なんの問題も無いわ
「あらあら、賑やかね〜」
ツナさんとHARUHIが言い合いをしていると、今度はリウさんとミチルさんが事務所に入ってきた。
「おいリウ! このバカなんとかしろ!」
「人の弟に向かってバカだなんて、この事務所一番の稼ぎ頭に向かってなんて口の利き方をする小僧かしら」
HARUHIは何を言われてもへらへらと笑っているツナに対してぷんぷん怒りながら、その怒りを兄であるリウさんにぶつけた。
「誰が小僧だ! どっからどう見てもウルトラグレートハイパー美少女だろうが!」
「その美少女(笑)をスカウトした凄腕敏腕社長は一体誰かしらね〜?」
言い負かされたHARUHIが今にも突っかかりそうになっているところを、ミチルさんが慣れたように押さえ込んでいる一方、リウさんは勝ち誇ったように高笑いをしている。
さっきまでとても静かなオフィス内だったのが、彼らが来ただけで一気に賑やかになった。
「リウさん、お疲れ様です」
「在保ちゃんもご苦労様」
リウさんと軽い挨拶をすると、リウさんは軽く両手を叩いた。
「さ、アンタたち! 早速だけれど、今後の話をするわよ」
リウさんが話し始めると、途端に周囲は静かになった。
見た目は強烈なオネェだけど、さすがは社長だ、統率力が凄まじい。
このオフィスにいるだろう、他の式神たちも、静かに社長の話に耳を傾けているのだろう。
「今週末、アンタたちにはある場所に向かってもらうわ」
「ある場所……?」
どこだろう……。できれば都内がいいんだけど……。
「最近ようやくメジャーデビューに漕ぎ着けられたHARUHIだけれど、一般知名度はまだまだ低いわ」
そう言うと、HARUHIはむすっとほっぺたを膨らませて「ようやくは余計だ」と文句を垂らした。
「より一般認知度を高めるには……、動画配信者とのコラボが手っ取り早い! そこで我が事務所一番の稼ぎ頭であり、チャンネル登録者数300万人超えの我が弟! ツナの出番よ!」
「はい来ましたぁオレの出番!」
なるほど……。
確かにツナの知名度は凄い。
俺の学校でも、生徒たちは休み時間になるたび動画を回しているし、教員ですら話題作りに視聴しているくらいだ。
一方で、HARUHIを知っている生徒はほとんどいない。そんなHARUHIがツナとコラボすれば、宣伝効果は計り知れないだろう。
「で、……オレは何をすればいいの?」
「あなたはいつも通りにしてくれればいいわ。ここはハルちゃんの腕の見せ所だから」
そう言うと、リウさんはどこからともなくタブレットをとりだして、当日のスケジュールを話し始めた。
「日にちは24日、撮影開始は22時!」
「あの、HARUHIは一応未成年じゃ……?」
「中身は23だからなんの問題も無いわ」
いや大アリだわ!!!
やっぱサバ読んでたんじゃねぇか!!
公式には18歳だから……、5年も盛ってたのかよ!! 随分盛ったな!
それで誰も気づかないのもスゲェよ!
「そう……デスカ……」
俺の……長年で培ってきたHARUHI像が……、たった二日で呆気なくも崩れ去った。
肩を落としている俺に対して、ツナが俺の肩を叩きながら、
「一粒で二度美味しいって考えればいいんだよ!」
と、慰めなのか何なのか、よくわからないお言葉を頂戴した。
「そもそも4月からの法改正で、18歳も立派な成人としてカウントされるから、HARUHIが深夜にどこを徘徊しようがNo problem!」
そうだけれども……! 問題はそこじゃない……!
そんな俺の心の叫びをよそに、リウさんは「我が社の利益のためなら、使えるものは人間だろうが式神だろうがなんだって使ってやるわよ〜!!」と言いながら高笑いしている。商売根性逞しいな……。
「場所はどこ〜?」
ツナは相変わらずヘラヘラと笑いながら「楽しい場所がいいな〜」と呑気なことを言ってる。一方で、終始不機嫌そうな表情をしているHARUHIは「22時開始な時点で楽しい場所な訳ないだろうが……」と呆れたように言った。
「それで、場所は……?」
俺が恐る恐る場所を聞くと、リウさんは自信満々に答えた。
「場所は____……」
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