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ゆるふわふぁんたじあ(改訂版)  作者: 天空桜
プロローグ

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9話 1日目

話は冒頭(0話)へ。


「んー…しかしドラゴンか。こんなに見晴らしの良い、更に言えば人が住んでる集落の近くでも姿を見せるものなんだねー。」


ドラゴンと思われる者が狩りを行うシーンを、まざまざと見せ付けられた1行。


そして「落ち着かなさそう」と凛が話す通り。

街と違う方向とは言え、こうも簡単にドラゴン(空を飛ぶ魔物)が姿を見せる点で疑問に思うのは当然だし、問題でもある。

余韻に浸り、遠くを見る仕草を取る彼に、美羽達は返事こそないものの「確かに」と言いたそうな顔をしていた。


「さて、いつまでもこうやって立ったままじゃ先に進まないとして…ナビ。ここって、リルアースで言うところのどの辺り?」


《現在、マスター方がいらっしゃいますのは、大陸北西部に位置するアウドニア王国。その最南東端に位置する街サルーンから、800メートル程南下した場所となります。

ここから東、或いは北東へ進みますと、ダライド帝国。反対の西、並びに南西方面は商業国家ミョルソドへと繋がります。》


大陸の北西にあるアウドニア王国…その最も南南東に位置し、ダライド帝国との国境に程近いところにある街、サルーン。

里香の転移魔法により、そのサルーンから少し南へ離れた平原へと凛達は移動していた。


今回はタイミング悪く(?)ドラゴンらしき者が森から飛来して来たが、この様なケースは(まれ)

たまたま餌を求めに平原へやって来たのか、はたまた彼(彼女?)なりに凛達を歓迎したのかは不明だ。


「あそこに見えるのがサルーンで、王国にある街。東か北東に向かうとダライド帝国。逆なら商業国家ミョルソドに繋がる、と。それでさっきのドラゴンは、この…死滅の森から来たって訳か。」


《はい。仰る通りです》


復唱しながら後ろを向く凛を、ナビが肯定。

これらの情報に、美羽達が「へー」と相槌を打つ。


「成程ね。ナビ、僕達の強さって、この世界だとどれ位?」


魔素量(エネルギー)の強さで申しますと、マスターは黒鉄(アダマンタイト)級上位。美羽様は魔銀(ミスリル)級上位、火燐様方は(ブロンズ)級になるかと。》


「へー…ん?黒鉄って事は…。」


《はい。既に、マスターは冒険者組合(ギルド)の枠組みに当てはめた場合、最高ランクの強さに該当するかと思われます。》


「そ、そうなんだ…火燐達はさ…。」


『…!』


「僕達に会うまでの1ヶ月間、どんな訓練をしていたの?」


視線を少し上向きにし、ナビと会話をやり取りする凛。

火燐達はそれをどこか他人事風に見ており、しかしいきなり話を振られた為に緊張した面持ちへ。




「あー、オレ…じゃなかった。私達は、1ヶ月間。ひたすら魔力を扱う訓練をした…いました。」


先程はうっかり素で話してしまっていたが、火燐は里香(創造神)やイフリートから丁寧に。

それはもう丁寧な対応を心掛けなさいと強く念押しされたのを今になって思い出し、ぎこちないながらも敬語で答えようとする。


「魔力訓練だけだったんだ。それだと、精神的にちょっと参るかも…。」


「そう!そうなんだよ!」


思いもよらぬ同意に、興奮を覚えた火燐。

カッと目を見開き、翡翠が「あ、ちょっ!」と制止するよりも早く凛の両肩をガッと掴んだ。


「毎日、毎日…ちまちまちまちまと!オレは!魔法よりも!武器を振り回す方が性に合ってるってのによぉ!!」


続けて、驚く凛を一切気に掛けず激しく揺さぶる彼女。

これまでの鬱憤を晴らすとも取れる行動に、翡翠が「あちゃー、間に合わなかったかー」と呟き、フォローする目的で伸ばした左手を後頭部にやる。


「あ、あたしは楽しかったですよ!」


「私も。」


「私もです…。」


「「「と言うか火燐(ちゃん)、いい加減凛様から手を離す。(して!)(して下さい…。)」」」


「…あ。」


翡翠、雫、楓が意見を述べる間。

火燐は視線こそ彼女らへ向けたままだが、依然として凛をシェイク。

3人によるツッコミでようやく我に返り、動きを止めるとの運びに。


因みに、同じ魔力訓練と言っても、イフリートが行ったのは「まだやれる」だの、「それが本気か?」だの、「お前ならもっと出来るはずだ」だのと。

どこの熱血教師や教官だよと思わせる様な指南のみ。

アドバイスらしいアドバイスは特になく、ひたすら発破を掛けて追い込む…的な感じ。


故に、4人の中で1番魔力の扱いが下手なのが彼女で、勢いと力押しになりがち。

残る3人はマイペースに修行。

教導役であるウンディーネ、シルフ、ノームから手取り足取り教えられ、アドバイスもしっかり貰い、特に嫌だとは思っていなかったりする。




「あぁ~、目が回るぅ~。」


3人からのストップ(ツッコミ)が元で、火燐の揺さぶりから開放された凛。

ふらふらとした足取りから察するに、恐らく翡翠達のやり取りは聞こえていなかったのではと考えられる。


「ごめん…なさい。オレ…いえ私、凛様に対し、なんて事を…。」


そんな彼を前に、顔を真っ青にした火燐が深くお辞儀。


火燐の中で、片親であるイフリートは非常に怖い存在。

そのイフリートが下手に出、丁寧に接する里香(創造神)は更に恐ろしく、彼女の弟である凛も近しい感じなのではと認識。


しかし(ふた)を開けてみれば彼は気さくな上、こちらに気を配ってくれる優しい性格の持ち主。

なのでつい本音をぶつけてしまい、罰せられるとの思いから得も言われぬ恐怖を抱いたのだろう。


「…もー、肩を掴まれたと思ったらいきなり揺さぶるんだもん。びっくりしちゃったよー。」


ブルブルブル…と左右へ勢い良く(かぶり)を振り、意識を強制的に正常へ戻す凛。


「本当に━━━」


「火燐。」


その彼の呼び掛けに、(こうべ)を垂れた火燐がビクッと反応。

だよな、と諦める様にして目を閉じる。


「里香お姉ちゃんは火燐達を部下だ…なんて言ってたけど、僕はこれから一緒に行動する『仲間』だとか、『家族』みたいなものだと思ってる。実際、僕達は同じ日に生を受けた訳だしね。」


凛の言葉を火燐。

そして美羽達は意外だったり真面目な顔で受け止め、美羽に至っては小さな声で「家族…」と漏らす程だった。


「だから凛様なんて固い呼び方じゃなく、普通に凛って呼んで欲しいな。ついでに、砕けた感じで接して貰えると尚ありがたいかも。勿論火燐だけじゃなく、美羽、雫、翡翠、楓もだよ?」


「マスター…分かった!そうさせて貰うね♪」


凛の思いもよらない提案に、胸の辺りがじんわりと温かくなった美羽が両手を胸に当てて笑顔で、


「凛…分かったぜ!」


上体を戻し、鼻の下に右手の人差し指を横へ置いた火燐がへへっと笑い、


「凛。分かった。」


雫は相変わらず眠そうな顔でこくこくと頷く。


「凛くん、分かったよー!」


翡翠は元気良くはいはーいと真っ直ぐ右手を挙げ、


「凛君、分かりました…。」


両手を前に置いた楓が、静かに頭を下げた。




「うんうん。あ、火燐達は魔力訓練が主だったんだよね?」


何度か頷いた後、凛は思い出した様にして尋ねる。


「あ、ああ…それがどうかしたのか?」


「さっき火燐が振り回すって言ってたからさ。武器の説明は受けたのかなーって思って。」


「あー、それか。オレはイフリート様から、軽く武器の種類については聞いた。だからこう…大剣で相手を思いっきりぶった斬るのが楽しみで仕方ねぇんだ!」


「私もウンディーネ様から聞いてる。私は魔法が好き。だから、魔法の効果や威力を上げてくれる杖があると嬉しい。」


「あたしはシルフ様だねー。使うとしたら弓かな?」


「私もノーム様から聞いてます。私も雫ちゃんと同じく杖を使いたいのですが、私は攻撃よりも補助とか回復の方を得意としてますね…。」


若干危ない発言をした者が1名程いたものの。

それぞれジェスチャーを交えながらの答えに、凛は頷きで(もっ)て応じた。


「おー、結構好みが分かれるもんだね…って事は、火燐が前衛で後衛は雫と翡翠と楓でバランスは良い訳か。僕と美羽は遊撃ポジションだし、そこに全員魔法が使えるのを加味すると…。」


「凛?いきなりブツブツ言い出して…どうかしたのか?」


「ん?…ああ、ごめん。戦闘になった時の配置の事を考えてたんだ。」


「戦闘、戦闘ねぇ…っつっても(って言っても)よ、俺ら全員丸腰だぜ?魔法ありきってん(と言う)なら話は別だが、このままだとなぁ…。」


「今は手元にないけど、僕と美羽は一応武器を持ってるよ。」


「へー。なら、俺らもどっかで調達しないとだな。」


「それなんだけど、簡単なので良ければすぐにでも用意出来るよ。4人はどう━━━」


『欲しい(です)!!』


『すぐに用意』の辺りで火燐達は目をクワッと見開き、『4人』と言われた瞬間凛へ急接近。

あまりの速さに美羽は目を丸くし、凛は軽く引いた…と言えばお分かり頂けるだろうか。


ともあれ、火燐達的に2人を思い遣れる余裕はなく。

今すぐにでも現物が見たいとの考えから更に(にじ)り寄り、逆に凛の方が距離を取ろうとする謎の構図に。


「わ、分かった…念の為、危ないかも知れないからあくまでも念の為、少し離れててね。それじゃ、ナビー!」


《はい。大剣、弓、杖をア()ティ()ーシ()ン致します。》


興奮した様子の火燐達をどうどう(ステイステイ)と宥め、ついでに身の安全も兼ねて少し距離を置く凛。

ナビ越しにアクティベーションを発動した直後、前に(かざ)した両手が白い光に包まれた。




アクティベーション。

早い話が、量産を前提に品質を一定にまで落とし込んだスキルだ。


万物創造は都度集中する手順が必要。

()つ、(双剣等のセット品を含む)1点ずつしか作成出来ないとの欠点(デメリット)がある事が判明。

ワンオフ、或いは高品質な物を創る際には便利だが、そこそこのクオリティで良いからとにかく量が欲しい時には不向きとも言える。


そこに気付いた凛は、自主訓練中にアクティベーションを創造。

テスト目的で様々なもの(主に日用品や食料品)を用意し、作成後無限収納へ入れるを繰り返した。


故に、現時点に()いて凛と美羽。

2人だけであれば、1ヶ月程度であれば生活するのに困らないだけの物資が、既に無限収納内へ収められていたりする。


話は戻り、凛がアクティベーションを発動させてから20秒程が経過。

白い光は消え、代わりに鈍色(にびいろ)の大剣、弓、杖が、宙に浮いた状態で火燐、雫、翡翠、楓の眼前に出現。


『………。』


4本の武器は尚も空中でふよふよと浮き続け、火燐達は目が点。

しかも、武器の動きに合わせて視点を上下させるとのオマケ付きだ。


「無骨なデザインでごめんね?きちんとしたのは後日作るからさ、ひとまずはそれで我慢して貰えるかな。」


「凛お前…いや、まずはありがとうだな。早速使わせて貰うぜ。」


「ありがと。」


「凛くん、ありがとー!」


「凛君、ありがとうございます…。」


武器を手に取った火燐達がお礼を述べる。

凛はやや照れ臭そうに「いえいえ」と返し、改めて森の方を見やる。


「…さて、こういう(冒険が始まった)時って、ゴブリンとかオークを退治…みたいなのがお約束(テンプレ)だと思うんだけど…ナビ。この世界にゴブリンやオークって存在する?」


《はい。どちらも存在します。》


「あ、いたら良いな的な感じで言ってみたんだけど、本当にいるんだ…。」


《ゴブリンとオークはどちらも食欲、及び繁殖欲が旺盛。見付け次第、早急に討伐するがルールとなっております。因みに、オークの肉は美味とされています。》


「早急に討伐、繁殖の為に女性が狙われるからか…って言うかオークの肉、食べれるんだ…。」


《はい。ゴブリン、オーク両名に関してですが、それぞれの集落がこの付近にございます。》


「へー、意外に近かっ━━━」


《尚、そのオーク族の集落から1キロ程離れた地点にて、現在戦闘が行われている模様。》


「うんうん…戦闘!?それって、下手すると誰かがオークに襲われてるって事なんじゃ!?」


《はい。どうやら、オークでない方が劣勢の様です。》


「ナビ、浮かれてた僕も悪いけど、次からはなるべく早く教えて欲しい…って、こんな事してる場合じゃなかった!恐らく劣勢側が困ってるだろうし、急いで助けに向かわなきゃ!!」


良くも悪くもマイペース(凛第一主義)なナビからの(しら)せ。

これに凛は慌て、こうしてはいられないとばかりに急いで駆け出す。

否、駆け出そうとした。


『…?』


しかし状況を飲み込めない火燐達はキョトン顔。

美羽は美羽で、主に付いて行くべきか、火燐達と共に残るべきか、将又(はたまた)事情を説明すべきなのか分からず、困惑。


なのでダッシュしたばかりにも関わらず、凛は即急ブレーキで止まる。


「っととと…そういえば、ナビの言葉って火燐達には伝わらないんだった。美羽、僕は一足先に救援へ向かうから、火燐達と一緒に来て貰える?同じ方角に向かってくれれば大丈夫だから。」


「分かった!」


「そのついでに、ナビから聞いた内容を伝えてくれると助かるかも。それじゃ、僕は行くね!」


「うん。マスター、気を付けてね。」


美羽の激励を背に凛は再び駆け出し、今度は止まる事なく全力疾走。

ひたすら前へ前へと真っ直ぐ走って行った。




「流石マスター。もう見えなくなっちゃったよ。」


わずか十数秒で凛が見えなくなり、美羽は少しだけ寂しそうな様相で振っていた右手を下ろす。


「…だな。美羽、凛はかなり焦っていたみたいだが…何かあったのか?」


「走りながら説明するよ。えっとね━━━」


続けて、未だ事情が飲み込めない火燐から声を掛けられた彼女。

凛の後を追いつつ、火燐らに顛末(てんまつ)を伝える。




「見えた!」


程なくして、目的地付近に到着した凛。

肉眼ではっきりと状況を捉える事が出来た。


彼の視界には、()り傷や打撲等でかなりボロボロとなった少女が、息を荒げながら3体のオークと対峙。

少女は白い翼を生やし、頭の上には白い棒状のナニカ(?)が浮いている、所謂(いわゆる)人間とは違う種族━━━亜人であると推察。


その彼女のすぐ後ろにある木の根元。

頭から血を流した黒髪の少女が、仰向(あおむ)けで倒れていると言う構図だ。


対するオーク側。

しっかりと両足で立つ3体とは別に、2体が血だらけで地面に転がっているものの、全く気にしていない様子。


「けど、かなり不味い状況だ…急がないと!」


片や苦悶(くもん)が入り混じった必死の形相、片や薄ら笑いと。

どちらを助けるか考えるまでもないと判断した凛は、更に速度を上げ、現場へと急行するのだった。

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