『魔』導士大戦編13
その13
第六休憩地前
「あと少しだから頑張りましょう」
リフォーナさんはナコルルの実で作った馬を大きくして。
「ノノ、乗って」
ブキは杖に立って乗り雪面ギリギリを浮かんで上に登りだした。
「姉弟子、このくらいなら空の上みたいに寒くない」
「ノノ、今日はあと少しだからナコルルの実を低空で走らすは! ハイッ」
昨日みたいに雪の上を歩かず、わずかに浮いて走り出した。
まあブキが出来ることが、リフォーナさんに出来ないはずないよね。
▽
「おねえさん、ナンムたちが山を登ってる間は町とか城とかは大丈夫だったの?」
「オレも気になってた。『魔』の将軍とかいうのは襲ってこなかったのか?!」
「たしかにね、でも将軍は大きな作戦で失敗しました」
「ああ、最初におとせと言われた魔道士会の有る城を落とせなかったな」
「ダークドラゴンの妻子を拉致して、城下を襲わせたのもな、で、魔王にほされたか? あのサカナ将軍は?」
「そうね彼は大失敗をし、仲間に笑われたのよ。ソレに城攻めに多くのオーク鬼やトロール鬼、ゴブリンを使ったけど負けてしまったから、彼らも『魔』に協力を考えはじめたの。数が減ったからね。でも、『魔』はこりずに各地では小さな悪事を続けていたのよ。小さいと言っても村を襲い魔族以外の生き物を減らしていったのよ、当然魔道士会も動いているわ。でも、魔道士会も数が少ないのでなかなか各村や町を救えないでいたのよ、ノノ・ナンムたちが帰るまでは」
▽
「なんだココは!」
先に行ったのに後から着いたブキが。
山の頂上には大きな窪みがあった。
不思議とソコには雪がなく緑があった。窪地のはずれには小さな池も見えた。
ここが、ラン・シシィーマールが隠居しているという頂上なの?
「大丈夫か、ブキ。やっと登ってこれたな。昨日は飛んで魔法力を大分使ったから、今日の登りは疲れただろ」
「ええ、姉弟子早く行ってくださいよ。そしたら速さを加減したのに。途中から歩いて登ってきましたから疲れた。姉弟子、この下のあの家がラン・シシィーマールの……」
窪地の真ん中に家が有る。あそこに。こんなに高い山の頂上に有るとは思えない立派な家だ。あんなに大きな建物に二人で?
あたしが思ったことと同じことをブキも思ったんだろうね。同じことをリフォーナさんに。
「どうかな、二人ってラン・シシィーマールと仕用人。仕用人が一人とは限らないわよ。アレだけ大きい家なんだから何人も居るのかも」
「行ってみりゃわかるさ、行こう姉弟子!」
ブキは杖を手に先に窪地を降りた。
「行くわよノノ!」
リフォーナさんとあたしはナコルルの実で。
窪地の下まで降りると、寒さが。
「このでっかい穴の中は寒くないぞ!」
草も生えてるわけだ。上の寒さがウソのようだ。
「この山は火山と聞いたことがあるわ。地熱で暖かいのかしら」
家畜が、家の横から。
この家には家畜小屋が有るようだ、鳥や角の生えた動物も。たしかアレは人に飼われてる牛とかヤギとかいう。魔族でも人族でもない生き物だ。
リフォーナさんは大きなドアのある家の真ん中に行く。
ドアの横のベルのヒモを引いて何度か音を。
ブキとあたしはリフォーナさんの後に。
ドアが開くと黒い服に大きなエプロンを付けた女の人が。この家の仕用人かしら。
「どちら様でしょう?」
「私たちは魔道士会から来た使いの者です。ココはラン・シシィーマール様の隠居の邸宅でしょうか?」
「魔道士会の……。ハイそうです。でもココはラン・シシィーマール様のご自宅です。隠居地では、ありませんよ」
「それは、失礼を。ココにご家族も?」
「ええ、どうぞお入り下さい」
あたしたちは家の中に。
入ると大きな広間だ。貴族たちがダンスパーティーを開けるくらいだ。
部屋の両脇には上に上る階段が。
今は窓で明るいが夜になると天井の大きなシャンデリアのロウソクに火をつけ、ココを明るく照らすんだろうな。
そして、目を引いたのは広間の中央の壁にある大きな肖像画だ。
顔半分が白いヒゲの目ヂカラが強い老人の絵だ。あの老人がラン・シシィーマール。
「絵に描いたような大魔道士だな……」
「絵だ、ブキ」
「お客様、コチラの応接室にどうぞ」
「あ、私たちラン・シシィーマール様にお会いしたいのだけど」
「応接室でお待ち下さい。ご主人様を今」
一階にある応接室という所に入れられた。貴族とかに縁のないあたしはこういう豪邸は初めてだ。
しばらくするとドアを叩く音がして、さっきの女の人より若い女性がお茶と見たこともない菓子を持ってきた。
「あの、ご主人は?」
「もう少しお待ち下さい」
と言って部屋を出た。
「姉弟子のいうとおりだ。二人じゃなかった。あの女性で三人。まだいるのかなぁ」
この応接室という部屋の椅子はどれもふかふかだ。まるで城の王室だ。
王室には行ったことないけど。きっと王様の椅子はこんなんだろう。
「美味い、コレはなんだ? 食べたことない菓子だ! ナンム、食ってみろ!」
「お茶も苦みがあるが深い甘味のようなものも。コレはなんという茶なのかしら」
「雪の中を苦労して来たかいがあったってもんだぜ」
「ブキ、喜ぶのはまだ早いラン・シシィーマールに会わなければ、そして……」
つづく




