表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/204

雷光(フルグル)6

間を置かずに、フルグルの姿がかき消える。実際には曖昧化により、存在が認識しにくくなっているのであって、消失したわけではない。

レーイは続けて言う。

「この者はこの者である。最も力強き時代のこの者である」

すると、仰向けに横たわった状態の男の子が出現する。

この12〜3歳の男の子の姿こそが、フルグルの本来の姿だった。どういう経緯で身体が成長したのかは、イグニクルスにもアレーナにも判らない。ひとつ言えるとすれば、精神的な要因が影響したであろうことだけだ。

アレーナがまず先にフルグルに掛け寄り、彼の様子を確認する。

「……う、あ」と、フルグルは呂律の回らない口で何かを言おうとする。

しかし、それを聞き取れる者はいなかった。

「闇魔術でも無理なものは無理、なのじゃな」

次いでフルグルに近づいてきたイグニクルスは、感慨深げにそう言うと、「エーテル消費量の減少、止まらず。マテリアル支配率、落下止まらず」と付け加えた。

「フルグル! 私が判りますか? フルグル!」

アレーナが呼びかける。

「あ、れ……な」

「すみません、フルグル。あなたの霧散を止められそうにありません」

アレーナが無念そうに謝罪するのに対し、フルグルは微かに笑みを浮かべた。

「あ、りが、と」

力を振り絞ってフルグルはそう言い、さらに笑顔を作った。

その笑みには、先ほどまでのような汚れた雰囲気は無く、子供が無邪気に喜んでいる、そんな風に見えた。

「フルグル……」

アレーナには、それだけで理解できた。

彼は、満たされたのだと。

理由は判らない。根拠も無い。だが、フルグルの笑みは、遠い日にアレーナが目にした笑みに似ていた。

いくつもの淡い光の球がフルグルの身体から分離して大空へ還っていく。精霊が最期を迎えたときに現れる分離現象だ。

「フルグル……」

フルグルを構成していたマテリアル部分、すなわち肉体がキメの細かい土となって崩れた。同時に、大きな光がそこから解き放たれる。

『ありがとう、アレーナ』

頭に直接響いてくるその声はフルグルのものだった。マテリアルから解放され、ほんの一時にせよ、彼の精神は自由になっていた。

「私は何もしていません」とアレーナは首を振る。

『最後に元の姿に戻れた。まあ、いろいろと後悔も多いけど、これで良かったことにするよ。それから、アレーナの(あるじ)の人』

「何か?」

『アレーナを頼みます。それから、僕の配下の精霊は、あなたのコマンドを受け付けるようにしておいた。使ってやって欲しい』

「それはありがたい。礼を言う」

『いや、救ってもらったお礼だよ。こちらこそ、ありがとう。……ああ、これでようやく、あの人と一緒になれる。好戦性精霊じゃない、ただの、精霊として……あのひとと……』

フルグルの声は小さく微かになっていき、やがて聞き取れなくなった。フルグルのアストラル体である大きな光の球は、いくつもの球に分かれ、それに連れ小さくなっていく。爪の先ほどの大きさにまで分解したそれらは、一つ一つ、まるで意志を持っているかのように思い思いに、あるいは地面へ、あるいは天空へと飛び去っていく。

そうしてすべての光の球が消え失せた。

残されたものは土塊のみとなる。アストラル的存在である好戦性精霊にとっての死とは、己を構成するアストラル層の分解のことである。

そして、今、レーイたちが見たものがまさしく、それだった。

フルグルという精霊は、たったいま、亡くなったのだ。

エライアスは言葉が出ないまま、成り行きを見守るしかなかった。

雷光(フルグル)。その名は記憶に留めておこう」

と、レーイは誰に告げるでもなくそう言った。

彼女が感じている思いを、エライアスも少しは理解できると感じていた。

レーイ視点はいったん終了し、次回からは違う主人公視点になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ