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四聖徒

「ダールバイ軍の残党と、ダールバイ市民の一部に加えダールバイ教の信徒が各地から参集し、反乱軍に参加している模様です。規模だけを比較すれば、互角と言ったところでしょうか」

「だが、烏合の衆だろう。決戦の時のような強さは求められんな」と、少し残念そうにグレイグス。

クヴァルティス帝国とダールバイ国の戦争はすでに終結していると言って良い。旧ダールバイ国派がどれほど力を蓄えたとしても、クヴァルティス帝国軍に対抗できる力はもう残されてはいないのてある。

「とはいえ、ダールバイ教の信徒が加わっているというのは、かなり厄介ですね」

サンクトゥレイのこの言葉に、一同は重々しく頷いた。

信徒に危害を加えるようはことがあれば、ダールバイ教徒全体が反クヴァルティス化する恐れがあるからだ。それはつまり、ダールバイ国のみならず、レイザスやセツェン国の一部地域のようなダールバイ教圏をも敵に回すことを意味する。これは避けなければならない状況と言えた。

「信徒達は、教皇と『四聖徒(テトラルカ)』の解放を求めているようですね」とディバイニスが付け加える。


ダールバイ国は主に大陸東域に信者を多く持つ宗教国家だった。

ティレリア大陸にはゲイルゴーラを本山とするカムネリア教と、ダールバイを本山とするダールバイ教が併存している。と言っても、二つの宗教の元は同じで、大昔に宗派として別れたという経緯がある。

だが、その後、ダールバイ教は教条や制度を変化させ、独自色の強い宗教となっていった。その中の1つが『四聖徒』と呼ばれる4人の聖人の存在で、『金と紅の炎聖』、『銀と蒼の水聖』、『銅と碧の土聖』、『白金と紫の風聖』と呼ばれている。

ダールバイ教は、ダールバイ教皇と十数人の枢機卿が取り仕切っているが、これに加えて数えられるのが『四聖徒』である。と言っても、司祭、助祭など低い立場の者から選出される彼らには、政治的発言権はほとんど無く、その役割はもっぱらプロパガンダに近い。

その他、選出条件には持力の有無が含まれるが、これは極秘事項であり、世間には知られていない。

さて、『四聖徒』は一般信徒と接する機会が頻繁であることから、教皇よりも名が売れていることが多く、人気がある。

信徒達が『四聖徒』の解放を求めて反乱に参加しているのは、そういう理由があってのことだった。


「『四聖徒』か。念の為に訊くが、彼らを解放するのは下策だな?」とマルティン。

その策には、『四聖徒』の解放によって反乱軍に参加する信徒を減らすということができるのではないか、という思惑がある。しかし、これには当然ながらセラーニセンが異を唱える。

「『四聖徒』を解放すれば、逆に旗印を与えてしまう可能性もあると考察します」

つまり、解放された『四聖徒』が信徒達に結集を呼びかけ、マルティンの思惑とは真逆に、反乱軍が増大する恐れもあるのだ。

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