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推しのアイドルに脅されました〜実は男で陰陽師なんて聞いてない!~   作者: KUMANO
三章 劇的ビフォアアフター!

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ヘアーサロン『FmoL(フェムトモル)』


 なぜ俺が生徒たちに「誰!?」と言われることになってしまったのか。

 時は数日ほど遡る。


「……と、言うことで、この在保(あきやす)君を、超イケメンに仕立てて欲しいんだ!」

「よ、よろしくお願いします!」


 ツナと一緒にやってきたのは、都内にある超オシャレな美容院。

 これまで適当な1000円カットで済ませていた俺にとっては、未知の領域だ。


「……ハァ……ど深夜にいきなり電話してきたかと思ったら……」

「まぁまぁいいじゃん! オレときいちゃんの仲でしょ!」

「俺は仲良くした覚えはねぇんだがな」

「またまた〜!」


 いつも通りのニッコニコ笑顔をしているツナとは打って変わって、心底めんどくさそうな、それでいてうんざりした表情でこちら側を睨んでいる。30代くらいの、今時なツーブロックの髪型にセットされている白髪が特徴的な、俺なんかが霞んで見えるレベルに超絶オシャレな風貌をしたイケメン男性。


 ヘアーサロン『FmoL(フェムトモル)』のオーナーでもあり、人気No,1スタイリスト『輝糸(きいと)


 聞けばこの人、(ちまた)ではとんでもない人気があるという美容師で、ツナには及ばないものの、SNS各媒体でかなりのフォロワー数を抱えている。毎月の予約枠はわずか数分で埋まり、『今、最も予約が取れない美容師』として有名だそうだ。

 

 そんな人が、今日、俺のために、わざわざ貴重な休日を返上して、髪を整えてくれるらしい。

 

 ……いや恐れ多すぎる!!!


 こんな芋臭いドドドド隠キャの俺に!! 

 いや確かに「ツナの知り合いに美容師さんがいたら教えて欲しい」と言ったのは俺だけど! こんなVIPが出てくるとは思わないじゃん!!


「はぁ〜〜〜ったく……、ほら、こちらにドウゾ」

「す、すみません……」


 輝糸(きいと)さんはクソデカいため息をつきつつも、空いている席に通してくれた。

 曇り一つない大きな鏡の前に座ると、少し肌質がマシになったとはいえ、まだまだ地味で芋臭い隠キャの男がぽつんと映り込んでいる。


 うぅ……周りの視線が痛い……。

 

 鏡の端には、「なんであんな奴が……?」と言いたげな目で、こちらの様子を窺っている他のお客さんや、アシスタントの美容師さんたちの姿が見える。


 これじゃあただの公開処刑だ……。

 

「……ふうん」

「……?」


 後ろで適当に結っていた髪を(ほど)くと、輝糸(きいと)さんは俺の伸び切った髪を一房ほど指先で掬い上げ、観察するように眺めている。

 

「若干傷んでるけど……、土台は悪くなさそうだ」

「土台……?」

「顔の骨格的に……、切りすぎると逆にバランスが崩れそうだな……それなら……」


 それから櫛で髪を()きながら、俺の輪郭や頭の形を様々な角度から確認し、ボソボソと独り言を呟き始めた。何を言っているのかはよく聞き取れないけど、輝糸(きいと)さんの脳内では、すでに俺の新しい髪型の設計図が完成しつつあるのだろう。


 どうなるか楽しみな反面、果たして俺なんかに似合う髪型があるのか。ちょっと不安な気持ちも残っている。


「……じゃあオレ、動画の編集残ってるから帰るね!」

「え!?」


 普段こんなオシャレな場所に来ないのもあってそわそわとしていると、ツナがとんでもないことを言い出した。


 ただでさえ場違いな所に連れてこられてるのに、更に置いていかれるなんて冗談じゃない!

 

「平気平気! あとはきいちゃんに任せとけばオールオッケーだから!」

「せ、せめてカットが終わるまで……!」

「じゃ、きいちゃんあとはよろしくね! 終わったら写真送ってね〜!」

「ま、待って……! ツナっ……!」


 俺の悲痛な懇願も虚しく、ツナは相変わらず眩しいほどの爽やかな笑顔を浮かべ、身バレ防止のキャップとサングラスを素早く装着すると、風のように店を出て行ってしまった。




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