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第40話 悪役令嬢と魔法少女はまったくの別人ですのよ!

「みなさん、ありがとうございました!」


 伸びた男たちをどうしようかと思っていたら、近くに店を構える飲食店の女主人が声をかけてきた。そして、彼女は周囲に手早く指示をだすと、近くにいた男たちがこの二人を捉えて冒険者ギルドの自警団へと連れて行った。


 店主によると、この二人はここ最近、この辺りでよくケンカをしまくっては周りの店に迷惑をかけていたらしい。冒険者ギルドに通報しようと何度も思ったが、報復が怖くてできずにいたとのこと。


 よかった。ちゃんと役に立ったのだと平和防衛隊の4人はほっとする。


「あの、お礼と言ってはなんですが、もしよかったら今夜、うちの店で食事をなさっていかれませんか? 舌の肥えた学園の生徒さんのお口に合うかはわかりませんが」


 そう店主に声をかけられて、ジュスティーヌは露骨にビビった。


「ええっ! ど、ど、ど、どうして、わたくしが学園の生徒だとわかったのですか!? もしや正体がバレている……!?」


 半分パニック状態のジュスティーヌの肩にオリビアは手を置いて、


「マジカール様、私とそこのインテリ王子が学園の制服を着ているからだと思いますよ。大丈夫、マジカール様の正体はバレていません!」


 と、冷静に教えてくれた。


 店主は苦笑いをしていた。


 そう言われると断るのも失礼だと思い、4人はこのお店で夕食をご馳走になることにした。オリビアはこのインテリ王子が失礼なことを言わないかヒヤヒヤしていたが、割と大丈夫そうでほっとする。


 この店は大衆向けながら、女性が経営していて店内も小奇麗だったため、女性の客が意外と多かった。


 席に案内されたセドリックが海坊主のマスクを外して、乱れた髪を手櫛で整えていると、周りの女性たちから軽い歓声があがった。忘れられがちだが、セドリックは()()()()のイケメンなのだ。


 女性たちの「キャァ、みてっ」「えっ、かっこいい」というヒソヒソ声を聞いて、セドリックは少しだけ海坊主の衣装が好きになった。


 4人は店主が振舞ってくれた家庭的な料理を味わいながら、今後の活動について話したり、客や従業員からこの辺りの治安について聞き取ったりした。


 しばらくすると、ケンカしていた男たちを自警団に引き渡してきた男たちが戻ってきた。彼らはこの店の常連のようで、店に入ってくると当然のようにテーブルにかけ、店主と話し始める。


 と、いきなり「キャー、うそーっ!」「キャー、ええー!!」という女性たちの大きな歓声があがった。何事かと思い、店の入り口を見ると、なんとあの男、アルフォンスが入ってくるではないか。


 彼のカリスマ的な美貌は、()()()()のイケメンレベルのセドリックとはまるで次元が違う。この男、実は常に自分にスポットライトの呪文でもかけているのではないかというぐらいキラキラしているのだ。


「やあ、ジュティ。こんなところで会うなんて奇遇だね」


 アルフォンスはゆっくりとこちらのテーブルに近づいてくる。


「ジュティって誰だろうなぁ。全然知らない人だなぁ。わたしはマジカールだもんなぁ。本当にそんな人ここにいるのかなぁ」


 必死に他人の振りをしようとする。


「これは、失礼。貴女がかの有名なマジカール嬢でしたか」


 ふぅ、助かったぁ。なんとか無事に、この皇子を騙すことができたっぽいわ。案外チョロいわね。


 アルフォンスは白い歯を見せて極上の皇子様スマイルを見せると、当然のようにジュスティーヌの横に腰を下ろした。


「あああ、あの、ご、ご注文は……?」


 給仕をしている若い女子が顔を真っ赤にしながら注文を伺いに来る。


「ああ、じゃあ、エールを一つ」


 アルフォンスはウェイトレスのほうをちらりとも見ずに、テーブルを支えに頬杖をついてジュスティーヌを見つめたまま注文をした。注文を受けた女の子は同僚に嬉しそうに「話しちゃったっ!」と報告をしてキャッキャしている。


「こほんっ。ところで、そちらの剣士さんはなぜここへ?」


 知らない人のふりをしないといけないので、アルフォンスとも初対面を装う。が、彼ほどの有名人となると、例え面識がなくても、一体誰なのか知らない者はこの街にはいない。つまり、他人の振りをしているジュスティーヌの努力は、完全に無駄とも言える。


「自警団の詰め所で貴女のことを伺って、一目お会いしたいと思いましてね」


 アルフォンスはジュスティーヌの芋くさい演技に付き合ってあげていた。


 オリビアは幸せだった。今話題のウルトラカップルのこんなうさん臭い会話をすぐ真横で聴くことができたのだから。


「へえ、それはよかったですねぇ。この街の平和を守るナゾのスーパースターのこのわたし、大魔女マジカール様に会うことができて。あなたは結構ラッキーですよ、見知らぬ剣士さん」


 それだけいうと、ジュスティーヌはアップルジュースを飲み干した。


「エ、エールでございます。ど、どうぞっ」


 今度は先ほどとは別の女の子が、ガチガチに緊張しながら飲み物を持ってきた。


「ありがとう。彼女たちにも何か追加で飲み物をお願いできるかな? 一杯ご馳走させてください、マジカール嬢」

「たったの1杯? わたし3杯ぐらい飲みたいんですけど。剣士さんはお金持ちっぽいのに案外ケチですね」

「ははっ、では、お好きなだけどうぞ」


 そう言われてジュスティーヌは遠慮せずにアップルジュースを3杯注文する。オリビアたちも遠慮がちに今飲んでいるものを1杯ずつ注文した。


 あのアルフォンス相手にケチといい、一気に3杯もジュースを頼むとは、この豪胆な美女は何者だろうかとジュスティーヌとアルフォンスの関係を知らない客は思っていた。

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