を突き、苦悶(くもん)の表情を浮かべる。


「マスターっ!!」

「凛っ!」

「凛…!」

「凛くん!」

「凛君…!」

「「凛さん!」」


「…ごめん、大丈夫。」


美羽達は突然過ぎる事態に狼狽(ろうばい)

又は心配になり、駆け寄ろうとする彼女らを凛が右手で制した。


(…ふぅ、ナビ。状況確認もだけど、先に紅葉達だ。5人共無事なんだよね?)


脱力感は一時的なもので、普段通りに戻った凛がスッと立ち上がる。

視線を紅葉達へ移せば何故か気を失っており、ナビへ尋ねながらもそちらを気遣う姿は実に彼らしい。


《はい。今の一連の流れにより、紅葉様方との間に繋がり(パス)が出来た模様。》


(繋がり(パス)?僕とナビで言うリンク(接続)みたいなもの?)


《はい。意味合いは少し異なりますが、同じと考えて宜しいかと。それと紅葉様方が倒れた理由ですが…どうやら名付け行為が何らかの効力を発揮したのか、名付けた側を上。名付けられた側を下とする主従関係が構築されたのを確認。

その際、従者になった証として、名付けた側が魔素を分け与えるまでがセットの様です。分け与える魔素の量は、名付けを行った時点での主側の魔素量(エネルギー)。及び従者側の潜在能力(ポテンシャル)に応じて異なります。》


(つまり、今回は潜在能力が高い誰か…と言っても、恐らくは紅葉だろうね。彼女は姫なんて呼ばれてるし、どう考えても普通なはずがない。)


《はい。この様な事態に備え、予め()限収()に蓄()てお()た魔素を使用致しました。ですが、私が想定していたよりも流れ込む魔素の量が多く、且つ魔素の通る経路が狭かった為に虚脱感へと繋がってしまいました。申し訳ありません。》


(いやいや、むしろ反対に今知れて良かったと思ってる位だよ。だから気にしないで。)


《ありがとうございます。それと、紅葉様方についての事ですが…。》


その後も、凛とナビによる話し合いは(軽くではあるが)続けられるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ