悪魔の正体
『どんな願いでも叶えると言っているのだぞ! それも3つ! 3つだ!』
しかし、ティケはペンを止めようとしない。
『判った! 3つと言わず、お前の生が続く限り願いを叶え続けると誓おうではないか!』
ぴたりとティケの手が止まる。
『それ、本当?』
『もちろんだ』
「でも、死んだら魂を奪うんでしょ?」
『そんなことはしない! 俺に必要なものは魂ではない、契約なのだ!』
「どういうこと?」
悪魔は、観念したように小さくため息をついた。
『今の俺という存在は仮初めのものだ。それは判るな?』
ティケはこくりとうなずく。
『俺がマテリアル界に固定されるためには、マテリアル界との関わりが必要なのだ』
「それが契約、ってこと?」
『そうだ。正直なところ、契約であれば中身は何でも良いのだ。だが、お前は俺を具現化してくれた。契約のついでにそのお礼が出来ればと思ったのだ』
「悪魔とは思えない、優しい台詞ね」
『悪魔だと?』と悪魔は不本意そうに言い返してしばらく沈黙する。それから、嫌悪感と言って良い表情をその顔に浮かべて、『俺は悪魔などではない』と吐き捨てるように言った。
「見た目は悪魔そのまんまなんだけど」
『失礼な! 俺は想天第三翼に生まれし、天を駆り地を統べる黒肌の者。倶天共に負け、こんなところまで流れてきてしまったが、元は崇拝される立場だったのだぞ?』
「確かに、悪魔を崇拝する人も居るけど」
『そう言う意味ではない。そうだな、この星の概念では俺は〈聖獣〉のようなものだ』
「せいじゅう?」
『聖なる獣という意味だ』
「聖なる……?」
『どうした?』
「言って良いのか判らないけど、あなたの姿は悪魔その物よ? 頭には角、口には牙、背中には蝙蝠みたいな羽根。どれをとっても、とても聖なる者とは思えない」
『そのようだな』と、自らを聖獣と名乗った悪魔はいったん肯定する。
『だが、聖も邪も、その姿形は世界によって変わるものだ』
「世界?」
『そこから話さねばならんか。……良かろう。話してやる』




