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雷光(フルグル)2

「むっ」とイグニクルスが唸ったと思いきや、4人を囲うようにして、材質が不明な壁が出現した。続いて、その壁に外側から何かがぶつかる派手な音。それは何度も何度も激しく壁を叩きつけたが、壁はびくともしなかった。

やがて音が聞こえなくなる。

それとほぼ同時に壁も消失する。

視界が元に戻る。

そうしてエライアスが目にした光景は、壁が現れる前とは様相を異にしていた。

半壊状態だったドアが消えて無くなっている。そればかりではない、屋敷の壁が4人を中心にして消えている。それから、木製の床には真新しい複数の線状の傷跡。

何が起こったのか、エライアスはまるで理解が及んでいなかった。その意味で、彼の好奇心が騒ぎ出すのは当然のことだったが、エライアスはそれを飲み込んだ。

まるで理解できていないとは言え、『これが攻撃である』ことは理解できる。つまり、何者か--おそらくは〈雷光〉と言う名の好戦性精霊--が、エライアスたちを敵と見なしていると言うこと。

それを理解したゆえにエライアスは沈黙を保った。そしてこれは賢明な対応だった。

再び、壁が4人を守って出現する。

同時に何かが壁に叩きつけられる。2度目の攻撃ででようやく、壁にぶつかっているのが物理的なものではないことに、エライアスは気が付いた。

「風……?」

「そうじゃ。風の精霊の攻撃じゃよ」とイグニクルスは応じた。

下位の好戦性精霊による〈鎌鼬〉。それが攻撃の正体だった。威力はおそらく、人間の胴体ならあっさりと両断するくらいはあるだろう。

逆を言えば、アレーナの壁による防御は、それを防ぎきるだけの性能を有していた。

イグニクルスは続けて、「アレーナよ、そのまま継続せよ。儂が、焼く」と宣言する。

「承知しました」と答えたアレーナが壁の維持に専念する傍らで、イグニクルスが何かを口ずさんだ。

途端、壁の隙間から閃光が差し込む。しかしそれも一瞬のことだった。そして同時に攻撃が途絶えた。

アレーナの壁が消失し、再び周囲の様子が明らかになる。

館の床や壁に傷が増えている他は、先ほどとあまり変化はない。

「アンゲロス、アルクアンゲロス級はすべて焼いた。他に反応は一体だけ。先を急ぎましょうぞ」「判った。ありがとう」とレーイは答えた。

先頭をアレーナ、次にレーイとエライアス。最後にイグニクルスという陣形を取り、4人は2階に上がる。階段は破損が激しく、ところどころ穴が空いていたが、誰も踏み外すことなく無事に2階に達する。

そこから、同じように朽ちかけた床をみしみしと言わせながら奥へと進む。

しばらくして、アレーナはとあるドアの前で立ち止まり、「ここです」と告げた。

そのドアは、他に比較するとかなり原型を留めていた。

「どれ、儂が行こうか」とイグニクルスが金属製のドアノブに手をかける。

その手がノブに触れるより早く、その手を拒否するように小さな光がノブから放たれ、ばちっと大きな音がする。例えるなら静電気のように見えるそれは、しかし静電気と言うにはあまりにも大きかった。

「うむ?」

思わずイグニクルスもひるむ。ドアノブに伸ばした彼の右手は、手のひらが焼けただれていた。

「大丈夫?」と問うレーイに、イグニクルスは「これしきのこと、蚊に刺されたほども感じませぬわい」と言ってわずかに笑う。

神代の大戦を生き抜いた精霊にとって、これくらいは本当に何でもないのだろう。それを証明するかのように、次の瞬間にはイグニクルスの手のひらは元に戻っていた。

エライアスがその様子を興味深げに眺めているが、それは置いておくとして。

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