処刑5
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「本当のことです」とスティクトーリス公爵。
「集会に参加していた者たちは、どうしたのですか? 同じく捕縛したのですか?」
「その者たちについては現在調査中です」
「調査中なのに、主犯の処刑を実行するのですか?」
「そうです。まずは早急に、バルミスを処刑しなくてはならないのです」
スティクトーリス公爵のその言葉には、切実さと共に焦りが感じられた。そこから、公爵が本当にそう考えていると言うことが読み取れる。
「なぜ急ぐのですか?」
スティクトーリス公爵はごくりと喉を鳴らしてから告げる。
「バルミスは危険な男です。彼を生かしておくことは帝国のためにならない」
「帝国のため、ですか……」
「そうです。このまま彼を生かせば、いずれは帝国が崩壊する可能性すらある」
「しかし、バルミス将軍は帝国のために働く人物と理解していましたが?」
「それは違います、マルティン閣下。彼が働くのは帝国のためではないのです」
「では、何のためだと?」
「バルミスが言うには臣民の為だと」
「臣民のため……?」
公爵の言葉の意味を、マルティンは計りかねた。
マルティンが知るバルミス将軍は、帝国のことを第一に考える人物だった。公爵の言葉は、このイメージとは相違している。
どのような関連性があるのかマルティンには見当もつかないが、バルミス将軍の心の中では『臣民のため』が、ひいては『帝国のため』に繋がっているのか。
それとも、表では『帝国のため』と言いながら、裏では『臣民のため』に動いていたのか。
マルティン個人の思いとしては、前者であって欲しいと望んでいる。しかし、情報が足りない。
バルミス将軍の真意を計るためには、本人に問うのが最も妥当だとマルティンは判断した。
ちなみにだが、『皇帝』であるハリトゥストゥーニオス、『王族』であるマルティン、『貴族』であるスティクトーリス公爵の頭の中では、『帝国』と言えば自分たちのことを指すのであり、その中に『臣民』は入っていない。つまり、『臣民』とは『帝国』を支えるための巨大な道具としか理解されていないのである。実際には『臣民』の活動が帝国を支えているのは明々白々であり、『臣民』の存在が無ければ帝国も存在し得ない。これに対し、バルミス将軍は『臣民』出身なこともあってか、『帝国』における『臣民』の役割を理解し、重要視していたと言えるだろう。
「陛下、バルミス将軍を問いただす機会をお与えください」
皇帝が「むう」と唸った。
マルティンはその反応に訝しみと不安を覚える。
「ただスティクトーリス公爵の言われたことを本人に確かめるだけです」
「そ、それは……」
皇帝の言葉は歯切れが悪い。
ますます疑念が強まる。何かを隠しているのは間違いない。
マルティンは鋭い目つきで皇帝を睨みつける。皇帝はさっと視線を逸らし、それから助けを請うように公爵を見た。
スティクトーリス公爵は、何か、覚悟を決めたような表情になって小さくため息を付く。
「会うことは叶いますまい」




