転機2
昨日、更新しそびれた分です。
だが、今までにお目にかかったことのないタイプのものだ。というより、紋章と呼んでしまってよいものなのか、定かではない。
ティケの左手の甲に浮かび上がった紋章は至ってシンプルなもの。というより、シンプル過ぎて、紋章としての体裁を成していないというのが正しい。
起動部が無いのは、この紋章が既に起動しているからだと解釈出来るが、動力部に相当する部分が見当たらない。それは論理部もだ。
その意味では、手の甲のそれは紋章ではなく、ただの紋様の様でしかない。少なくともティケにはそう思えた。しかし、ギムル師は「この紋章は……」と呟いたのだ。
「これがなんだか知ってるんですか?」とティケ。
「知っている、と言って良いのかどうかも判らないがね。これが、想像通りのものだったとなると……」
フードの下から、ぎろりと鋭い視線がティケに突き刺さる。
「ひぃ! すみません!」
怯えるティケ。
それに対してギムル師はふぅ、とため息をついた。その途端、師から漂って来ていた怒りオーラが急減する。
ティケはごくりと唾を飲み込んでギムル師の次の言葉を待った。だが、返ってきたのは全く想定とは違う質問だった。
「お前が昨晩、発動したのは、『ファルマロス版』に含まれる『非物理存在の物理化』で間違いないね?」
「えーと、あの……」
ティケは言葉を濁す。自分の発言でこれ以上、罰が重くなるのを危惧しているのだ。
「お前がやったことは全てお見通しなんだよ。だから、お前が罰を受けることは確定済みだ。だが、素直に白状すれば、罪を軽減してやっても良いと考えている」
「本当ですかっ⁈ 喋ります、何でも喋ります! 訊いてください!」
「よろしい。では、もう一度訊く。……お前が昨晩、発動したのは、『ファルマロス版』に含まれる『非物理存在の物理化』で間違いないね?」
「そうです。間違いありません」
「あれの励起内容について、発動前はどこまで理解していた?」
「魂を受肉させるためのものだと理解していました。ただ、魂をどうやって用意するのかまでは判らず……」
「お前のレベルではよく解釈できたと言ってやるべきなのだろうが、あの紋章は、そんな生易しいものではない。そのことは、身を以て理解したのではないか?」
「はい、多分」
ティケは項垂れる。
「では、今、お前には憑いているんだね?」
「憑いている、というべきか判りませんが、あたしの隣に居ると思います」
「よろしい。では呼び出してくれ」
「はい。サトゥラヒン、出てきて」




