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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ

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23/325

21話

広間にいたゴブリンはゴブリンキングを除き、7割弱が魔法を使うメイジに、弓を携えたアーチャーを含めたゴブリン。

それとゴブリンを進化させたホブゴブリンで構成。


それ以外だと、ホブゴブリンを進化させたマーダーゴブリンやグレーターゴブリン。

ゴブリンアーチャーを進化させたゴブリンスナイパー、ゴブリンメイジを進化させたゴブリンソーサラーと言った感じか。


いずれも、鉄級から銀級上位。

ゴブリンキングに至っては金級上位の強さを持つ。

今回(おもむ)いたのが凛達だったから良かったものの、本来であれば最低でも金級以上の冒険者パーティー。

或いは、それに準ずる集団(チーム)でないと(かえ)って危険で、場合によっては攻めて来た側が敗北ないし撤退。

全滅との可能性も大いにあったりする。


(おっ、美羽が早速ゴブリンキングを討伐完了か。それじゃ僕も…って。へー、同じゴブリンでも、微妙に見た目や持ってるものは違うんだ。)


凛は空中で下の様子を俯瞰(ふかん)

同時に6基の球状の端末━━━ビットを駆使し、美羽の移動を補助。


彼女がゴブリンキングまで一気に駆け抜け、倒してからは他のメンバーに意識を切り替える。

統一してそうでしていないゴブリン達の装備に軽く目を奪われつつ、出来るだけ1対1。

多くても1対2の状況へ持っていけるよう、彼らを間引き続けた。


そんな凛のサポートもあり、戦闘は1分強で終わった。

それも、ほぼほぼ一方的な展開で。


ゴブリンキングへ真っ直ぐ向かう美羽に攻撃しようとしたゴブリン達はビットにより頭部を撃ち抜かれ、ならばと魔法や矢を放つもまるで通じない。

魔法はビットの防御壁で、矢は精密射撃で半ば折られる形で防がれたからだ。


それは美羽や火燐達。

広間の入口に立つエルマにイルマ、延いては空中にいる凛ですら攻撃がまるで意味を成さなかった。


逆にお返しとばかりに反撃を喰らい、良くて腕や足。

悪ければ胴体や首、最悪一撃死(ピ◯ュン)する流れで魔力射撃を貰い、斃れる羽目に。


そのおかげもあって、美羽達は無傷(ノーダメージ)

ゴブリン達だけがただただ被害を受け、全滅へ至るとの状況に。




「ゴブリンキング…自信満々な顔で挑発して来たから斬り込んだのに、防御もしないでそのまま倒れちゃうとか意味分からないよぅ…さっき戦ったオークジェネラルの方が全然強い…と言うかそれ以前の問題な気も…。」


戦闘後、美羽の口から出たのがそれ。

倒れ伏したゴブリンキングに視線をやるのだが、その表情は実に不満そうだった。


彼女は火燐からゴブリンキングの討伐を依頼。

それに従い、目的までひた走った訳なのだが…ある意味彼女が1番割りを食った。


と言うのも、美羽を目の前にしたゴブリンキングが何をするかと思えば、単に語っただけ。

しかも顔を歪め、(わら)いながらでだ。


それを挑発だと捉えた彼女は思いっきり斬り掛かり、抵抗らしい抵抗を全く受けずに終わらせてしまった。

あまりの呆気なさに目をパチクリし、「あ、あれぇー?もう終わりなのー?」としばらく立ち尽くした程だ。


実際は『自分に手を出したら(背後にいる)上が黙っていない。投降した方が身のためだぞ』的な内容を話しており、ドヤ顔のまま後ろに倒れていくと言う。

何とも間の抜けた最期となった。


ゴブリンキングはこう伝えば下るだろうと信じて疑わず、言葉や意味の分からない美羽は疑問符を浮かべながら、との表れでもある。


「はっ。挑発するだけしといて動かねぇとか、アホのする事だぜ。」


ともあれ、死人に口なしとは良く言ったもの。

火燐がボロクソに(けな)し、凛達は(ゴブリンキングをアホ呼ばわり…)と同じ思いを抱いていた。


「それより、あの黒い変なゴブリンが厄介じゃなかったか?」


「黒いゴブリン?」


「ああ。色が黒いってだけでゴブリンとほとんど変わらない見た目なのに、これがまたすばしっこくってよ。ゴブリンキングが倒れてから動き始めたんだが、仲間のゴブリンを盾にしたりでちょこまか逃げやがってよ。倒すのに苦労したぜ…。」


火燐は地面に横たわる黒いゴブリン…グレーターゴブリンを、ややうんざりした様子で見やる。


彼女の視線の先にいるグレーターゴブリンは、ホブゴブリンが進化した存在。

体の大きさは通常のゴブリン位に戻ってしまう反面、悪い意味で頭が冴え渡り、更に狡賢(ずるがしこ)い性格へ。


(普通のゴブリンと比べ)逃げ足が格段に速くなり、思いの外手を焼かされた。


「結局、あのゴブリンキングは何がしたかったんだろうね?それに、さっきのオーク達よりも装備の質が良い気もするし。」


そこへ、ふわりと降り立った凛が告げる。

戦闘があっさりと終わったのは喜ばしくはあるものの、謎を残したまま未解決となった事に美羽達が『うーん…』と唸る。




話題に上がったゴブリンキング。

実は金級上位ではなく、これまで倒した冒険者や魔物から得た経験から、魔銀級の強さを所持。

配下のゴブリン達も、質の良い装備品の効果もあって1ランク上と思って良いだろう。


そんな彼らだが、死滅の森に集落を構えるオーガキングの傘下。

元は10体程度の尖兵(せんぺい)で、近隣の偵察等を主な任務としていた。


そのオーガキングの集落は、黒鉄級上位のオーガキングを筆頭に、1つ手前であるグレーターオーガ。

さらに1つ手前のオーガに、同等の強さを持つ巨体トロールと。

いずれも2メートルを超す体躯(たいく)の者ばかりで編成され、力を誇示(こじ)する形で周辺に(にら)みを利かせている。


ゴブリンキングはいずれ自分もそこの末席に加わるを理想に掲げ、脅し文句の1つでも付ければ美羽達が屈すると思っていた。

実際この方法で数多の女性が降参し、男達は血祭りに上げたとの実績が。


良質な装備品を身に纏っていたのはこれが所以(ゆえん)

また本人(本ゴブリン?)は言葉が通じたと思っているみたいだが、恐怖から投降したり戦意を喪失しただけだったり。


ゴブリン達はまた女が来た位の認識しかなく、ほとんどが事の成り行きを傍観。

ついでにゴブリンキングの指示待ちだった為に棒立ちとなり、わずかな時間で。

それも格下である火燐達に倒される顛末(てんまつ)となった。




閑話休題


「…ってかよ。翡翠も大概だが、凛は更に上を行ってないか?んだよその、肩に浮いてる変なやつぁよ?」


火燐のジト目が凛に突き刺さる。

雫、翡翠、楓、エルマ、イルマも似た思いを抱き、彼…ではなくビットに注目が集まる。


「…ん?あ、これはビットって言ってね。こうやって…攻撃出来るし。」


凛は説明しながら、ビットを1基操作。

竹串みたく、15センチ位にまで伸ばした白い魔力弾を発射。

パシュッと撃ち出された弾は洞窟の壁に当たり、丸い穴を空ける。


「…こんな感じで、防御も出来る兵…武器みたいなものだよ」


そして今度はビットを4基動かし、20センチ四方の。

その後少し離れた位置に、高さ2メートルのピラミッドの形となるよう配置。

ヴォンと音と共に、全ての面部分に薄い虹色の膜を展開させた。


「僕はビットで皆の援護をしながら、もしもの為に備えていたって訳。」


「そうかい…。」


凛は笑顔でビットを自分がいる場所へ戻し、火燐はダメだこりゃと言いたげな表情に。

雫と楓はビットがあれば動かなくても済むのではないかとの方向で関心を示し、翡翠と美羽は苦笑い。


「あたし、これからは凛さん達の行動を常識に当てはめない事にするよ…。」


「私も…。」


そしてエルマとイルマは完全にお手上げ。

揃って微妙な顔付きに。




それから、皆でゴブリン達の回収作業へと移行。

エルマとイルマは外で休むよう凛から提案され、2人は困惑顔に。

見兼ねた火燐が自分も付いて行くと言って2人を抱き寄せ、一緒に広間を後に。


程なくしてゴブリンの回収が開始。

雫、翡翠、楓は、少しでも回収の助けになればと腕や足を引っ張る形だ。


途中、ナビから広間の奥に部屋があり、そこにゴブリンキングが今まで貯めた財産や装備品が置かれていると説明。

凛は美羽にゴブリン達の回収を任せ、1人奥の部屋へと向かう。


すると、銅貨や銀貨を始めとしたお金が山積みにされ、加えて血の付いた剣や防具等が乱雑に置かれているのを発見。

不快から眉間に(しわ)が寄るのが分かった凛は表情を戻し、両手を合わせ、目を閉じて「失礼します」と1礼。

その後、静かに回収作業へ取り掛かる。


ある程度回収したタイミングで美羽達が合流。

計10分程で作業を終えた。


「…よし、これで回収作業は全て終わりだね。部屋にあった財産や装備品は、近い内に最寄りの冒険者組合(ギルド)へ渡すとして…それじゃ、皆で(目的の)ゴブリンの元へ向かおうか。」


凛の宣言に美羽達が頷いたのを機に、次々と歩き出す。




ややあって、1行は囚われているゴブリンの元へ到着。

部屋は8畳程の広さがあり、入ってすぐのところに木製の檻。

それと部屋の中心には、横座りをし、俯いている様子のゴブリンが1体。


通常のゴブリンは5センチ位の長さの角が、額の中心に1本生えている。

しかし目の前のゴブリンは、少し短くはなっているが2本。

両目の真上に位置する形で生やしていた。


「君、大丈夫?」


「…ココハ、危険デス…。」


俯いたまま。

それも予想外の返しに凛が喋ったと驚きの声を上げ、他の面々も目を見開く。


「でも少しぎこちない感じがするな…ナビ。ひょっとしたら、あのゴブリンさんは知性が高いのかも知れない。念話とか翻訳みたいな感じで、直接話さなくても相手と意志疎通が可能になる方法って何かないかな?」


《畏まりました。今からご用意致しますので、このまましばらくお待ち下さい。》


「…皆、僕はしばらくここに残ってゴブリンさんの相手をする事になった。長くなるかもだし、外に出て━━━」


「マスター、ボクは残るよ。」


「私も残る。喋るゴブリンに興味が湧いた。」


「あたしもー。」


「私も残ります…。」


「分かった。それじゃ皆で話をしようか。」


凛の気遣いに美羽達が断固とした姿勢を見せ、全員このまま残る事に。

ナビの言う準備が整うまでの間、凛達はそれぞれ俯くゴブリンに話し掛け、ポツリポツリではあるが返事を貰う。




30分後


『((わたくし)、ここから少し離れた集落にて静かに暮らしている者でございます。1週間程前、こちらのゴブリンキング様が私共が住まう場所へと参られ、俺の物になれと仰いまして…その場でお断りさせて頂いたのですが、それから毎日返事を聞きにいらっしゃる様になりました。)』


かつて俯き、暗い影が差していたゴブリンが水を得るが(ごと)(しゃべ)る。

それはもうハキハキと喋る。


このゴブリン、ナビが見立てた通り雌。

何度も凛達から話し掛けられたのに加え、ゴブリンキング達は討伐済みである事を知らされ、安堵したらしい。

顔を上げ、辿々(たどたど)しいながらも普通に話せる間柄となった。


それと、現在行われているのは口頭ではなく思考を相手に伝える方法。

所謂『念話(テレパシー)』で、追加で翻訳機能を付いた『対話(ダイアログ)』。


これらのスキルがナビが用意した手段となる。

おかげで、念じるだけで会話のやり取りが可能に。

更には口を開く必要がなくなり、雫達は急に見つめ合うだけで動かなくなった2人を不思議そうに眺める。


『(俺の物にって事は、貴方は高貴な生まれとか?)』


『(はい。あ、いえ、その…恥ずかしながら、私は集落で『姫』と呼ばれておりまして…。)』


『(はぁ、納得した…。)』


言葉の丁寧さに、ある意味納得した凛。

それとナビの声が届く関係からか、同じく聞こえる美羽も「それでかー」と漏らす。


『(ゴブリンキング様は私から何度もお断りの返事を受け、焦れてしまったのでしょう。あまり長引かせると、集落が酷い事になるぞと脅しをかけられたのです。後ろに大物が控えていると散々自慢されておいででしたし、私達の集落では殺生の一切を禁じておりまして…ですので、一般的なゴブリンよりも弱く、もし集落へ攻め入りでもされましたら、とてもではありませんが持たなったでしょう。

私がこの中に入って早1週間。こちらの方々は少々悪どい事がお好きな様ですし、私がいなくなってから集落がどうなったのかが心配で心配で…。)』


この姫と呼ばれるゴブリン。

腰布しか身に付けていないにも関わらず、言葉の節々に見られるのは間違いなく高貴のそれ。


見た目とあまりに掛け離れた物言いに、凛と美羽は唖然とするばかりだった。


『(えーと、それじゃどうしようか。貴方に害意がないのは分かったし、ここから出て集落の様子が見たいとかあれば手伝うよ?)』


『(申し訳ありませんが、お願い出来ますでしょうか?)』


『(分かった。それじゃ早速檻を斬るね。少し下がってて。)』


『((かしこ)まりました。)』


今後の予定を決めた凛達は、部屋から脱出。

共に洞窟内を歩き、火燐達と合流を図る。




「へー。それじゃ、このゴブリンを目当てにゴブリンキング達が動いたって位には偉い訳か。」


「まあね。ただ、ゴブリンのお姫様と言うのがどんな役割を持つのかまではさっぱりだけど…。」


「分からねぇ事を今話してても仕方ねぇよ。取り敢えず、このゴブリンがオレ達を攻撃するって事はないんだな?」


「うん。今からこのゴブリンさんと一緒に、集落がある場所まで飛んでみる事になってね。殺生を禁じてるらしいから、他のゴブリン達と遭遇しても大丈夫なはず。」


「分かった。それならオレ達も行く。」


「良いの?」


「ああ。」


火燐からは言葉で、外の空気を吸ってすっかり体調が良くなったエルマ達。

それと美羽達から頷きで返される形で凛は同意を得る。


最後にゴブリンから了承を貰い、美羽が彼女をお姫様抱っこ。

こうして準備を終えた凛達は、皆でゴブリンの集落があるとされる方向へと飛翔して向かうのだった。

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