↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/31

第十七話 天眼からは逃げられない

「というわけでやってきました密林フィールド、目指せスケイル・カメレオン乱獲作戦~!」

「わ、わー」


 ぱちぱち、とクロワッサンの拍手が虚しく響く。ちなみにシャンデリアはパーティを解除して、付近で素材採集をしている――二人のレベリングの邪魔にならないためだ。

 つまり二人きりである。なお、クロワッサンがドキドキしていることに魔女リティは全く気づいていない。


「と、ところで、どうやって探すの? 近づくだけで消えちゃうなら……リッちゃんの《鷹ノ目》?」

「ううん、あれは視覚補正してくれるけど、障害物があると意外と見通しにくいから、探し物って言う点ではあんまり当てにできないんだよね――特に、こういう密林フィールドみたいなとこだと。代わりに、今日はこの子の初陣だよ」


 おいで、と一声かけると、魔女リティの近くに小さな光の輪が出現。そこを通って現れたのは――


「鷲?」

「うん、サテライトイーグルのミツメ。僕の使い魔だよ」

「三ツ目の鷲……ってわけでもないんだね。なんでミツメなの?」


 クロワッサンのもっともな質問に、魔女リティは笑って答える。


「今まで、僕は二種類の目を持ってたからね。元々あった自前の目。遠くを見て、狙いを定める《鷹ノ目》。そして記念すべき三つ目の目が、この子ってこと」

「んー……プレイヤーが近づくと姿を消すから、この子に探してもらおうってこと?」

「半分正解。じゃあ、ミツメ。お願い!」


 魔女リティの掛け声に合わせて、上空へ飛翔した。


「サテライトイーグル。総じて目がいい鳥型の魔物の中でも、特に視力が良い種類らしいよ。使い魔として契約した時の能力は――契約者との視界共有」


 魔女リティの両目が淡く輝き、その視界が一気に塗り替わる。

 空から広範囲を眺める三つ目の目。バトルロイヤルにおいて、戦況を知ることができるこの能力は有用だと思ってサテライトイーグルを選んだのだ。


「うわっ、思ったよりも急にきた。……! いいね、もう見つけたよ」


 ミツメが眺める眼下の景色に、のたのたと木の表面にへばりついている巨大なカメレオンがいた。緑の鱗と、体を彩る黄色のライン。眼球が飛び出ているのかと思う丸い目は、ぎょろぎょろとせわしなく動いている。

 頭上に表示された名前が、目当ての獲物であることを示していた。


「場所さえ分かれば、あとは射線を通すだけだかんね……ここかな。クロワッサン、周辺の警戒お願いしていい? 魔物が寄って来たら、守ってほしい」

「うん、任せて!」


 頼られてテンションが小アップしたクロワッサンを尻目に、スケイル・カメレオンに気取られない距離を保ちつつ、《鷹ノ目》を使用して視界補正。さらに新品の杖を構えれば、準備は完了。


「距離一二〇、角度プラス補正……照準良し。

 空の捕食者 雷雲の翼 羽ばたき一つで地を揺らす――《トール・ライトニング》」


 杖の先端から放たれたのは、《ライトニング》よりも厚みのある雷。

 それは稲妻のようにうねりながらも、木の隙間を綺麗に通り抜け――スケイル・カメレオンの眼球に直撃する。

 目という急所を雷に打たれたカメレオンは、直後に白目を剥いてあっさり消滅した。


「わぉ、一撃だ……杖の力さまさまだなぁ」

「すごい威力……今のって、基礎術式だよね?」

「そうそう。《トール・ライトニング》。中級攻撃魔法で、威力・射程がシンプルに強化されてる、《ライトニング》の上位互換だね……おっ」


【魔法陣:《スケイル・カメレオン》を獲得しました】

【アイテム:スケイル・カメレオンの鱗を獲得しました】


「これは……」


 ぼろ儲けの匂いがする、と口の端を吊り上げた。

 姿を消しさえしなければ、動きも鈍く狙いやすい。おまけに仮にも中級の魔物なので経験値も結構おいしい。すなわち、魔女リティの格好の獲物である。

 言葉にこそ出さなかったが、横顔でなんとなく考えていることが分かったらしい。クロワッサンが下から声を掛けてきた。


「ら、乱獲もほどほどにね、リッちゃん」

「ゲームだから大丈夫。絶滅させても明日には生えてくるよ……二体目発見」


 ミツメの視界から入ってくる情報を処理しつつ、魔女リティは再び杖を構えた――




「《トール・ライトニング》」

【レベルが上がりました】

【称号:【急所特攻・Ⅲ】を獲得しました】

【アイテム:スケイル・カメレオンの鱗を獲得しました】


「《トール・ライトニング》」

【称号:【匠の業】を獲得しました】

【アイテム:スケイル・カメレオンの鱗を獲得しました】

「ふむふむ? ……えっ、低確率でもドロップアイテム増えるとか神称号じゃない?」


「《トール・ライトニング》」

【称号:【狙撃手・Ⅲ】を獲得しました】

【アイテム:スケイル・カメレオンの鱗×2を獲得しました】

「倍になっちゃったよ? これやばくない?」


「……もしかして、今なら……《ライトニング》」

【レベルが上がりました】

【アイテム:スケイル・カメレオンの鱗を獲得しました】

「あっはっは《ライトニング》一発でも倒せるようになってきちゃったなぁー!」


 テンションが上がった魔女リティの乱獲は続き――




「これだけあれば足りますかー?」

「嘘でしょ早すぎない……?」


 愕然としたアンドンの前には、スケイル・カメレオンの鱗が山積みになっていた。

 その数何と五十枚超である。



 ◆◆◆



 ――――――――

 名前:魔女リティ

 Lv:46

 MP(魔力):235 / 2750

 魔法攻撃力:1000(+285)

 魔法防御力:550(+15)

 飛行速度:325(+5)

 ――――――――


 ――――――――

 名前:クロワッサン・クレッセント

 Lv:44

 MP:4955 / 5875

 魔法攻撃力:645(+40)

 魔法防御力:645(+260)

 飛行速度:645(+5)

 ――――――――


「クロワッサンのステータス高っか! MPと飛行速度僕の倍じゃん!」

「こ、ここまで差が出るとは思わなかったかな……あはは」


 カメレオンの乱獲を祝して、魔女リティたちは第三ツリーの頂上にあるカフェでお茶をしていた。

 なおWCOにおける味覚の再現率はあまり高くないので、はっきり言って味わう意味は薄い。が、食事系アイテムにはバフ効果が乗っているため、狩りの前に食べにくるプレイヤーは多い。狩りの後に来る魔女リティたちのようなプレイヤーは少数派である。


「ちなみに、シャンデリアのステータスってどんな感じ?」

「わらひ?」


 シュークリームを口いっぱいに頬張っていたシャンデリアがウィンドウを操作する。


 ――――――――

 名前:シャンデリア

 Lv:103

 MP:5100/ 5600

 魔法攻撃力:1120(+0)

 魔法防御力:1120(+0)

 飛行速度:2650(+500)

 ――――――――


「こんな感じ!」

「飛行速度が合算三千かぁ……補正値500って、何装備したらこうなるの?」

「箒は上級の木材で作ったオーダーメイドで、アクセサリー三つを全部飛行速度補正にしたらこうなったよ!」

「なるほどまさにスピード狂だね」

「速いのは気持ちいいからね! それに、称号でもスピード強化してくれるのあるからもう少し速くなるよ!」

「僕じゃひっくり返っても追いつけないのがわかったよ」


 ステータスだけでほぼ十倍の差を見せつけられて魔女リティが遠い目をする。とはいえ、仕方がないだろう。雷属性は魔法の速度が速い代償か、プレイヤーの飛行速度は低めに設定されているのだ。

 ともかく――シャンデリアのステータスを見て、魔女リティが一口コーヒー牛乳をすすった。


「うん、やっぱりシャンデリアに頑張ってもらうことになりそうかな」

「なにがー?」

「……バトルロイヤルでの作戦の話」


 少し声をひそめて、言う。


「詳しいことはアトリエに帰ってから話すけど……シャンデリアって、魔法陣どんなの使ってる?」

「雷属性の加速魔法! お店で売ってたから買ったんだ」

「風属性じゃないんだ?」

「なんかねー、同じ属性の同種バフだと重ね掛けできないんだって」

「あ、そうなんだ。それは知らなかった……あと二つは?」


 魔法陣は、いわば“装備できる魔法”だ。魔導書に収納されている魔法陣の中から三つまでを選択し、戦闘中に使用することが出来る。プレイヤーの戦略を左右する重要なファクターであると言える。


「決めてないよ! よくわかんないから」

「あはは、シャンデリアらしいね。じゃあ、明日以降そこを相談したいかな」

「いいよ! よろしく!」

「あの……もうちょっと疑ったりとかしないの?」

「大丈夫だよ! 先輩の連れてきた助っ人さんだし、リティだし!」

「信頼が眩しすぎて目が潰れそう」

「わたしもユニユニに関してならいつでも相談に乗るからね!」

「隙あらば布教してくる……!」

「ちなみに初代は見てたんだよね? どのキャラが好きだったのか、わたし気になるな!」

「初代か……昔はやっぱり主人公のユニユニレッドが好きだったけど、今の好みだとグリーンかも」

「オトナなチョイスだね! 常に仲間を助けるあまり、自分のことをおろそかにしちゃうタイプ! リティみたい!」


 ユニユニ談議に入ることが出来ないクロワッサンは、楽し気に話す二人を口惜しそうに見ていた。




そう言えば書き忘れていた、使い魔が出てくる光の輪について。

使い魔用のプライベートルームみたいなものがあって、用事がない時はそこに置いておくことが出来る。魔女の任意で呼び出しが可能。

離し飼いすることもできるが、この場合任意で呼び出せなくなる(正確には、システム的に呼べば来る仕様となっているが、フィールドを移動してくるので時間がかかる)


ついでに詳細を書きそびれた称号、【匠の業】について。

「攻撃三回以内で魔物を倒した際、低確率でドロップアイテムの数が増える」という効果です。

体に傷が少ない方が素材はたくさん落ちるよね? ってことです。

なおよほどのレベル差がない限り攻撃三回で魔物を倒すことは難しいです。それこそ急所に立て続けに攻撃を叩きこまない限りはね……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。