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推しのアイドルに脅されました〜実は男で陰陽師なんて聞いてない!~   作者: KUMANO
二章 新曲リリース記念イベント

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式神


「……____式神の発現に必要なのは、『依代(よりしろ)』と『言霊(ことだま)』だ」

「依代……言霊……?」

「依代になるものは基本、木製や紙製の人形(ヒトガタ)だったり……、藁人形を使ったり、土器(かわらけ)を使用する場合もある。……その辺は人によって様々だ」


 そう説明しているHARUHIのデスクの上には、禍々しい形をした依代がたくさん並べられている。


 紙製の人形(ヒトガタ)はよく神社でも見かけるからまだいいとして……、土器(かわらけ)は手作り感満載で、年季も入っているのか、所々ヒビ割れがある。

 藁人形なんかもう、見ているだけでこっちが呪われてしまうんじゃないかと思うほど、見た目がすでに怖い。

 

「……HARUHIは何を使っているんですか?」

「あ? 俺のを聞いてどうすんだ」

「いや……、参考にしようかと……」

「依代は人によって異なる。例えばミチルは木製の人形(ヒトガタ)を好んで使用しているが、お前も同じになるとは限らない。よって、聞いたところで意味ねぇ」

「……教えてくれてもいいのに……」


 別に減るものでもないし……。

 俺が唇を尖らせても、HARUHIは頑なに教えてくれなかった。

 

「まずはテメェの心配でもするんだな……。じゃあ早速だ。俺があらかじめ持ってきたこの人形(ヒトガタ)の中から適当なのを選んで、試してみろ」


 これ……、俺が使うのか……。個人的には藁人形と土器(かわらけ)は避けたい……。


 俺は恐る恐る、見た目が一番平和そうな、紙製の人形(ヒトガタ)を手に持った。


 ……ここからどうすればいいんだ?

 最初にHARUHIが教えてくれた、式神の発現に必要な要素の一つである『言霊』。具体的には何をすればいいんだろうか。

 

「……あの、言霊の方は、何を言えばいいんですか? 『なんとかソワカ〜』……みたいな呪文でも唱えるんですか?」

「それは密教の陀羅尼(だらに)だ。フィクションはともかく……現実の陰陽師は陀羅尼(だらに)は使わねぇ」

「へぇ〜……」


 昔、映画でみた陰陽師では、安倍晴明がとにかくカッコいい呪文を唱えて、華麗に鬼や怨霊を撃退するシーンがあった。

 その呪文の意味はわからなかったけど、晴明のスマートな対応と立ち振る舞いに、多感な男子だった当時は感激していたなぁ。


 でも現実は違うみたいだ……ちょっと残念だったり。

 

「一応基礎となる『祭文(さいもん)』ならあるが……、なんだったかな……」

「祭文?」

「陰陽師が儀式を行う際に唱える言霊。……神道でいうところの祝詞(のりと)みたいなもんだ。……だが慣れるとめんどくさくて端折っちまうから……忘れた……」

「端折れるんだ……」


 言霊って端折れるものなんだ……。


 でもそういえば、先日のツナとの撮影で、実際に式神を使っていたミチルさんも、それっぽい呪文は唱えていなかった。


 あんな逼迫(ひっぱく)した場面で、呑気に呪文なんか唱えていられないか……。そう考えれば、省略せざるを得ないのは仕方ないのかもしれない。


「『四縦五横(しじゅうごおう)吾今出行(がこんしゅっこう)除去災禍(じょきょさいか)衆災消滅(しゅうさいしょうめつ)、急急如律令』です」

「……おぉ〜……!」


 HARUHIが祭文の内容を思い出していると、いつの間にか俺の背後にいたミチルさんが、デスクの上に置いてあった木製の人形を持ち上げつつ、代わりに教えてくれた。


 呪文を唱え終えると同時に、人形は鳥に姿を変え、ミチルさんの肩に留まった。


 ……すごい、まるで魔法の世界に来たみたいだ。


 思わず感嘆の声が出てしまった。

 

「あぁ、そうだった。流石だなミチル」

「いえ。ちなみに在保さん、式神の姿は一部の例外を除き、発現者の意志――、『想像力』が色濃く反映されます。

「想像力?」

「要するに、術者の趣味がそのまま式神の容姿を左右するということです」

「……なるほど……、だからミチルさんの式神たちはみんな可愛い動物なんですね」

「そういうことです。可愛いは正義」


 この人もブレないな……。

 

 ……って、ちょっと待てよ。

 発現した人の意志が反映されるということは……、想像次第ではケモみみが生えた巫女さん姿の可愛い女の子になる可能性もあるってことか!??


 そう考えると、なんかちょっとやる気出てきたぞ!!


「……テメェがとんでもねぇドスケベ野郎だった場合、そういった容姿の式神が出てくる可能性も大いにあり得るっつーことだな……。こりゃあ見ものだなぁ」

「……あはは……」


 ……心の声が顔に思いっきり書いてあったらしい。

 

  HARUHIの意地の悪いニヤリ顔に見透かされ、俺はただ視線を泳がせながら、乾いた引きつり笑いを浮かべて誤魔化すしかなかった。


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