10話
その後、里香は凛達を大部屋の中心へ招き、先に待っていた瑠璃と合流。
彼女との再会を喜びつつ、親交も深めた。(特に凛が)
「それでウェル爺、試験どうだった?」
「無論、合格ですぞ。」
「流石凛ちゃんね、おめでと。」
「ありがとう、お姉ちゃん。」
ややあって、マクスウェル、それと姉から満面の笑みを向けられる凛。
お礼を述べつつ、満更でもなさそうにする。
「うんうん。これで凛ちゃんも外へ出れる様になった訳か。だったら…。」
パチン
「…心置きなくこの子達の紹介も出来るわね。」
満足げに頷いた里香が指を鳴らすのを合図に、魔法陣が出現。
次の瞬間、魔法陣の上に見知らぬ人々が立っていた。
「え…?」
現れたのは8名ではあるのだが、前の4名はフード付きのくすんだ灰色のローブを着用。
その後ろにいる残り4名は何も身に着けてはおらず、左から順に筋骨隆々な男性。
垂れ目で、青く長い三つ編みのおっとりした女性。
緑髪を2本のお下げにした、活発そうな少女。
とんがり帽子を被り、立派な白髭を貯えたお爺さん。
より詳細に語るなら、地面から浮き、上半身を象った燃え盛る赤い炎。
同じく宙に浮き、体全体が水分で出来ているのか透明な水色をした人魚。
アゲハ蝶に似た羽を背中に生やし、(凛から見て)目線の高さで留まっていたかと思えば元気に飛び回る。
白○姫の小人を思わせる風貌、且つ見上げる形でこちらを窺っている…との但し書きが付くが。
身長も180センチ、160センチ、30センチ、50センチと見事にバラバラ。
凛と美羽が彼らを見て固まるのも仕方ないと言える。
そんな後ろ4人(?)とは異なり、前にいるローブ姿の4人はいずれもフードを下ろした少女の様だった。
1番左にいる少女は、年の頃が18歳位…だろうか。
女性とも取れる彼女の身長は173センチとやや大きく、燃える様な赤い髪色を背中まで伸ばし、揺らめく炎みたいな髪型。
赤く、ギラついた目なのが印象的だ。
その隣にいる少女は、10〜12歳程度の様に見える。或いは、もっと幼いとも。
身長146センチと小柄で、少し薄めの水色の髪を、真っ直ぐショートボブにした髪型。
瞳は透き通った空色。
ただ半分程しか開いておらず、眠そうに感じられるが特徴。
その隣にいる少女は、恐らく17歳頃。
身長158センチで、綺麗なエメラルドグリーンの髪を腰まで真っ直ぐ伸ばし、それを白いリボンでポニーテールにして纏めている。
瞳は濃いめの黄緑色、パッチリと開いている事から明るい性格そうなのが伝わって来る。
1番右にいる少女は、緑髪の子と同じか1つ下位。
身長161センチで、やや薄茶色の髪色をミディアムショートに真っ直ぐ伸ばした髪型。
凛同様、日本人に良くある茶色がかった黒い瞳を持ち、下がった眉尻から少し儚げに見える。
「凛ちゃん、美羽ちゃん。あの子達の紹介をするわね。まずは後ろにいる4体で、左から…。」
「我はイフリート。」
炎そのものであるイフリートは腕組みをし、メラメラと体を揺らめかせ、
「私はウンディーネ♪」
体が水分で構成されたウンディーネが、左目を閉じる形でウインク。
「ボクはシルフだよーっ!」
緑髪のお下げっ子ことシルフはその場で一回転し、
「僕はノーム…。」
小人の見た目をしたノームがやあ、と右手を挙げる。
「イフリート達はウェル爺の部下で、四大精霊とも呼ばれているわ。それぞれ火・水・風・土を司る、『大精霊』とのポジションね。ウェル爺に至っては、彼らを統べる『精霊王』なんて言われたりするわね。」
「マクスウェル様が精霊王…。」
今更ながら凄い存在だと知り、凛は感動した表情でマクスウェルを見やる。
当の本人は褒められて嬉しいのか、ほっほっほっと朗らかに笑う。
「ええ。私はウェル爺なんて呼んでるけど、本当はとてもとても偉い存在なのよ?」
「ほ…?そ、創造神様。儂の事は…。」
そこから一転し、慌てた様子で里香の言葉を遮ろうとする。
普段褒められる事がなく、また皆に見られているが故に恥ずかしくなっての行動なのだろう。
「あら、本当の話じゃない。それによく私の手伝いをしてくれるし、とても感謝しているのよ?ウェル爺、いつもありがとう。」
「む、むぅ…創造神様のそう言うところ、本当にズルいのじゃ…。」
「あら、褒め言葉として受け取っておくわね♪」
渋い顔のマクスウェルとは対照的に、里香がコロコロと笑う。
それを合図に、マクスウェルと1番背の高い赤髪の少女。
それと最も低い水色髪の少女を除く全員から笑いが起きた。
「あの…。」
一向に話が進まないと思ったのか。
或いはつまらなく感じたのかも知れない。(畏れ多くて実際には口に出せないとの注釈が付くが)
ともあれ、赤髪の少女が1歩前に進み、何か言いたそうにしている事に里香が気付いた。
「あ、ごめんなさい。残りの子達の紹介に移らせて貰うわね。」
「あ、うん。分かった。」
「前に凛ちゃんと会った後、私はイフリート達のところへ向かったの。そこで生まれたのが彼女達。それからあの子達はあの子達で1ヶ月間、イフリート達と訓練していたって訳。」
「へー…ん?生まれた?」
「私とイフリート達の魔力…つまり美羽ちゃんみたいな感じね。タイミング的に、妹との扱いになるのかしら?」
ローブ姿の少女達は、里香がイフリート達とで魔力を半分ずつ出し合い、それが形作られて出来た存在。
合点がいった凛はやっぱり…と呟き、美羽はわーーい、妹がこんなに沢山ー♪と喜びを全身で表現する。
「それで、この子達は凛ちゃんの部下って扱いにして、貴方に託そうと思うの。」
「…え?」
「そんな訳だから、名前を考えて欲しいのよ。今、ここで。」
「えっ、今!?」
凛はどこかで聞いた気もするセリフに若干の引っ掛かりを覚え、しかし時間的余裕がない事に内心焦りを覚える。
(…なんか、すごく見られてる。部下って形で仲間になるのはありがたいんだけど、前もって伝えて欲しかったかなぁ…。)
視線を里香から少女達へ移せば、4人中4人全員がこちらをじーーーっと凝視。
それに圧倒されつつ、凛は何か良さげな名前はないかと必死に模索。
「えーーー…っと、赤い髪の子が火燐。水色の子は雫。緑の子は翡翠。茶色の子は楓…で、どう、かな?」
恐る恐る告げた内容に少女達は互いを見合い、目を瞑る等する。
これに名付けた側は気が気でなく、内心で「だ、ダメだったか?」とドキドキ。
「…おう。オレは良いと思うぜ!…じゃなかった、私は良いと思いますよ。」
「ん…私もそれで良い…です。」
「あたしも良いでーっす!」
「はい…私もそれでお願いします…。」
しかし赤髪の少女こと火燐がニヤリと笑い、雫は小さいながらもこくこくと首肯。
翡翠が元気良く右手を挙げ、会釈を交えての楓の答えに、凛は「良かった…」と安堵する。
「火燐、雫、翡翠、楓、それに美羽。大変だとは思いますが、これから宜しくお願いします。」
凛は改めて火燐達に美羽。
それと四大精霊へ向き直り、深くお辞儀。
程なくして、美羽達5人から「よろしくお願いします」と返された。
「うむ。火燐を宜しく頼むぞ。」
「雫、凛様の言う事をきちんと守るのですよ?」
「翡翠ちゃん、元気に頑張るんだよー!」
「楓、ファイト…。」
イフリート達はイフリート達で頷きを交えたりして火燐達へ激励し、彼女らはそれに応えていった。
「取り敢えず、ここでやる事は…あ、そうだった…はい、凛ちゃん。」
よいしょと言って里香が無限収納から取り出したのは、50センチ四方はある大きな金の塊。
その金塊は、心做しかほんのり赤みを帯びている様にも見える。
「ちょちょちょ、いきなり何!?って…え?全然重くない?見た目金っぽいのに?」
それをいきなり渡された凛はパニック。
受け取り時に軽くよろけこそしたものの、思っていたよりもずっと軽かった為、更に困惑度が増した。
「一応は魔法金属と呼ばれてるものだからね。普通の金よりずっと軽いわよ。」
いくら軽いとは言え、これだけの質量だ。
一般の人の場合、普通に腰をやってしまいそうな位には重い。
凛は「へー」と平気そうな顔をしていたが、楽に持てる=相応のスペックを保有。
「魔法金属?」
彼は目の前の金属に夢中で気付いていないみたいだが、1ヶ月間鍛えられた成果が今である事に繋がる。
「そ。」
「それに金って事は…オリハルコンとか?」
「オリハルコンねー。あれも金色に光ってはいるんだけど、厳密には真鍮…つまり銅が変化したものなのよ。」
真鍮って、銅と亜鉛の合金だからね。
へー、なんてやり取りをする姉弟。
「そうだったんだ…ならこれは?」
「ヒヒイロカネ。」
改めて問う凛に、里香はあっけらかんと言い放つのだった。




