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西の遺跡へ

レーイが朝食を食べ終えてから、昼になる前に3人は宿屋を立った。

街の中はうっすらの霧がかかっている。

屋度は街の北東にあったので、そこからいったん南下して街の東西を貫く大通りに出て、西へ向かう。

大通りと呼ばれるだけあって、人通りは多い。

店も多く、呼び込みをする店員の声と、店に立ち寄る人。それから、どこかに目的地があって店には見向きもせずに歩いていく人。道端に佇んで何やら会話をする人々。

さらに道の中央は馬車が行き交い、騒々しさに拍車をかける。

「なるほど、首都だっただけのことはあるな」

街と言えばゲイル市しか知らないレーイは、その様子を結構な活気があると見て取った。

「いや、そうでもないさ」

対してエライアスはそう言って目を細めた。

以前のタクラス市を知っているエライアスは、違うことを感じていた。まず、活気という点では、人も少なくなったように思える。馬車の数も多いとは言えない。昔ならば、整備が行き届いていないこの街ではよく渋滞が発生していたものだが、今はスムーズに行き来している。

だが、何よりもエライアスが気になったのは、街そのものが醸し出す雰囲気だった。

以前は信仰の街として落ち着きのある気配が覆っていたものが、今は剣呑な気配に満ちている。「何か、起こるかもな」

エライアスは何とはなしに呟いていた。

「ほう? そう勘が働くのか?」とケルス。

「いや、ただの勘じゃない。経験からくる推測さ」

エライアスがこの雰囲気を肌で感じるのは初めてのことではない。そう、子供のころに遭遇した出来事の前日に似ている。

それは今で言うデモのようなものだったが、次第にエスカレートし武力衝突にまで発展した事件。エライアスは、その当事者の1人だった。

「先を急ごう。どうせ我々には関係が無いことだ」

エライアスは何かを振り切るようにレーイとケルスを急かす。

「何にでも首を突っ込むお前とは思えない台詞だ」

ケルスが小馬鹿にする。すると、エライアスは、自嘲するように口元に笑みを浮かべた。

「首を突っ込んでどうにか出来ることと、出来ないことがある。どうにも出来ないなら、結果を後で知った方が良いこともあるのさ」

「そういうものか」

「そういうものだ。さあ、先を急ごう!」

気を取り直したように、エライアスは足を西へ向けた。


タクラス市の西門を出ると、そこに広がっていたのは、野原に点在する林と、ガラクタのようにそこかしこに散乱する岩だった。

一口に岩と言っても自然石ではない。人間の手によって加工され、それが長い間風雨に晒され、壊れ、散乱したものだ。

言葉を換えれば、それは人間の生活した跡。廃墟もしくは遺跡だった。

「すでに遺跡に立ち入ったようだが、もう目的地なのだろうか? それにしては……」

レーイは注意深く周囲を見回し、しばらくしてから、「ここには居ないようだ」と言って残念そうに小さく首を振った。

「そうだね、ガルスト遺跡もムラウ遺跡も、もっと先だよ」とエライアス。

「ならば向かうとしよう」

レーイはさっそく歩き出す。

「こっちだ」

エライアスが指を向けたのは北の方角。ガラウエン山脈の南の裾野の方だった。

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