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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ

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18/325

16話

「よし、終わり!」


「あー!…ちくしょう、間に合わなかったか…。」


美羽が双剣を鞘に戻したタイミングで、残念そうな表情の火燐が到着。


「あっ、火燐ちゃん!そっちも無事に終わったんだね!」


美羽は火燐の声に反応して後ろを振り返り、嬉しそうな様子でトトト…と火燐の元へと向かう。


「ああ、どうにかな。」


「…となると、後はマスターだけか。まさか(オークキングに)負けるなんて事はないよね…?」


「そうだな…ま、いざとなったらオレ達も加勢すりゃ良いだけの話だ。」


「そうだね。」


会話中、美羽は火燐の後方にいながらにして手を振り、近付いて来る翡翠達に小さく手を振る形で応えた。


そして話の最後。

火燐と共に複雑な表情を浮かべ、敬愛する主がいる方を向く。




その凛はと言うと。

自身の相手であるオークキングの苛烈な攻めをひたすら防ぎ、受け流し、(かわ)す事に専念。


倍近い背丈から繰り出される攻撃は1撃1撃が鋭く、重い。

まともに当たれば彼とて無事では済まず、そんなヒリヒリ感…つまり命のやり取りを凛は噛み締めていた。


何故なら最終試験含め、マクスウェルと過ごした日々はあくまでも研鑽(けんさん)が目的。

先程のオーク3体に至っては、とても戦いとは呼べるものではなかったからだ。


本当の。

また初めてとも言える戦闘を凛は肌で感じ、気迫や凄まじさ等を学ぶつもりで(のぞ)んでいるのが真相だ。


そんな栄誉ある(?)初戦闘の相手、オークキング。

彼は集団の先頭にいたのに加え、これまで(つちか)った経験から、真っ先にアイシクルレインの危険性を察知。


走る速度を上げ、(アイシクルレインの)範囲内から真っ先に抜け出し、無傷で済ませた。


そんなオークキングだが、名前にキングが含まれる通りオーク達の王。

彼らを束ね、率いる立場にある。


なのでこの場に()いて自分が1番上だと信じて疑わず、後ろにいる部下達へ一顧(いっこ)だにしない。

むしろ自分の元へ向かって来る凛へ格下の分際で…と怒りの形相に変わり、怒涛の攻撃を仕掛けるとの流れに。


「ブモォォォォォォォォォッ!!」


凛はある程度雰囲気に慣れたのか、防御中心からやや攻めの姿勢へと転向。

オークキングの勢いの乗った斬撃を打刀でギンッと防ぎ、荒れ狂う竜巻の様なラッシュをキンキンキンキン…と打ち返す。


続けての大振りに対しては打刀をやや斜めに傾け、ギィィ…ィンと逸らしてみせたりもする。


「ブォーーー!」


これに納得いかないのはオークキング。


目の前の人間は身体、武器両方が細身。

なのに何故自分と対等に渡り合えるのか。

分からない、本当に分からない。

だがそれ以上に不遜である…とでも言いたげに叫び、バスタードソードを力任せに横へ一閃。


「おっと。」


丁度頭の位置に来た事もあり、凛はしゃがんで回避。

すると普通に避けられた腹いせか。

将又(はたまた)蹴りやすい状況を作ってくれたとでも思ったのだろう。


「ブモゥ!」


コンパクトに纏まった凛に対して行われるは、右足での蹴り上げだった。


「…うわっと!」


金属製の脛当てが着いたそれが迫り来る様に、凛は瞠目(どうもく)

しかし喰らう訳にはいかず、咄嗟(とっさ)に左手の鞘を前に。

それと少々(いびつ)ながら添える形で(こじり)に近い場所に右手を添え、後方へと跳ぶ。


その刹那、ガキィンと金属同士のぶつかる音が。

ただ凛の機転により衝撃は大分緩和され、ダメージはほぼ0。


態勢が悪く、余計に吹き飛ばされこそしたものの、一応は事なきを得た。


「今度はこっちから行くよ!」


そして凛も美羽と同様、マクスウェルと行った手合わせの経験から危なげなく着地。

と同時に勢い良く駆け出し、返り討ちにしてやると言わんばかりに構えるオークキングとの距離を瞬時に詰める。


「はぁっ!」


「ブモッ!」


凛は打刀で。

オークキングは両手に持った大剣(バスタードソード)で、互いに袈裟斬りを放つ。

5秒程(つば)()り合いを演じ、離れたかと思えば次の瞬間には接触。

以降も、互いが互いへ果敢に攻め込んでいく。




ややあって。

大剣と刀が打ち合っては一拍置くを繰り返した後、再びギギギギギギ…と鍔迫り合いをする場面が来訪。

本人達は真面目そのもので、そう遠くない場所にギャラリー━━━美羽達の姿が。


合流を果たした彼女達は、動向を見守りつつ、今後の参考にと凛達の戦いを観察しているとの状況だ。


「そこぉっ!」


鍔迫り合いはオークキングが両手で武器を持っているのに対し、凛は右手だけ。

つまり左手は空いている(フリーな)状態だ。


また2回目ともあって、凛の心に芽生えた少しの余裕から出た行動。

左手に持つ鞘を器用に逆手から順手へ持ち替え、力いっぱいオークキングの腹へ突き立てた。


「グブゥゥッ!」


オークキングは動きやすくする目的で軽装を身に纏っているとは言え、それでも全てが鉄製。


特に彼は群れの1番上を理由に、最も良質なものを選択。

また、場所が場所なので他の箇所よりも分厚くもなっている。


にも関わらず、凛の突いた鞘から聞こえるはドゴッとの鈍い音。

鉄板越しにオークキングの腹へめり込ませ、彼を20メートル以上も吹き飛ばしてしまう。


これに驚いたのは美羽達だ。

勿論オークキングも虚を突かれた事に違いはないのだろうが、自分達にはとても真似出来ない芸当。

4人が4人して『えーーーーーっ!?』と驚愕に満ちた顔で、オークキングが放物線を描きながら飛んで行く光景を眺めていた。(雫だけはおーっと感心)




オークキングは一旦着地こそするも、先程のショックが尾を引いたのだろう。

蹈鞴(たたら)を踏み、足の(もつ)れから尻餅を突いていた。


更に10秒近く呆け、そこからようやく立ち上がろうとするのだが、思う様に足腰へ力が入らず、体の芯へズキリと響く鈍い痛み。

結果、立ち上がるまでに結構な時間を要し、しかも真っ直ぐではなくよろよろ。


息はふっふっふっふっ…と小刻み。

顔は苦痛から来る渋面(じゅうめん)で、腹部に左手を当てているとの観点から、どうやら先は長くなさそうなのが見て取れる。


何より、今の攻防だけで格の違いが分かってしまった。

互いに疲れた様子こそ(うかが)えないものの、相手は自分以上に落ち着いており、むしろ泰然(たいぜん)とした足取りで歩み寄る余裕っぷり。


このまま続けても倒せるビジョンが全く見出だせないでいる。


そんな凛にオークキングは恐怖した。

恐怖してしまった。


しかし自分は王。

こんなところで終わって良い存在ではない。


何より、オークの頂点としての矜持(プライド)もある。


「グ…ブ、ブォォォォォオオオオオ!!」


オークキングは自らを鼓舞(こぶ)


凛に抱いた恐れを気合いで掻き消し、一気に肉薄。

両手で持ち上げた大剣を、精一杯振り下ろした。


だが凛は軽い笑みを浮かべるだけ。

微動だにしない彼の体を大剣が通り抜け、そのままズガァァァァンと地面に叩き付けた。


()った。

(見た目)極上の()を失うのは非常に勿体なくはあるが、命あっての物種(ものだね)

せめて残りを━━━


そうオークキングが考えた矢先。

凛の輪郭がボヤけ、まるで最初から何もなかったかの様に彼の体が霧散した。


突然の目標消失に、オークキングは目をパチクリ。

今まで戦っていた者がいきなりいなくなったのだから、仕方ないと言えば仕方ないのかも知れない。


「残像だよ。」


そんな彼の耳に届けられた、凛の声。

完全に油断していたオークキングは「ブゥ!?」と体を強張(こわぼ)らせ、恐る恐る聞こえた方向━━━右側に顔を向けてみる。


「…と言っても分かる訳ないか。」


視界に映る凛はピンピンとしており、目が合った途端(ゆっくりではあるが)動き出す始末。

瞬時に不味(まず)いと判断し、即座に応戦の構えを取ろうとするも、それは叶わない。


大剣が地面に深く刺さっており、いくら力を込めようがビクともしなかったからだ。

ここに来て、全力で叩き付けた弊害が現れたとも取れる。


端から見ると滑稽(コント)でしかないが、オークキング本人(本豚?)は必死そのもの。

凛が近付いて来ても尚、ふんっ!ふんーーー!と引き抜こうと躍起になる。


ただ、その努力も虚しくタイムアップ。

未だオークキングは大剣に意識が向いており、少しではあるが低い態勢。

見方によっては頭を垂れている風にも感じられ、凛からすれば丁度良い高さとも。


「ごめんね。僕はやられる訳にはいかないんだ。」


「ブヒッ…。」


凛はやや申し訳なさげな顔で呟き、呆気に取られる彼の首を両腕ごと斬り落とす。




ドドォォォォン


首と胴(ついでに両腕も)が分かたれたオークキングが倒れるのを背に、凛が鞘へ刀を収める。


「ふぅ…初めて本当の戦闘をしてみたけど…特に何とも(感じ)ないな。この調子ならこれからも…ん?でもそれって━━━」


そんな彼が安堵の後、神妙な面持ちで呟こうとした内容。

それは人型の魔物を倒した事に対する罪悪感や忌避感。

嫌悪感についてだったりする。


凛は里香(ついでに白神も)の手で、地球にいた時とは比べ物にならない程パワーアップ。

その際、彼女の気遣いで精神耐性(メンタル面)も一緒に上げられていた。


しかしその(むね)は凛本人に知らされておらず、人に近い見た目。

要は、人型の魔物ことオークキングへ今しがた止めを刺した事に対し、何も感じない。

冷酷非道な人間になってしまったのだろうかと危惧(きぐ)し始めたところだ。


「マスターーー!」


「おーい!凛ー!」


「…!」


そこへ寄せられた、美羽や火燐の声。

凛は自分の元へ集まろうとする彼女達の存在に気付き、意識を其方(そちら)へ向けるのだった。

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