宿屋のケルス2
「君はフェルマイル族を知っているのか?」とエライアスが会話に割って入る。「そうなんだよ、こんな奴があの伝説の一族の末裔だなんて、あり得ないよね?」
「知っていると言っても、知り合いに同じ赤髪がいると言うだけだ。その者が自分はフェルマイル族だと自慢していた」
その赤髪は『カヴァリエリの徒』の1人だった。レーイにとっては仲の良い相手ではなかった。というより、レーイと仲の良い『カヴァリエリの徒』は、おそらく居るまい。
「ほう? 小娘、フェルマイル族の知り合いが居るのか?」
ケルスの興味がレーイに向く。
レーイはこくんと頷いて見せた。
「小娘、名と出身は?」
「名前はレーイ。出身はカムネリアだ。よろしく……」
レーイが言いかけた言葉を遮って、ばんっという音が、レストランに響いた。それはケルスが木製のカウンターを勢いよく叩いた音だった。
レーイもエライアスも、客たちも驚いて、複数の視線がケルスに集中する。しかし、ケルスはそんなものはお構いなしに、
「カムネリアだとっ!」
と叫んだ。
「……そうだが」
「ならば、エヴァと言う娘を知らないか? 歳はお前と同じくらいのはずだが」
レーイは思い出すまでもなく、即座に答える。
「2歳年下のエヴァ・アルセスという者なら知り合いにいる。その者が自分をフェルマイル族だと自慢していた者だ」
「エヴァはカムネリアに居るのか?」
レーイは、ふるふると首を振る。
「今は居ない。師の命令を受け、大陸のどこかに旅立ったはずだ。……そうか、あの者はそなたの縁者か」
赤い髪のフェルマイル族。これほど明確な血筋を示す物は他にはあるまい。
「娘だ」
と呟いて、ケルスは拳をぐっと握り込む。その顔は嬉しさと悔しさ混じり合う、不思議な表情をしていた。
長い間探していた娘が生きていたという喜び。
一方で、得た情報からは、すぐに探し出すことは無理である悔しさ。
「生きていると判っただけでも良しとしよう」とケルスは悔しさを飲み込んだ。
「エヴァに会う機会は、ある」とレーイ。
「それはいつだ?」
「判らない。だが、会うことにはなるだろう。ただし、その時は私とエヴァは殺しあうことになる」
「なんだと⁈」




