ダールバイ反乱
バルミス前将軍が育て上げた帝国第三軍は、将校の多くがバルミス前将軍子飼いの若手軍人で構成されていた。どの者もバルミス前将軍が拾い上げ職に就けた者ばかりだ。このため、第三軍のほとんどが親バルミス派であり、軍としての結束力も高かった。
そんな組織の中に頭をすげ替える形で入り込むことになったマルティンは、当初、第三軍に受け入れられるか不安を感じずにはいられなかった。
だがそれも、すぐに杞憂であると判った。
マルティンがバルミス前将軍の薫陶を受けた人物である事実は、セラーニセンを筆頭とした頭脳派の将校の画策で第三軍内に流布されており、軍人としては経験の無いマルティンであったが、概ね友好的に受け入れられたのである。
一方、対外的な面では、親バルミスである臣民のウケは良かった。しかし、高位の貴族たちから冷ややかな視線を向けられることも、たまにあった。だが、そういった反対派の数は多くはなく、黙殺して問題ない範囲だった。
と言うのも、驚いたことに、バルミス前将軍を死に追いやった張本人の一人であるはずのスティクトーリス公爵が、マルティンに味方する言動をし始めたからだ。公爵はバルミス前将軍のことは一切触れないまま、マルティンがいかに将軍職に相応しいかを、折に触れて周囲に話して回ったらしい。
公爵の思惑は判る。バルミス前将軍を処刑した失態を、マルティンという新たな将軍を持ち上げることで取り戻そうとしているのだ。そして、その考えは今のところ成功しているようにマルティンには思えた。マルティンは、自身に利の無い話ではないので、スティクトーリス公爵のことも放置することにした。
正直なところ、将軍職など務められるものなのか不安でいっぱいである。だが、第三軍の将校達は実に優秀で、マルティンがすることといえば将校達が持ち込む事案を承認することくらいだった。
そのことに胸をなで下ろしつつも、このままではお飾りになってしまうという新たな危惧を覚えるマルティンであった。
そうして住まう館と軍本部の将軍室の間を行き来する生活を始めて3週間が過ぎた頃、占領、併合したダールバイの地で反乱が起こったという報告が届いた。これまでも何度か発生していたが、今回は規模が大きいという。
すぐさま、参謀将校と大隊長が将軍室に集まり、対策会議となった。
姿を見せたのは、参謀将校フリードリヒ・セラーニセンとディバイニス・ラールエン、第三大隊長オズヴァルト・グレイグス、第四大隊長エーヴァルト・ノイエンベルク、第五大隊長ヨルゴス・サンクトゥレイ。
第一大隊長と第二大隊長は、現在ダールバイの元首都タクラスに駐留しており不在である。
「反乱は、大隊二つでも対処しきれないほどの規模なのか?」
まず、マルティンが訊いた。
するとセラーニセンが報告書に目を落としながら答える。




