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千年紀戦争

レーイが『青司祭亭』に戻ったのは、1階がちょうど朝食を採る宿泊客でごった返している最中だった。

「おーい!」

エライアスの声がする。奥の方で手を振るエライアスを見つけ、レーイはそちらへ歩み寄った。

「おはよう、レーイ。どこに行ってたんだい?」

「散歩」

レーイは空いている椅子に腰を掛ける。

「そうか。何か面白いものは見つけたかい?」

「クヴァルティスの将軍マルティン・クヴァルティスに会って話をしてきた」

エライアスは飲みかけたコーヒーを吹きそうになり、げほげほと咳き込んだ。

「く、クヴァルティスの将軍だって? マルティン・アル・クヴァルティス王子と会ったっていうのかい?」

「そうか。あの者は王子でもあるのか」

「それで、何を話してきたんだい?」

「『四聖徒』殺害の犯人は、やはり同胞だった」

「ほう?」

「『光使い』のイエッタという奴が勘違いで殺したらしい」とレーイは聞いた限りのことをエライアスとケルスに話して聞かせた。

「なるほどね。それで、イエッタという子の行動は、『カヴァリエリの徒同士の殺し合い』とどう関係するんだい?」

「それは……判らない。だが、千年紀戦争に関わることなのだろうと思う」

「千年紀戦争というのは?」

「詳しいことは知らない」

レーイはマルティンに告げたのと同じことをエライアスにも告げた。

実際、レーイは千年紀戦争について、その名称以外のことは何も知らなかった。ただ、自分たち『カヴァリエリの徒』が集められた理由が、そこにあるということだけは聞いていた。

「千年紀戦争についてはある程度のことは知っている」と口を挟んだのはケルス。

「本当か?」

「『フェルマイルの伝承』にあるからな」

「どういうものなんだ?」

「『世界の管理者』を選定するための戦い。10人が世界から選ばれ、戦いを通して1人に絞られる。その最後の1人が『世界の管理者』となる。『管理者』は『世界』と共に、人の行く末を監視する役目を負う」

「10人……。それが『カヴァリエリの徒』ということか?」

「いや、わたしの同胞は10人以上いる」

「ふむ。……だとすると、『カヴァリエリの徒』というのは、10人の候補者と言うことだろう」

「どういうことだ?」とケルス。

「どんな選定方法なのかは知らないが、『世界』とやらが10人に選ぶ可能性のある能力や価値を持つ者を集めたんじゃないかな」

「術士カヴァリエリが、か」

「そうだ。そして不幸なことに、その中の1人としてお前の娘が選ばれたと言うことだろう」

ケルスは言葉では応じず、苦虫を噛みつぶしたようや表情を見せた。

「だが、レーイ。『カヴァリエリの徒の殺し合い』が『千年紀戦争』と関わりがあるとする根拠は何かあるのかい?」

「あるにはある。だが、今はそれを教えることは出来ない」

レーイは表情を曇らせる。言えない理由があるのだろうとエライアスは察した。

「いつかは聞かせてもらえるだろうか?」

「いずれその日が来れば、必ず」

レーイは確信を持って頷いた。

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