使役精霊
「ありがとう。それで、君は次に何をするつもりなのかな?」
レーイは、その言葉に、小さくうなずいた。
「将来の戦いに備えて、力を蓄える」
「魔術の修練を積む、と言うこただね?」
「いいや」とレーイは首を振り、「判りやすく言うなら、仲間を探す」と告げた。
「仲間?」
「そうだ。魔術に長ける者、剣に長ける者。様々だが、戦いに長じた者と契約を結ぶ」
「契約?」
「契約を結んだ相手は私の眷属となり、私と行動を共にする」
「先ほどのアレーナさんと同じように、だね?」
「そうだ」
「そう言うことなら、ちょうど良い相手がいる」と割って入ったのはケルスだった。「おそらくは下位の好戦性精霊が暴れ回っているらしい」
「下位の?」
レーイが反応したのはその点だった。
個体によるが、下位の好戦性精霊は意志を持たない場合が多い。そう言う個体は上位の精霊に使役される役割を担っている。さらに、上位のそれに比較すれば、能力値が低い。そのため、レーイからすれば、そのような下位の精霊を眷属とするより、下位の精霊を使役する上位の精霊と契約した方が戦闘力の向上という点では効率が良い。
しかし、ケルスはこう付け加える。
「使役されている可能性がある」
「それは、そなたのようなフェルマイルの仕業か?」とレーイ。フェルマイル族も精霊使いを名乗ることから判るとおり、精霊を使役することが出来る。
レーイの問いにケルスは不機嫌そうに首を振って告げる。
「違う。我らフェルマイルは人間に危害を加えるような使役は行わない」
きっぱりとしたケルスの物言いに、レーイは「失礼した」と素直に謝罪してから、「ならば、何者が?」とケルスに問う。
「判らんが、何者であれ、その精霊を使役している者はと契約を結べば良いのではないか?」
「確かに道理だ。だが、そなたの言葉から察するに、使役者は人間に危害を加えるような輩と言うことだな」
「強ければそれで良いのだろう?」
ケルスは皮肉交じりに言った。
「強くても協調できなければ意味が無い。だが、当たってみる価値はありそうだ。ケルス殿、詳しく聞かせて欲しい」
「良いだろう」
ケルスが支援してくれるーー。
その事に、レーイは不安を覚えない訳ではない。ケルスは、レーイの戦う相手がエヴァになった途端、敵に回るはずだからだ。何かしらの罠である可能性は皆無ではない。そのため、レーイは用心も怠らないつもりだった。
ケルスの話は以下のようなものだった。
最近、ゲイル市の川下地区で、何もしていないのに怪我を負う市民が増えている。かすり傷から腕が千切れる寸前のような深い傷まで程度は様々。
不思議なのは、被害者たちは、どの人もいつ怪我をしたのか判らないと証言しているということ。つまり、『犯人が目撃されていない』と言うことだった。すでに被害者は10人を優に超えているにも関わらず。
巷では鎌鼬だとか、精霊のいたずらだとか冗談半分に囁かれている。




