4 天地誕生と海と飛翔
「とりあえず何するかなぁ」
ひと仕事終えて伸びをしてそう言う。
今度こそ、本命である世界創造を始めるのだ、キャラメイクもとい、話し相手の創造とはまた一筋違った仕事になることは間違いなかった。
いや、所詮は同じ妄想上だから変わらないのか?
「ま、いいや」
「世界創りの初めってマジで何すればいいんだ……?」
「えーっと、俺の習った内容だと…………」
自分の高校二年生までの拙い知識を引っ張り出して、よく考える。
宇宙って、確か最初に無からビックバンが起こって、んで宇宙が広がって、熱くなって元素が撒き散らされて、それからなんやかんやあって、恒星やら惑星やらが出来たんだよな確か……これ本当に合ってるのか?
「くっそこんな事なら、地学の授業ちゃんと受けとけばよかった……」
「やっぱ法則とかって無視してそのまま想像で創っていくか」
そうと決まったら、パッと行動に移すべし。
高橋空の脳内に浮かんだ世界は、前世と少しだけ似通っていた。
その世界はとても奇異な世界であった。
だが、その想像した世界には圧倒的に絶対的に必要なものがなかった。
それは、生命を扱うという覚悟のようなもの。
その覚悟の重みに気付いて後悔するのは先の話…………
「むむむむむ」
「せい!!!」
念じること数秒、目を開けた空の前には、前世の太陽系と同じような、恒星を中心として公転する惑星群があり、また、その遥か遠くには、天の川のような星々の集まりが広がっていた。
そして、それを創った張本人は、それらを俯瞰出来る位の遠くの異空間から自分の創った世界を見ていた。
その異空間とは、創造神やそれが認めたものしか存在を許されない、外界との干渉を隔絶した空間であった。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「やっぱり現実にしてみると全然違うな!!!」
だが、その現実は地球があった世界では到底ありえないような様相を呈していた。
その光景は、前世界よりも恒星は光をより増し、太陽系の惑星群は、水金地火木土天海などよりも多く、数で言うと水金地火木土天海等々々…………といった位にえげつない数の惑星が連なっていた。
それだけでは無く、太陽である所の恒星は太陽よりも五回り程大きく、煌々と輝いている。
ましてや地球に位置する惑星の周りを回っている月のような衛星に至っては、その惑星のの3/4の程の大きさである始末。
空自身が法則等は完全に無視して創りたいままに創った結果である。
もしも、前任の創造神がいたら、腹を抱えて笑っているような出来であったことは間違いなかった。
「あ、あーっはははははははははは、やば泣きそう」
「こりゃマジやばいな」
創った本人も大爆笑で、思わず出てしまった涙を拭いていた。
「うーし、じゃあ世界何となく創ったし、地球の詳細を決め、いや、先に名前か」
「惑星の名前は前の世界から取ってくればいいから、新地球、ニューアースでいいや」
ここでは『安直かよ』とツッコミを入れる者もいないのである。
「じゃあ、水を創って、地脈創って……って」
と複雑に考えようとして、気付く。
「ていうか、全部想像でいいのか」
創造神って結構楽ー!と気楽な事を考えながら、海があって、地脈があって、単細胞生物やらが居てーだなどと知る限りの何となくの情報を想像していく。
創造神の主たる力の創造にはちょっとした修正機能が付いているらしく、先程の星々の創造が成功したのと同じく、多少大雑把な想像でもほぼ想った通りに事が進んでいくのである。
想像を終えた空がほぼ地球惑星、ニューアースの方を見ると、
「お、何か青っぽくなってる!」
と、実際の距離にすると恐ろしく遠くから出来栄えを確認した。
再び、空の想像通りに創造が完了し、ほぼ何もしていないのに空は何だか達成感を感じているのだった。
空はふとと思った、今の惑星ってどうなってるの?と。
気になったら突っ込む性分の空は、ニューアースへ移動したいと念じると、フッとその姿を、暗闇の宇宙より消した。
空が姿を消した空間で若木が蠢く。
置いていかれた虚無の中でも、メキメキとその若木は成長していったのだった。
そして、その中で宿る意思もすくすくとその想いを育てていった。
波が岩にあたる特有の音が空の耳に響いた。
無音の空間にいた空からすると久しぶりの音であった。
転移を終えた空が目を開くとその前には、
「な」
「波の音だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うみぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
剥き出しの岩壁に打ち付ける波、一面青の広い広い母なる海があった。
波の音、海、久しぶりの現実らしい光景?に胸踊らせた空。
異常な程に高くしたテンションの所為か、そのまま空は、十数メートルはあろうかという崖から飛び、海へとダイブしていた。
ザッパァァァン!!!
勢いよく飛び込んだ空を迎え入れたのは、入水時の爆音、それと深く、そして神聖な青で彩られた原初の海の景色だった。
「ぶっば、ぼぼばべばばば!(うっわ、ヤバいぐらい綺麗!)」
「ぶばべ、ぼぼばぶびぶぶばぼばぼば(海って、こんなに綺麗だったのか)」
ふと、気付く。
(てか、全然息苦しくない?)
(それに、熱い、いや温かい?)
それもそのはず、今、空が入った海は異常に大きい太陽の熱エネルギーに影響されて地球の温度よりもずっと高い水温になっており、常人では『あづっ』となる位の水温になっている。
だが、空は現在創造神である。
実は創造神になった空には、空が不快に思うような過度な感覚は消え、その場に瞬時に適応することの出来る万能な身体になったのであった。
例えば、今のように熱湯がお風呂ぐらいに感じたり、呼吸せずとも水の中に潜り続けられるし、矢の雨に打たれても「チクチクして気持ちいい」くらいにしかならないのである。
神になったおかげで大丈夫なのかな?と考えて思考を切り替え、眼前の景色を改めて見やる。
(やっぱり、凄く綺麗な海だな…)
今、空が見ている海は何のても加わっていない純粋なる海。
自然の作用すらも加わっていない、岩石のプールに入ったただの海水でしかないはずであったが、巨大な太陽がもたらす自然光による反射で輝く海、それに、目に見える生物一つすら無く、サンゴや昆布といった環境生物すらいない海というのは、誰一人も見たことがないのである。
空が思わず見蕩れてしまうのも無理はないのだ。
(よし、何となく現状も分かったし、そろそろ戻るか)
創造物鑑賞に一区切りつけて沖、もとい崖まで戻ろうとする空。
ピコーン!そんな音が流れる気がした。
空に子供じみたアイデアが思い浮かぶ。
(神の俺なら、海の中でビューンって勢い良く海から飛び出して、カッコよく戻れるのでは!?)
(そうと決まったらさっさとやるか)
相変わらず行動が早い創造神であった。
(手で勢いを付けて、ビューンってなるように……)
平泳ぎの手のかきを力の限りし、そのまま角度をつけて崖の方へ飛んでいこうとする空。
まず手のかき、と腕を勢いよく振った瞬間。
ブォン!!!
と思った数倍の力でで腕が振られ、豪流をもってそのまま射出される空。
「うわぁぁぁぁなんだこれぇぇぇぇぇぇ!!!」
目にも止まらぬ勢いで海を飛び出し、目的の崖へ一気に到達し、そのまま奥の空へ。
「がぁぁぁぁぁぁバカ行き過ぎだっつのぉぉ!!!」
戻れ!と強く念じるといつの間にか通り抜けた崖にいた。
ふぅと安心して、一言。
「創造神の力、見くびってた……」
そう、空の身体は耐久力だけではなく身体能力も限りなく上がっているのである。
その力は、人間であった頃の空の力を遥かに凌駕しており、同じ感覚でそれを使えばこうなるのは当然のことだった。
「次から気を付けよ……」
と、心に刻んだアホな創造神であった。
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