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ペーター・バルミスという名の将軍3

「衛兵! 陛下を寝室にお連れしろ!」

跪いていた男は立ち上がると、兵士に指示を出した。すると衛兵たちがわらわらと寄ってきて、皇帝を抱きかかえて去って行った。

賊の死体に衛兵たちが羽織っていたマントが掛けられ、凄惨な状況を覆い隠した。

「皆様、お静まりください!」

バルミスは、玉座の前に立ちはだかり、未だ騒然とする貴族達に大声で呼びかけた。

「賊は始末しました。やり方に問題があったことは謝罪いたします」

貴族の中には、気分を悪くして吐いている者、失神してしまった者などが続出していた。戦場を駆けることを忘れた貴族にとって、この一件は精神的にキツいものがあったようだった。

「せ、せっかくの祝賀会を汚しおって!」

一部の貴族からは不満の声が上がる。

「その点は幾重にもお詫びしましょう」

バルミスは深々と会釈すると、玉座へ続く階段を降り、大臣を見つけると、そちらへ歩いていこうとする。

そのバルミスに、マルティンは知らずに話しかけていた。

「将軍、まずは返り血を洗い流して来られてはどうですか? その姿では誰もが恐れを成して近付こうとはしないでしょう」

我ながら、よくそんな言葉が出たものだと、マルティン自身、驚いた。知人ではない人物にいきなり話しかけることが出来る程、マルティンは社交的ではない、と自分では理解しているつもりだったのだが。

「おお、殿下のおっしゃる通りです。いったん、中座させていただくとしましょうか」

バルミスはその頬にわずかに優しげな微笑みを浮かべーーと言っても血で汚れていたため、ほとんどの者には凄味のある笑みにしか見えなかったがーー血の滴るクレイモアを背中に担ぐと祝賀会会場を後にしようとする。

バルミスが歩き出すと、その方向へまるで地面が割れるかのようにまっすぐに、貴族達が道を空けた。

「失礼します」

バルミスはあくまで丁寧な態度を崩さず、しかし威容は堂々として、出来上がった道を歩いていく。

マルティンは自分でも知らない内に、バルミスの後を追いかけていた。ただ、バルミスという人物に興味があった。

賊を一振りで葬り去る圧倒的な武量。

それでいて傲慢さの欠片も見せない謙虚。

そして、中傷を意に介さない精神力。

そう言ったものが、いったいどうして一人の人間の中に共存出来ているのか、少年のマルティンにはなかなか理解できなかった。

理解は出来なかったが、バルミスの中に、自分が求めるもの、欲しているものを見たように思った。

会場の外の廊下に出たところで、バルミスが振り返り、

「マルティン殿下、私に何か御用ですか?」

と訊ねてくる。

「う、いや、その……」

マルティンは、しどろもどろになった。用などある訳がない。

「さあ、会場に戻られよ。私も後から参ります」

そう言ってバルミスは笑顔になった。

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