遭遇ーー白い少女2
少しして、イグニクルスが「むう」と唸った。
「どうかした?」
「察知されたようで、こちらに向かってきております」
「誰?」
「主のご同輩、イエッタ・ルキス殿ですな」
「イエッタか。どうしてこんなところに……」
「イエッタと言うと『四聖徒』を殺害したって言う少女のことか?」
エライアスとケルスに戦慄が走る。相手はレーイの同胞とは言え、人殺しをしている。残虐な性格ではないとは言い切れない。
「緊張するには及ばない。同胞の中では話が判る奴だ」
「いや、しかし」とエライアス。
「それは、お前が別れる前の人物像だろう? 今はどうなっているか判らんぞ」とケルス。
「なるほど」と納得したレーイは、「いざという時はわたしの背後に隠れるようにしてくれ」と2人に指示を出し気を引き締める。
「もうすぐ、肉眼で捉えられる距離です」とアレーナ。
イエッタは北の方角から現れた。魔術を駆使しているのか、人間としては尋常でないスピードで近付いてくる。
普通の感覚ではほんの数瞬で、白い服に金髪の少女がレーイの前に姿を見せた。
姿を現すやいなや、周りには目もくれず、白い少女はじーーっと、レーイの顔を見つめた。
それから、わざとらしく腕を組み、視線を逸らして、
「こ、こんなところで何してるのよ、あなた」
と、突き放すように言う。しかし、瞳孔ははちらちらとレーイの様子を窺っているので、本心からそう思っている訳ではないことは、誰の目にも明らかだった。
「お前こそ、こんなところで何をしているのだ、イエッタ」
「こ、こんなところって……別に好きで居るわけじゃ……」
「そうだろうな。わたしはタクラス市を通って来た。大変なことをしたようだな」
「うぐっ」
イエッタは俯きながら、「どこまで知ってるのよ」と問う。
「そうだな、だいたいの顛末は知っているぞ。大変だったようだな」
レーイがねぎらいとも解釈できる声をかけると、イエッタは背けていた顔をレーイに向けた。
その表情にレーイは、ほっとして気を緩めた。
イエッタは目を赤くして涙ぐんでいたのだ。『四聖徒』殺害を後悔しているので無ければ、そんな顔はしないはずだった。
「どうした、イエッタ?」
レーイにしては珍しく優しい声音で声をかける。
「レーイぃぃ……」
今にも泣き出しそうなイエッタ。イエッタがこういう弱気なところを見せることはほとんど無い。レーイを除いては。
「こんなところで何をしている?」
「ちょっと言いにくいことが起こって……それで困ってしまって……」
「にっちもさっちも行かなくて、こんなところで右往左往していた、と?」
「う、うん」
「そうか。……だが、詳しくは知らないが、人違いだったんだろう?」
イエッタは、その言葉からレーイがことのあらましを知っていることを悟った。そのため、素直にこくんと頷いて見せたが、そこで抑えていたものが一気に溢れ出してしまい、泣き出してしまう。
「ノルンが魔族で……みんな殺されて、あたし……悔しくて」
「そうか。大変だったな」
レーイはイエッタの言葉に引っかかりを覚えだが、まずはイエッタを宥めるのが先決と考え、質問は後回しにした。




