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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ

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22/325

20話

「凛くん凛くん。」


「ん?今度は翡翠か、翡翠も何か要望?」


「要望と言うか、入口に立つ2体をあたしに任せて貰えないかなーって。」


「それは全然大丈夫だけど…何か上手い方法でもあるの?」


「にっひひー、それはねー…ウインドアローッ!」


凛が不思議そうな表情を彼女に向けてみれば、返って来たのはウインクしながらでの悪戯っぽい笑み。

それと、宙に浮く風系初級魔法ウインドアローだった。


ウインドアローは翡翠の顔のすぐ右の位置で、直径3センチ位、長さ80センチ程の棒状のもの。

アローと命名されてはいるが矢の形はしていないのが特徴。


ウインドアローは風で構成され、また透明に近い事から少し見えにくい仕様となっている。




「ウインドアロー?」


「このウインドアローをねー、こうやって掴んでー。」


「ん?」


「ゴブリン目掛けてー…射るっ!」


凛が不思議がるのを尻目に、翡翠はウインドアローを掴み、ゴブリンがいる方角とは違う方向へ射出。

ヒュッと飛んで行った矢は大きなカーブを描き、右側のゴブリンの頭部を射貫(いぬ)く。


「よしっ、当たったぁ!」


『え?』


「は?」


ウインドアローはゴブリンの頭に当たった後も尚飛び続け、そのまま遠方へ。

もう片方のゴブリンは相方がいきなり後方へ倒れ、それを直視したが為に警戒心を露に。


ついでに、今の結果に喜んだのは翡翠位。

残る面々は思いっ切り面食らい、誰も二の句が継げずにいる。(違う言葉で返事をしたのは火燐)


「ギ…。」


そうこうしている内に、正気に戻ったもう1体のゴブリンが仲間へ(しら)せようとする。

だが先に放たれた翡翠のウインドアローに貫かれ、役目を果たせないまま生を終えた。




「やった!ぶっつけ本番でやってみたけど、意外と何とかなるもんだね!」


『………。』


(今のウインドアロー…掴んだのも勿論凄いんだけど、詠唱なしでの発動だった…そう言えば、凛さんがハイヒールを使った時もそうだったし、雫って子も詠唱しないで氷の魔法を発動させてたっけ。)


若干大袈裟とも取れる程に翡翠1人がひゃっほーと(はしゃ)ぎ、凛達は完全に置いてけぼり状態。

ただエルマだけは冷静に分析を行い、イルマへチラッと目配せ。


イルマは突然のアイコンタクトに一瞬だけ目を見開き、しかしすぐに意図を理解。

こくりと頷き、魔法の扱いに歴然とした差があるのだと改めて思い知らされた。


「これで通れる様になったし、それじゃーしゅっぱー━━━」


「ちょっと待って。翡翠、今の説明が先だよ。」


ただ当の本人は呑気(のんき)なもの。

あっけらかんとした顔で先へ進もうとしたところで凛に肩を掴まれ、美羽達からはじーっと鋭い視線を向けられる。


「えー…?説明って言っても、見ての通りだよ?あたしはただ、ウインドアローを矢みたいにして射っただけ。」


「それはそうなんだけど…誰にでも出来るものではないよね?」


「うーん…あたし達みたいな魔力生命体。それか精霊位?多分だけど、他の種族はまず出来ないんじゃないかなー?」


「精霊か。その可能性は十分にありそうだね…と言うかそもそも、翡翠はどうしてウインドアローを掴もうなんて思ったの?」


「シルフ様から聞いた話を試したくなったの。」


「話?」


「うん。昔…と言っても、1500年位だから大分前の話なんだけど。イフリート様がね、敵となる存在に対し、フレイムスピアをそれはそれはもうたっくさん投げた事があったそうなんだ。」


「え?オレ、イフリート様からそんな事…つぅか、昔の話自体聞いた覚えなんて1回もねぇぞ?」


「そうなの?」


「ああ…だが今は話を進めるのが先だよな。すまん、続けてくれ。」


予期しない翡翠の爆弾発言に、追及したい思いに駆られる火燐。

ただ自らが話の腰を折ったとの自覚はあるらしく、翡翠に進めるよう促す。


「あ、うん。分かった。それで、イフリート様がフレイムスピアを両手に1本ずつ発動させては掴み、相手に向けて投げるを繰り返したみたいでね。たまに武器代わりに振り回してもいたとか。

それで、途中から何故かシルフ様も参戦する流れになったんだけど…火災旋風だっけ?炎と風って、組み合わせたら一気に被害が大きくなるんでしょ?だから火力が上がり過ぎて収拾がつかなくなり、鎮火したウンディーネ様から一緒に怒られたってお話。」


『………。』


「シルフ様は、イフリートは大雑把だから多分忘れてるかもーなんて言ってた。笑いながら。」


「あー、それなら納得だわ。特に大雑把の部分。オレの食いもんはイフリート様が用意してくれはしたんだが、飯っつって出されたのが真っ黒に焦げた『ナニカ』。それも毎回だぜ?正直食えたもんじゃねぇよ。

だからっつって残したらぶっ飛ばされるし、マジ意味分かんねー。だからアレも訓練の1つだと割り切り、我慢して食うしかなかった…それに比べ、凛が用意した飯がうめーの何のって。もうこれだけで旅に出て良かったと思えた程だぜ。」


『………。』


「ま、まぁ、翡翠と火燐の話には少し驚かされちゃったけど、静かに潜入出来るから良いって事で。それじゃ僕は先に向かうから、皆は後ろへ付いて来て。」


火燐と翡翠によるユーモア(?)に助けられる(内容が内容過ぎてそれどころではないとも言えるが)、部分はあったものの、そのおかげでエルマとイルマの顔色が。

それと場の緊張感が幾分かは和らいだ…気がする。


ただあくまでも幾分かであり、今は作戦中。

凛は軽く慌てる形で先を歩き、そんな彼の後ろを美羽達は付いて行った。




翡翠が説明した通り、先程彼女が魔法に直接触れられたのは片親が大精霊。

つまり半分は精霊だからと言うのが理由だったり。


精霊は純粋な魔力のみで構成。

その影響から、地上にいるどの種族より魔力や魔法の扱いに長けている。


ただ、翡翠は生後1ヶ月。

生まれてからまだそう間もない状態だ。

故に経験不足や技術不足は否めず、ウインドアローを掴み、操るのがせいぜい。


それでも流石と言うべきか。

(つたな)いながらも魔法のエキスパートたる片鱗を見せ、彼女の今後の成長に期待が持てる瞬間となった。


ついでに。

同じく翡翠の説明にも出たが、大戦時、炎の大精霊イフリートが炎系中級魔法フレイムスピアを連続で発動させ、敵方を灰燼(かいじん)()したり壊滅にまで追いやった事がしばしば。


フレイムスピアは炎系中級魔法の1つ。

直径20センチ、長さ120センチ位の炎で構成された投げ槍みたいなものだ。

イフリートは左右の手にフレイムスピアを持ち、高笑いをしながら敵の集団に向けて次々と投げるを繰り返す。


一応、他の四大精霊。

それとマクスウェルや里香も同様の事が行えるのだが、(ケラケラとお腹を抱えて笑うシルフは別として)イフリートと同じだとは思われたくなかったのだろう。


里香とマクスウェルは苦笑いを。

ウンディーネは呆れた表情を浮かべ、ノームは少し慌てた様子でイフリートを見やるだけだった。


その途中、イフリートに触発され、気分の乗ったシルフがやる気に。

イフリートのフレイムスピアに、その風バージョンとも言える風系中級魔法ゲイルスピアが混ざった事で、超大規模な火災旋風を引き起こしてしまう。


これに里香達だけでなく、一緒に戦いへ参加していた者達も(こぞ)ってドン引き。

味方にまで被害が及び始め、しかしイフリートとシルフは笑うだけで何もせず、里香達が消火にあたった。


鎮火後、呆れ顔の里香とマクスウェルがイフリート達を諭そうとするも、2体は全く悪びれた様子を見せなかった。

仁王立ちするか笑みを崩さない彼らにウンディーネがブチ切れ、2体纏めて氷漬けに。


以後、ウンディーネはイフリート達へ目を光らせる様になり、今回の一連を教訓にウンディーネは怒らせてはいけないとの暗黙の了解が広がったのだそう。




話は戻り、凛達は極力音を立てないよう歩きながら入口へ。

そこで(たお)れるゴブリンの亡骸(なきがら)を無限収納へ仕舞い、エルマとイルマから空間収納持ち。

つまりは多芸だ(引き出しが多い)と驚かれる。


一行はそのまま洞窟の中へと入り、罠はないかの注意をしながら凛が先頭を歩く事50メートル程。

前方に、3つに分かれる道が出現。


凛はどう進めば良いかをナビに尋ねたところ、左に進むと(くだん)の捕らえられたゴブリンが。

右に進めば過去に連れて来られた者達の成れの果てが、このまま真っ直ぐ進むとゴブリン達がいる旨の返答を受ける。


そして囚われのゴブリン以外は全て正面の通路の先に集中しているとの情報や、再び顔色エルマ達を早く洞窟から出してあげたいとの観点から。

凛達は寄り道をせず、真っ直ぐ向かう事を決める。


正面の通路は幾重(いくえ)にも折れ曲がり、歩みを進めるに連れ、ゴブリン達の話し声が鮮明に聞こえて来るのが分かった。

凛はナビから次の曲がり角が最後だとの言葉を参考に、ちらりと通路の先の様子を覗いてみる。


彼の視界に映るは、30畳位の広さの開けた空間。

その中でゴブリン達が複数のグループに分かれ、それぞれ焚き火を囲んでは何かの肉を焼き、談笑を交えて食べると言う光景が。


奥には身長2メートルを越し、引き締まった体のゴブリンキングが独座。

他にも、(ゴブリンキング程ではないが)大小様々な種類のゴブリン計47体。


4~6体ごと。

加えて、同一ではなくバラバラに配置される形で集まっているのが窺えた。


「どうやら、ゴブリン達は食事中みたいだ。特に罠とかもなさそうだし、このまま一気に突入しようと思う。中へ入ったら僕はすぐ真上方向に跳ぶから、各自倒せそうなゴブリンを倒していくって感じで頼むね。」


視点を美羽達に戻した凛がそう告げ、皆から首肯で返される。


「それじゃあ…作戦開始っ!」


先頭の凛が広間に入り、直後に跳躍。

入口付近にいたゴブリン達は彼の動向に目を奪われ、かと思えば続けて美羽達が入って来る。


彼女らは既に武器を構える等して戦闘態勢に入っており、凛は凛で空中でピタリと停止、

次の瞬間には、球状のものを複数展開し始める。


突然の、それも初めて見る動きにゴブリン達は付いてこれず、右往左往するばかり。


「グギャギャギャギャギャアァァ!!」


ゴブリンキングによる叫び声が室内に(とどろ)く。


ゴブリン達は(すく)み上がり、これ以上彼の機嫌を損ねまいと慌てて応戦の構えを取る。


「雑魚共はオレ達で何とかする。美羽は奥にいるでかいのをやれ!」


しかしその頃には既に入り込んだ女性陣により攻撃が加えられ、手前にいた2グループが殲滅(せんめつ)済みの状況。

指示を受けた美羽は「分かった!後は任せるね!」と残し、前方へと駆け出す。


「エルマはここでイルマの守りだ。相手をするのは近付いて来た奴だけで良い。」


「「分かりました!」」


「残ったオレ達は雑魚共の一掃だ。派手にやろうぜ。」


「ん。」


「はーい!」


「はい…。」


「良し、そんじゃ行くぜぇ!!」


叫び終えるや否や火燐が即座に突っ込み、彼女以外の面々もゴブリン達の相手をし始めるのだった。

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