『魔』導士大戦編10
その10
早朝まだ夜が明ける前、といっても明けてもそんなに明るさは変わらない。
山に登るコトに。
登るのは、はじめは魔法でだ。あたしとリフォーナさんはキリーの実に乗り。
ブキは自前の杖。
山の入口からもう雪で、防寒着を着ている。さすがにあたしもブキから借りたポンチョ毛布だけでは空は寒い。帽子と手袋を、そして毛皮のブーツ。
この世界一高い山、頂上までは魔法では登れない。途中にある休憩地までが限度だと。
空気が薄くなるし、天気も変わった。飛んで上がるのはこの第五休憩地までだ。
▽
「おねえさん、世界一高い山って途中で空気が無くなるの?」
「無くなりはしないが薄くなるのよ。こういう山は急に登ると病気とかになってしまうの。だから途中にある休憩地で休みながら上がるのよ」
「この砂漠の町では、考えられない寒さだ、オレは若い頃ライホー山に登ったことがある」
「そうなんだ、おじいちゃん。頂上まで行ったのかい」
「いや、第五休憩地までだ。山が荒れてなソコまでが限度だった。が、今は知らんが休憩地の山小屋はな宿になってて。そこで休憩したら上には行く気なくすんだよなぁ」
「なんでだ爺さん?!」
「なんだなぁギリギリ、ソコまでは温泉もあってな女性のサービスなんかもあったりしてないぁ。もう登山なんかする気がなくなるんだ」
「私は今のライホー山はよくわからないけど、ソコまで登ってきた人に登山をあきらめさせる場所じゃないのかな。お爺さんの登った頃は」
「う〜ん確かに。あそこから上は危険な山だと、登る前に言われた……」
「そんなトコに爺さん魔道士は隠居生活をしてるのかい」
「そうね、そこは世界最高の大魔道士ね。たまに行く魔道士会の人たちは大変だったようよ。お話しのナンムたちも……」
▽
朝早く空に上ったときはそうでもなかったが、すぐに天候が悪くなった。
「姉弟子、この吹雪じゃ飛べないぞ」
「だね、師匠が言ってたわね、第五休憩地からは体力勝負だと」
「山を歩いて登るのか……。師匠の脅しかと」
「山歩きはあたし、なれてるわ」
地上に降りたら上ほど吹雪いてない。
「飛ぶより先に進めそう」
あたしたちは雪山を歩き登る。
「姉弟子、山をスルスルッと登れる魔法はないんかなぁ?! 疲れた。雪も深くなってるし」
「そんな魔法はないわ」
「リフォーナさん、大魔道士には仕用人が居ると言ってましたねポロロ亭の人が、買い物に来ると。この山を買い物に登り降りするんですから普通の人ではないですよね」
「確かに、瞬間移動能力でもあるのかしら」
「姉弟子瞬間移動って、魔法は?」
「無くもないわね、師匠が言っていたわ。ソレが出来るのは大魔道士ラン・シシィーマールだけだと」
「それじゃ仕用人の方は魔法で」
「かもしれないわね瞬時に何処でも行けたら苦労しないわね」
「姉弟子、大魔道士ラン・シシィーマールに会ったら、その魔法を教えてもらいましょうよ。そしたら帰りは楽だ」
「あのねぇ。もう帰りの事を。その前に大魔道士ラン・シシィーマール会えるか心配しなさいよ、話によるとけっこうな頑固爺さんらしいわ。門前払いでもされたら……」
「山の頂上で門前払いされたら、どうするんだ姉弟子」
「門前で凍死かもね」
「それだけは……」
「大丈夫だと思うけど、そのためにお土産を持ってきたから」
「リフォーナさん、お土産って、なんですか」
「あけてないから、分からないけど師匠が持っていけと。ココへ来る会の老魔道士たちは皆、持ってくそうよ」
「甘いお菓子かなんかですかね。山には無いような」
「かもね……」
「あれは!」
「どうしたのブキ?」
「今、向こうの木のそばにナニかが? うわっアレば?!」
木の陰から大きな獣が、熊かしら。いや、熊は冬眠してるはず!
クワァア
全身白い毛の大型のサル?
腰の短剣、あ、ポンチョの下だ。コレだから厚着は。
「ハァ! 雪よ! グンリ、ウハ!」
あたしたちの前に雪の壁が。
リフォーナさんの魔法ね。
ボコッ
雪の壁に穴が!
クワァア
「スメガルガ!」
今度は雪玉が獣をボコボコと。
「リフォーナさん、あたしが!」
やっと取った腰の短剣二本を持ち、あたしは壁の穴から半身を出した獣の顔に両足で蹴りを。
穴の向こうに転がった。
あたしは壁の穴へ飛び込みくぐり、ヤツの胸の上に飛び乗った。そして、短剣で目を!
グギャアア
白い毛の獣人は、あたしを手で払い立ち上がると腕を振りながら暴れた。
目が見えなくて攻撃を避けてる?
あたしは背の大剣を降ろして抜くと、ヤツの前に立ち。
ビギャアア
ナニ、今度は巨大なヤマブタが。雪の中から。
つづく




