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推しのアイドルが実は男で陰陽師でした 〜陰陽道二大宗家の末裔たちが、復活した妖を呪術(物理)でシバくまで〜  作者: KUMANO


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3/6

払えません……

 舞台上で“推し”に突如襲いかかった、俺の“彼女”だったバケモノは、美しい顔から毛が生え獣のように変形させ、綺麗に整えられた爪は鋭く伸び、腰からは9つの尻尾が生えていた。

 

「お前の“彼女”になりすましていた化け狐は、このHARUHI様に襲いかかって来たんだぞ?」


 その姿はまるで、昔話に出てくる、あの狐の妖怪そのものだった。


「なんとか俺の華麗な拳と足捌きで撃退は出来たものの……」


 けれども俺の“推し”HARUHIは、そんなバケモノの襲撃に遭っても、決して歌うのをやめなかった。

 

 まるで振り付けの一部のように舞いながら、狐のバケモノに華麗なサマーソルトやドロップキックを打ち込んだ。

 

 バケモノの懐を思い切り蹴り上げて、そのまま体を一回転させ、照明を全身に浴びながら舞い上がるその姿。


 俺を含めた観客たちは、ペンライトを振るのも忘れ、ただ息を呑んで見惚れていた。

 

 最後には決め台詞と共に、バケモノの顔面を右ストレートで殴り飛ばした時は、会場全体が最高潮の盛り上がりを見せていた。


 演出の一つと言われても、何も違和感はない。

 

 実際、HARUHIのライブを見に来ていた他の観客たちは、みんなHARUHIのかっこよさに湧き立っていて、誰も異常事態であることに気付いてはいなかった。


「おかげさまで衣装はボロボロ、いくつかの機材もお釈迦(しゃか)になっちまった……」


 でもあの狐のバケモノは、確かな傷痕も残していった。

 HARUHIが身につけている朱色のふりふり衣装は汚れ、破れている箇所もある。


 狐のバケモノが暴れまくったせいで、照明などの機材も、いくつか破損していた。

 

「衣装、機材、その他諸々発生した損害賠償(そんがいばいしょう)……」


 HARUHIは何も言えずに俯いている俺の顎を掴むと、顔を強引にあげさせた。

 そして目を背けることもできない距離の中で煙草の煙をふっと、俺の顔に吹きかけた。

 煙は、俺がかけているメガネを通り越し、目に沁みて、思わず涙ぐむ。

 

「お前、耳揃えてキッチリ全額支払えるのか?」


 煙で咳き込む暇さえ与えないかのように、真正面から瞳を覗き込まれた。

 メガネ越しから見える“推し”の瞳は、舞台上で見る宝石のようにキラキラと輝く瞳ではなく、底なし沼のように深く、そして冷たかった。


「は、……払えません……」


 俺は視線を逸らすことも出来ず、ただ支払い能力がないことを白状した。



 

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