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雷光(フルグル)5

『癒し』などと大層な表現だが、実際には『曖昧化』し、それを解除するだけのことである。

ただし、『曖昧化』は、マテリアル層における初期化を伴わせることが出来た。初期化と言っても『最初の状態に戻す』だけではなく、『任意の時点の状態に戻す』ことも可能(そうでないと、例えば人間を曖昧化した場合、初期化により卵子まで戻ってしまうことになる)。

曖昧化とは、言い方を変えれば、存在自体を物質的時間的制約から解放することを意味する。ゆえに、曖昧化されたものが曖昧化を解除される時、どのように物質的時間的制約を受けるかは、制約を解放された時点の状態に依存しない。一方で曖昧化されたものには記録もしくは記憶が残されている(曖昧化の影響は受けるが消失する訳ではないので)ために、この記録もしくは記憶を元として姿形、存在経過時間などが再確定されることになる。時間の巻き戻しではないので、記録もしくは記憶が失われることもない。なお、レーイはその確定に介入することができる。

つまり、『闇の癒し』とは、過去の姿形に戻すことが出来るということであって、けして修復や治癒という類のものではない。


「彼は敵対行動を解除していない。曖昧化は使えない。それに、曖昧化したとしても無理かも知れない」

フルグルを助けたいアレーナには聞くのが辛いことを、レーイは淡々と告げた。


ーー初期化はマテリアル層にしか機能しない。

つまり、精神を司るアストラル層には影響を与えることがない。少なくとも、今までレーイが闇魔術を行使してきた経験では、そうである。

好戦性精霊は、その本質としてマテリアルよりもアストラルに寄った存在であり、その点で人間とは存在構成が異なっている。

確かに肉体というマテリアルが精神というアストラルに影響を及ぼすことはあり得る。しかし、マテリアルへの依存度が薄い精霊では、それを期待するのは難しい。

これに対してフルグルは、その言動からみて、精神を病んでいる可能性が大きかった。

つまり、フルグルには『闇の癒し』など効果が無いかもしれない。

レーイが言っているのはそう言う意味だった。

だが、曖昧化がもたらす効能がアストラルにまで及ぶのならーーつまり、レーイすら知らない闇魔術の性能があるならば、話は別。ただし、その場合、どのような副作用が生じるかは不明。


フルグルが前のめりに倒れ込んだ。そのまま起き上がる様子は無い。

なにも感知できないエライアスは、はらはらしながら見守るだけだ。

一方、アレーナは、冷静な声の中にも僅かに焦りを感じさせながら、状況を解説する。

「フルグル、精霊活動に支障が出ている模様。エーテル消費量急激に減少。マテリアル支配率も落ちています」

要は死にかけているということ。先ほどの大量の落雷による攻撃が、フルグルにトドメをさしたようだった。

「レーイ様、どうか、お願いいたします」

アレーナが懇願する。

レーイはあまり表情を変えなかったが、少しだけ困惑していた。眷属であるアレーナの願いは叶えてあげたい。だが、それは確実に出来るとは限らないのだ。

そんなレーイに声をかけたのはエライアスだった。

「レーイ、やってみたことが無いなら、やってみなくちゃ始まらないよ?」

レーイはぴくりと肩を振るわせて、エライアスを見た。

「まずは試してみること。話はそれからじゃないかな」

「……エライアスの言う通りだ。アレーナ、上手くいかない時は許して欲しい」

「御心のままに」とアレーナは答えた。

レーイはフルグルの所へと歩いていき、彼の顔の前に立った。

フルグルは意識が混濁しているのか、腹ばいに倒れたまま、焦点の定まらない目でレーイを見る。それを見返していたレーイは、ふう、とため息を付いて目を瞑り、それからゆっくりと目を開けた。

「この者はこの者であり、且つこの者でなし」

レーイのこの言葉は呪文ではない。言ってみればレーイ自身に対する意識付けである。そうすることで、魔術に対する集中力を高めているのだ。

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