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推しのアイドルに脅されました〜実は男で陰陽師なんて聞いてない!~   作者: KUMANO
一章【閲覧注意】最恐心霊スポットをアイドルと一緒に凸してみた!

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スゲェな!!?


「……____はい! ということで! 目的地となる家に到着しました〜!」


 ツナの言った通り、HARUHIの警告から10分も経たずに、目的の家へと辿り着いた。

 1時間近く緩やかな坂道を登り続けた先に、ポツンと佇んでいるその家は、木造の2階建て日本家屋。誰も住まなくなってかなり経つのか、大部分が朽ちてきており、自然に還りかけているかのような姿をしていた。


「ヤッスーくん平気〜?」

「な、……なんとか……」


 ここまでの道のりはかなり険しかった。なのに息が上がっているのは俺だけ……。なんでだ……!

 

 ツナは動画が回っていても、画面外にいるスタッフに対しても割とフランクに話しかける。そしてその様子も、面白ければ動画に使用することが多いのだが、俺は教職の首がかかっているから、話しかけてくるのは正直やめて欲しい……。


「ヤッスーくんファイト!」

「……!」


 すると、HARUHIが俺のことを応援してくれた。


 ……待て、落ち着け俺!


 見た目は可憐な女の子だけど中身は23歳成人済みのヤニカス男子だぞ!!

 そう何度も騙されてたまるか!! 

 

「昔からはるひのライブに通ってくれているヤッスーくんには、この撮影が無事に終わったら、CDに直筆サイン書いちゃう!」

「〜〜〜がんばりますっ!!」


 ……絶対この部分は編集でカットしてもらおう……。


「え〜っと、では、気を取り直して……冒頭でもお話ししました。こちらのお家がですね、最恐心霊スポットとなっております!」


 ツナがスマホを取り出して、改めてこの心霊スポットの曰くについての説明を始めた。


「有名なのが、『自殺された男性の唸り声が聞こえてくる』と……」

「その男性って、どこでお亡くなりになったのか。というのは分かっているんですか?」

「それは分かんないみたい。ネットでそう書いてあるだけだから、ぶっちゃけ本当がどうかも怪しいらしいよ」

「ふうん……」

「で、もう一つ『放置されている神棚のある部屋が特にヤバい』らしいね」

「何がどうヤバいんですか……?」

「……さぁ……?」


 HARUHIの疑問に、ツナも首を傾げた。

 ネットに転がっている情報なんて、そんなものだろう。


 噂が一人歩きして、いつの間にか尾ひれ羽ひれがついていることなんてザラにある。


 だからこの心霊スポットも、(ちまた)では『最恐』なんて言われているけど、実際はどうだか……。

 

「本来、神棚をたたむ場合は、お札を神社に納めて、お焚き上げしてもらうのが最低限のマナー……。と言われているが……」

「へ〜そうなんだ! さすがハルちゃん! 詳しいね!」

「……事前に調べてきました!」


 今のHARUHI、素に戻りかけてたな……。まぁそれはそれとして、流石陰陽師と言うべきなのかな。その辺の知識にはかなり詳しいみたいだ。


「じゃあ早速! 行ってみましょー!」


 そう言うと、ツナはなんの躊躇(ためら)いもなく、引き戸の取手に手をかけた。けれどもツナが力強く引っ張っても、引き戸そのものが錆び付いているのに加えて、老朽化が進んでいて建物全体が傾いているのか、中々入り口は開かない。


「ふんっ……! ……開かないねぇ〜。ハルちゃんいける〜?」

「まっかせてください!」


 入り口が開く前に、ツナの握力が限界を迎えたのか、HARUHIにバトンタッチされた。

 HARUHIは軽くジャージを腕まくりすると、両手で引き戸の取手に手をかけ、そして……。


「えいっ!」


 可愛らしい気合いの一声と共に、引き戸はベキベキと軋む音を立てながらも無事動き、中に入れるようになった。


「ハルちゃんスッゲェ〜! 握力いくつなん?」

「どういたしまして! え〜っと、直近で測ったのだと……、片手75kgくらいだったかな?」


 75キロ!?

 

「スゲェな!!?」


 思わず俺とツナの声が被ってしまった。

 

 成人男性の平均の倍近くあるぞ! アスリートかよ!

 普段どんな生活してたら75kgなんて数字出せるんだよ!!

 

「ハルちゃん昔アスリートか何か目指してたカンジ?」

「はるひは子どもの時からアイドル一本!」


 嘘つけ!


「そんなことより! 中の探索をして行きましょう!」

「りょ! まずは神棚を探そうか!」


 HARUHIの一言で、ツナは元気よく「お邪魔いたします!」と言いながら、先頭切ってズンズンと家の中へと入って行く。


「アンタも十分すげぇよ……」


 怖いもの知らずと言うべきか向こう見ずと言うべきか……、ツナの行動にはとにかく迷いがない。自分の感じたまま、本能の赴くまま生きている。ような感じがする。

 その素直さを見ていると、なんだかちょっと羨ましいとさえ思ってしまう。


在保(あきやす)さん。早く入ってください」

「あ、はい……、すみま……っ……」


 ぼうっとツナの逞しい後ろ姿を見つめていると、ミチルさんに早く入れと急かされる。

 急いで一歩、玄関に足を踏み入れると、室内から漂ってくる異様な臭いに、俺は思わず鼻を抑えて顔を(しか)めた。


「どうしましたか」

「……なんだ……? このニオイは……?」


 長年放置されたことで蓄積されたホコリとカビ臭さに混じって、ナマモノが腐ったような……。言葉を選ばずに表現するのなら、


「もしかして……、動物か何かを、飼っていたんですかね……?」


 そう、『死臭』だ。

 死臭のようなものに近い刺激臭が、俺の体にまとわりついてくるような。そんな気持ち悪さに、一歩足を踏み入れただけで襲われた。


「こんなに臭うのに……なんであの人はノーダメージなんだ……!?」


 部屋の奥からは、「あれっ? みんな〜? 早く〜!」という、相変わらず元気そうなツナの声が聞こえてくる。


「アイツは良くも悪くも純粋だからな。何も見えないし感じない」

「それってつまりは、霊感がない。ってこと……?」

「まぁ、端的に言えばな」


 あ、そういえば……。

 初めてツナに会った時、式神がいるはずのオフィスを見て「誰もいない」みたいなことを言っていたような気がする。


「それよりも……、思ったより状態が悪いな……」

「そうですね……、長い時間滞在していたら、気分が悪くなりそう……」

「身体的な悪影響もそうだが……、もっと危険なのが……」

「……?」

在保(あきやす)、その感覚は大事にしておけ。あとニオイが一際強くなる場所があったら、すぐに俺かミチルを呼べ、いいな」

「は、はい」

「長居は不要だ。さっさと撮れ高を稼いで、撤退した方が良いな」


 ニオイの感覚……。これも霊感というものの一種なのだろうか。

 俺は頭の隅で鳴り止まない警鐘に、聞こえないフリをしつつ、HARUHIたちと共に家の中の探索を始めた。

  

 

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