邂逅ーークヴァルティス将軍3
本日の分です。
マルティンは邸に戻ると、メイドにお茶を持ってこさせると同時に、執事には参謀将校のセラーニセンとディバイニスを起こして連れてくるように命じた。
「せっかくだから、朝食はいかがだろう、レーイさん?」
「ありがたい申し出だが、遠慮しよう」
ここで食べてしまうと、宿屋の朝食が食べられなくなる。そうなると、どこで食べてきたのかとエライアスあたりが詮索してきそうな気がする。
もし厚意を受けていれば、今まで口にしたこともないような高品質の食事を試すことが出来たのだが、それはレーイの与り知らぬこと。
緊急事態と察したらしい将校2人が姿を現すまで、それほど時間はかからなかった。
セラーニセンとディバイニスは、ソファに腰掛けるマルティンの後ろに立った。
「こちら、レーイ・カムネリアさんだ。先ほど街中で出会ったんだが……彼女はカヴァリエリの徒だそうだ」
2人の参謀は互いに顔を見合わせ、それからマルティンの対面で紅茶を飲むレーイを見て、納得したように再び顔を見合わせた。どうやら、マルティンと同様のことを考えたようだった。
レーイがティカップをテーブルに戻したところで、マルティンが口を開く。
「では、レーイさん、聞かせて欲しい。イエッタという少女が用いたのは魔術なのか? そして、カヴァリエリの徒とはどういう存在なのだろうか?」
レーイは「うん」と頷いて説明を始めた。
「現場に居合わせた訳ではないが、イエッタが四聖徒の殺害に用いたのは魔術で間違いないだろう。あの者は光魔術を使う『光使い』だ。そして、カヴァリエリの徒というのは、カヴァリエリと名乗るカムネリア術士を師とする術士達のことで、わたしも含め、十数人はいるはずだ。そして、我々カヴァリエリの徒は、互いに殺し合うことが運命付けられている」
「しかし、イエッタは『テトラルカ』を探し、命を奪おうと考えているようだった」
「『テトラルカ』というのは、『四魔王』ことで間違いないな? そしてイエッタは『四聖徒』を『テトラルカ』と勘違いしたと言うところだろう。早とちりのあの者らしい」
「……レーイさんの言う通りで、『四聖徒』の内2人を殺めたところで『テトラルカ』違いだと気付き、イエッタは姿を消した」
クヴァルティスの3人は苦笑いする。早とちりであんな真似をされては、たまったものではない。そんな思いが垣間見えた。
「だが、なぜイエッタが『四魔王』を追っているのか。それはわたしにも判らない」
「レーイさんでも、ですか?」
「うん。我々が師カヴァリエリから命じられていることは、『カヴァリエリの徒同士で殺し合う』こと。魔族とはいえ他の者を手にかけよとは命じられていない」
それとも、自分の知らない間に何か事情が変わったのか、とはレーイは口に出さなかった。
「あなたの師であるというカヴァリエリという御仁はカムネリア術士とのことですが、カムネリアとは、あの魔術の祖国と称されるカムネリア魔法国のことなのでしょうか?」とセラーニセンは興奮気味に質問する。
もしそうだとしたら一大事だ。衰退し消滅したはずの魔術が、遥か昔に滅んだはずの国で継承されているということになる。セラーニセンは、魔術の戦術的応用について考察してみたことがあった。結果として、今の時代に魔術が存在していれば、現代の戦争の様式はがらりと様変わりすることになるという結論を得ている。魔術を独占できれば、戦争において優位に立つことが可能だろう。
セラーニセンの質問にはそんな裏が隠れていた。
「魔法国という国は存在しない。だが、魔術は継承されている。今でもカムネリアを名乗っているが、村のようなものだ」
セラーニセンの思惑など知らないレーイは素直に事実を説明した。
「そうですか。では、その村は、どこに?」
セラーニセンの目がキラリと光った。
「教えることは禁じられている」
レーイはにべなく答えた。
セラーニセンとしては是が非でも聞き出したいところではあったが、相手はイエッタと同じく魔術を使う。機嫌を損ねられると大変なことになると考え、セラーニセンはこの場は引くことにした。




