埋めたのさ
俺はこれまで起こったことを、包み隠さず全て祖母に話した。
HARUHIという可愛いアイドルを推していたこと。
だけど中身は成人男子で陰陽師の家系出身だったこと。
最近やっと人生初の彼女ができたのに、その彼女が狐の妖怪だったこと。
HARUHIに命じられて、今は狐の妖怪を倒すために、式神を発現させるための特訓を受けていること。
俺がずっと一方的に話していたが、祖母は時折相槌を打ちながらも、真摯に話を聞いてくれた。
「……____それで、……今日HARUHIに聞かれたんだ。でも俺はもう……父さんと母さんとは、……連絡とってないし、とる気も正直……」
「……ごめんなさいね……」
「なんでばあちゃんが謝るの?」
「私がもっとしっかりして、教えてやれていれば……お前に苦労をかけさせることもなかったのに……」
「俺は大丈夫だよ!」
物悲しそうな表情をしてしまった祖母を元気づけようと、俺は精一杯笑ってみせた。
正直、祖母にはもっと生きていてほしかったのも事実だ。幼い頃、たった1人だけ、俺の話をしっかりと聞いてくれる唯一の人だったから。
でも今そんなことを言ったところで、祖母は帰ってこない。
「在保」
「何?」
「実はね、そのアイドルの子が言っていた通り……。勘解由小路家には……、勘解由小路を名乗る前からずっと……、伝わっていた道具があるんだ」
「本当!? そ、それは今どこに……!?」
「それがねぇ……、アレだけは捨てられるわけにも、売られるわけにもいかないからね。私が死ぬ直前に、家の近くにある小さな道祖神様の近くに持って行って……埋めたのさ」
「埋めたぁ!?」
「そう、コッソリね」
ばあちゃんすげぇな!
めっちゃ朗らかに笑ってるけど場所によってはがっつり違法だぞ!
「だ、誰かに預けるとかしなかったの?」
「あなたはまだ小さかったし……信用できる身内や仲間はみんな先に死んじまったからねぇ……苦肉の策ってやつよ」
「……そ、そっか……」
「私がいなくなって……売られたり処分されるくらいなら……、その時が来るまでは、安全な所に埋めといた方がいいと思ってね」
「そ、それにしても……思い切ったね……」
「実際に使用されていた当時は大事な逸品だったらしいけれど、時が経って、役目を終えてしまえば、ガラクタ同然だからね。……悲しいけれど」
確かに……。
俺の父親は、祖母が亡くなってすぐに実家の遺産を整理し、お金になりそうな骨董品はすべて売り払い、値がつかないと判断したものはすべて廃棄処分にしていた。
損得勘定だけで動くあの父親なら、歴史的価値のある道具だろうと容赦なくゴミ箱に放り込んでいただろう。
そう考えれば、おばあちゃんの選択は英断だったんだろう。
「……分かった! ありがとうばあちゃん!」
でも、これで活路が見えてきた。
その道具を回収すれば、俺も式神を発現することができるかもしれない!
「さっき、家の近くの道祖神様って言ったよね。それ、具体的にどの辺……」
「在保」
「え?」
俺が場所の詳細を聞き出そうとした瞬間。
祖母は俺の腕を再び強く握りしめ、それまでの朗らかな笑顔から、見たこともないほど真剣な表情へと変わった。
「これから先、何を知っても、何があったとしても、決して挫けちゃダメよ」
「え? どうしたの? いきなり……」
尋ねようとしたが、俺の視界はだんだんと白く、急速にぼやけ始めていく。
そろそろ、目が覚めてしまうんだ。
俺は直感的にそれを悟った。
「HARUHIちゃんだったかしら? あの子、とってもいい子ねぇ。私も一度話を……」
「ま、待ってばあちゃ……!!」




