追放の意味
少し時を遡ってーー。
レーイと同様にカムネリアを追放されたイエッタは、しばらくの間、仲間であり、同じカヴァリエリの徒でもある数人と行動を共にしていた。
師カヴァリエリからは弟子同士で殺し合うよう命じられていたが、素直に従うつもりは全くなかった。むしろ、そんな命令には反発すら感じていた。一緒にいた友人達も、思いは同じーーのはずだった。
仲間の1人である風のライルが、ある夜、宿屋で、自分たちが『殺し合わなければならない』理由を知っていると話し始めたのだ。これが、全てが狂うきっかけとなった。
ライルは言った。
「殺し合って最後に残ったやつが、世界の統治者になるんだってさ」
「統治者? 世界の? 統治してる奴なんて、今でもたくさん居るだろう?」
と応じたのは仲間の少年。
「本当の意味での統治者さ。今居る王様や皇帝なんて、ただのお飾りみたいなもので、本当の本物じゃない」
「本当の本物ね……」
イエッタはライルの語彙力の無さに呆れながら呟いた。
「金だろうが権力だろうが、思いのままさ!」
ライルは夢を語る少年のように視線を上へ向けるが、その瞳は何か現実にはないものを見ている様子だった。
「じゃあ、女をたくさん集めるのも不可能じゃないな?」
言ったのはカヴァリエリの徒の中で最も年長の少年。思春期の只中にある彼は、そう言うことで頭がいっぱいなのだ。
「やーね」
と、女子から軽蔑の声が上がる。同意を求められたイエッタも頷いて、年長の少年を非難の目で見た。
「それから、」とライルは話を戻して付け加えた。
「殺し合いに勝ち残った者は、不老不死を得られるらしい」
「不老不死?」
誰かが鸚鵡返しに答えた。
多くの者が、ピンと来ていないようだった。それもそのはず、彼はまだ幼さの残る少年少女であり、寿命の事を気に掛けるにはまだまだ若過ぎたのだ。それはイエッタにも言えることだった。
ただし、1人の例外を除いて。
その者の名は水のノルンと言った。カヴァリエリの徒の中では大人しく、目立たないタイプの女子だった。どういった理由があるのかは仲間の誰も知らないが、ノルンにはもともと、内に秘めた生への渇望があったのだろう。『不老不死』の言葉が出た途端、彼女は目の色を変えた。
「その話は本当なの?」とノルン。
「本当だよ!」とノルンが話に乗ってきたことにライルは喜び、さらに説明を続ける。
「ただし、殺し合うのは僕たちカヴァリエリの徒だけとは限らない」
「どういうこと?」
「世界の統治者の候補は、この世界に生きる知的生物の中から特に、魔術、剣術なんかに秀でた者たちから選ばれるんだ」
「その言い方からすると、候補は人間に限らないってこと? 例えば、魔族とかも入るの?」とイエッタ。
「そういうことだと思うよ、詳しくは知らないけど」
「つまり、不老不死を得るには仲間も、それ以外も殺さないといけないのね」
ノルンが低くドスの効いた声で言う。いつもの彼女とは思えないほど急変した声と暗い表情に、全員が息を呑んだ。




