3 想像と話し相手と種
「あっさりしてんなぁ、けどあの神ならこんな感じか」
「ま、さっさと世界創ろうかな」
そう独り言つと、思考を切り替えて世界が暗くなるようにと念じた。
すると、瞬きの合間に世界は何も無いように暗くなり、自分の身体だけしかない空間になった。
「ふう、やっぱり何も無い中でも自分の身体があると安心感が違うな」
「世界の最初って言ったらやっぱ無だからなぁ」
虚無の中でも、身体が動かせるのであれば精神的にはとても楽になる。
とりあえず何もなくしたのは、自分がいた世界の最初も何もないところから生まれた、という知識があるからだ。ひとまずは、それに倣って空も無から始める。
「最初はまず…」
「物質でも創るか?」
「いやでも法則やら性質やら色々あるだろうし、だるいしなぁ……」
と、グダグダ考えていると、手の内に持っていた種が蠢いた気がした。
「うわっ、なんだきもっ」
反射的に種を放り投げてしまい、種は放物線を描いて、暗闇の地面へぽとりと落ちる。
すると、たちまちのうちに殻を突き破って出た根が、透明な地面に根を張り、街路樹並の大きさの根を張った小さな木が出来た。
「えぇ、こんなんなるぅ?」
そう、変な声をあげていると、木の方から声がした。
脳に直接語り掛けてくるような声、それは黒いもやの創造神の声だった。
『創造神よ、想いを』
「うわぁ、あいつの声だ」
『想いを込めて、私の身体にお触れ下さい』
あいつの声で私の身体にとか言われると、何だかな気分である。
「そっか、創りたい子も想像しないといけないのか」
先程、元神が言っていたことを思い出す。
話し相手になる子……
話し相手、ねぇ……
この想像で、一兆年付き合っていく可能性のある子が誕生すると考えると、さっさと決めていいことではないのは確かだ。
いわばこれは、キャラメイク。
ゲーマーとしては最も凝って然るべき所だ。
編集画面で悩む時間など一時間はざら、細かく決められるならば三時間は固いのだ。
妄想の限り決められるならば、一日中考えてもいいくらいである。
「でも、星とか色々創るしなぁ」
「あんまり、時間掛けすぎてもずっと付きっきりになっちゃうし、それはなぁ」
「うーーーむ」
やっぱり、お喋りな子?それとも友人みたいにするか?
いやはや、人間じゃなくてもアリっちゃアリだな。
なんて考えること数時間。
「あーもうめんどくせ!」
結局、ほぼ一生を共にするパートナーな訳だから、自分の妄想の通りな人形じゃいつか味気なくなってしまうだろう。
つまり、地球でいうAIみたいに、学習していって、成長していった方が面白いし、無感情なただの人間ではうまくやって行けないだろうという結論に至った。
それに管理者といえば、AIのように毅然としたテキパキと仕事をする印象を持たずにはいられなかったのだ。
結論が何となく決まったので、木の前に立ち、手を触れる。
性別は、もちろん女の子。異世界に転生したなら美少女は欠かせない。
性格は、心の中で、先程の通り、共に成長出来るような人間のような子、それでいて無垢なありのままの子を想像する。
顔は自分の好みの感じがいいなぁとぼんやり想っていた。そこは上手い具合に汲み取ってくれるだろうと思っていたのだ。
まぁ仮に、そうならずとも、可愛ければなんでもいいの面食いなのでどうでもよかったのである。
そんな事を思って、手を触れていると、
『畏まりました。あなたのホムンクルスの創造を開始します』
『変更の際は、再び手を触れ想像して下さい』
小さな木は、そう言ってまた静かになった。
「さてと、話し相手も想像したところだし、じゃあ本格的な創造をしていこうかな」
何も無かった暗闇の中で、妙な木が出現したのだった。




