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34 危機と薔薇と神バレ



(何でこの子が俺が創造神なこと知ってるんだ?魔法?刀?いや見た目?でも俺の見た目はニューアースじゃあ分かる筈もないしな……あ!ひょっとしてバグの仕業か!?)


 現在空の脳内では、なぜ目の前の少女が自分を神だと知っているのかという考察を巡らせていた。

 刹那の思考の間に無数の理由が浮かんできたが、それらしい一つの理由を思い浮かべ、リリに尋ねる。


「なぁ、君がそれを知ってるのってティターニアに教えてもらったからか?」


「はい、ティターニア様はたまに空様やイヴ様と冒険したお話をよく聞かせて下さるんです」

「いつもは天真爛漫なティターニア様が、その話をする時だけは寂しげな顔をするんですよ」


「そっか、道理でね」


 ティターニア経由でバレたのであれば仕方ないだろうと納得する空。

 けれど、ニューアースに来てから一日あまりで創造神だとバレたのは、何か思う所がある空であった。


(ティターニアに俺のことは黙ってろって言えばよかった……)

(でもティターニアに会いに行ってた頃は他の妖精なんてウンディーネしかいなかったし、バグが出る前はいつでも会いに行けてたからなぁ……)


 これは仕方ないと心に整理を付け、リリの方に向き直す。

 神であるとバレたことは重大なことであったが、そこまでリリが驚いている様子もない。

 それ以上にリリが言っていた『妖精の森を救って欲しい』という言葉が気になる空だった。


「それで、君がさっき言ってた森を救って欲しいっていうのの詳細を教えてくれるか?」


「はい、私の故郷、妖精女王であるティターニア様が治める妖精の森は今ワイバーン(下位竜)の群れに襲われています。本来ならワイバーンの群れ程度なら簡単に追い払えるのですが……」


「何かあるのか?」


「その群れの長がドラゴン(上位竜)なのです。その長ドラゴンは知能も高く、他にも多数のドラゴンを率いているので私たち妖精の魔法をしても苦戦を強いられています」

「元より妖精という種族は戦いを好まないのもあって、より……」


「そんなことが……」

「それで君は外に助けを呼ぼうとしてこの近くまで来てたってことか?」


「はい、ティターニア様からの命令で一番近くのアルドーへ来たのですが、追手のドラゴンと戦闘になってしまって空様に助られた、という訳です」

「あの時空様の助けが無かったら私は……」

「本当にありがとうございます空様、このご恩決して忘れません」


「いやいや、大げさだって。ギリギリだったけど、助けられてよかったよ」


 真面目なリリの言葉に手を横に振って答える。

 そんな誠実さがあるから大切な伝令役に選ばれたのだろうなぁ、と思っていた空だったが、それ以上にあのわんぱくなティターニアが里の長をしているのだという事実に、500年の時の流れを感じていた。

 

「なぁ、その妖精の森ってウンディーネはいないのか?」


 リリの話の中にウンディーネの影が無いため疑問に思う空。

 空のその質問にリリはうつむきがちに答えた。


「ウンディーネ様ですか……」

「私が生まれる前に里から出て行ってしまった、とティターニア様が仰っていたのを覚えています」

「里を出る前にティターニア様と大喧嘩になったそうで、ティターニア様は喧嘩別れしたことを今も悔やんでいる様子でした。ウンディーネ様がいたらこんなことにはならなかった、とも」


「そうだったのか」

「ティターニアとウンディーネが喧嘩ねぇ……」


 空が会っていた500年前は、超が付く程の仲良しだった二人の意外な別れに内心で驚いていた空。

 そんなことを思っていると、下の食堂へリリ用の食事を取りに行っていたイヴが帰ってくる。

 ティターニアから聞かされていたイヴを見て、わぁと感嘆の声を漏らすリリ。


「綺麗……」


「ありがとうございます。私はイヴ、そこにいらっしゃる空様の従者です」


「あ、この子ティターニア経由で俺たちの素性知ってるからマスター呼びでもいいぞ」


「ティターニア様が……?」


「うん、あのティターニアが」


 先程リリがしていた話を掻い摘んでイヴに説明する。

 するとイヴは、そういうことでしたか、と一呼吸置いてから、


「でしたらマスター、明日はその妖精の森に行くおつもりで?」


「もちろん、朝になったら最高速で飛ばすぞ」


「畏まりました、では町で旅の道具を買う必要がありますね。今日買った道具では長旅には対応できそうにありませんので」

「リリ様、その妖精の森はどこにあるのですか?」


 イヴの美貌に見惚れていたリリがはっとなってから答える。


「あ、えっと、あのリール山脈、あ、私が来た山を一つ越えて、その奥の森です」

「でも、リール山脈はとても強い魔物が巣くっているので迂回しながら進まなきゃいけなくて、最速でも一週間はかかります」


「強い魔物ねぇ、どうだろ、強さによっては直進出来るかもしれないな。明日イレイナに聞いてみるか」


「それがよろしいかと。最短で行くとしても多少は野営する必要はありそうですので、それもイレイナ様に尋ねるのがいいですね」


「よし!じゃあ明日はイレイナに会いに行った後、すぐ妖精の森に出発だ」

「リリもしっかり寝といた方がいいぞ。俺たちは隣の部屋にいるから、何かあったらすぐ言ってくれ」


「そ、空様、報酬の取り決めはしないのですか……?」


「報酬?大丈夫だって、神さまが報酬がなきゃ仕事しないなんてカッコ悪いじゃん」

「それに俺の創った子供たちが苦しんでるなら、きちんと問題解決しないとな」


 創造神としての矜持、自身の創造物の守護。

 その対象には妖精はともかく、ワイバーンたちやドラゴンも例外ではなく、出来る限りの殺傷を控えるよう心に刻んでいた空だった。

 そんな空の言葉を聞いて、感極まった様子のリリ。


「空様、いえ、創造神様……!」


「空でいいって、神って呼ばれるの堅苦しくだるいしさ」

「ほら、まだ疲れ取れてないだろ?寝てな」


「あ、はい。おやすみなさい、空様、イヴ様」


「ん、おやすみー」「おやすみなさいませ」


 そう言って空たちが部屋を出て行ったあと、まだ疲れが抜け切れていなかったリリはすっと眠りに付いた。











 翌朝、簡単な朝食を済ませて冒険者ギルドへ向かう空たち。

 ギルド内でイレイナを探す。

 ふと酒場近くのテーブルの方を見ると、見知らぬ二人と談笑しているイレイナの姿があった。

 深く魔女帽子をかぶっている小柄な少女と、背中に弓を携えた長い耳の美女。

 とりあえず昨日の礼を、とイレイナに話しかける。


「イレイナ!昨日はありがとうな」


「誰よ?……って空じゃない、いいわよあのくらい。女の子も元気そうで何よりだわ」

「はじめまして、私はイレイナっていうの。あなたは?」


「リリ・アルマです。昨日はありがとうございました、空様がイレイナ様のおかげで私と会えたと仰っていましたので」


 リリがぺこりと頭を下げてイレイナに挨拶する。

 イレイナはリリの丁寧な態度をだるそうにしながら。


「大げさよ、昨日は私も用があっただけだから」


「ねぇイレイナ、その人たちは?」


 長い耳の美女がイレイナに尋ねる。

 

「この人たちよ、さっき薬草採りに竜の口の調査依頼に付いていったって話したでしょ?」


「ああ、あなたが珍しく褒めてたわね。私でも剣筋が捉えれなかったーって」


「それは言わなくていいの!」


 少し赤くなった顔をしながら、おほんと一つ咳払いをしてから話し始める。


「この二人が私がいる『鉄の薔薇』のパーティーメンバーよ」

「狩人のユニス、見ての通りエルフでアホ。以上」


「あなたねぇ……」

「ユニスよ、よろしくね。空ちゃんたちはまだ駆け出しなんだから、何か困ったことがあったらお姉さんに言ってね」


「よ、よろしくお願いします」

(エルフだ……ニューアースにもいるんだろうなとは思ってけど本当にいるとは。てかめっちゃ美人だな、流石エルフ)

 

 創った本人でありながら少し驚いている空。

 空の内なる情欲を察したのか、イヴが空に優しい笑みを向ける。

 突然刺さった鋭い視線に背筋が凍る。


(これ多分イヴのだよなぁ、なんか怒らせることしたっけ……?)


 そんなやりとりは露知らず、イレイナがまた口を開く。


「あとは魔法使いのドロシーね、元から無口なやつなんだけど空が来てからもっと無口になったわね」

「ドロシー?どうかしたの?」


「その二人、流れてる魔力が変……」


 伏し目がちに空たちを覗き、指をさす。

 その指の先は空とイヴ。

 首をかしげながらイレイナが聞く。


「どうゆうことよドロシー?昨日二人の魔法見てたけどなんもなかったわよ?」


「そうじゃないの、魔力の質が私たちと違うの。何ていうか、無属性というか何でもありっていうか変な魔力が流れてる」


 空に大きな動揺が走る。

 かろうじて顔に出すことはなかったが、ドロシーという魔法使いの言っている魔力の質というのは全くの事実であるので言い訳を急いで考える空。


 空とイヴが持つ魔力に本来あるべきはずの属性はない。

 それは創造神がゆえであり、どんな魔力にも即座に変質出来る万能の魔力であった。

 そんな魔力の異常性が分からない程馬鹿ではない空は、ニューアースに下り立つ前、自身の表面の魔力を今いる場所の空気中の魔力に変化させる性質を持たせていた。

 イヴにも同様の性質を施し、たとえ他人の魔力を見ることの出来る者に会ったとしても何も怪しまれずに済むようにした空。

 だが、その細工はドロシーの前では全く効果を成していなかった。


「魔力の質ねぇ。魔眼持ちのドロシーが言うならそうなんでしょうけど、そんなに変なことなの?」


「うん、表面の魔力はすごく普通なんだけど、その奥の魔力核はすごく変」

「ねぇ、あなたたち何者?魔法の分類も知らなかったらしいし、魔力も変。もしイレイナたちに何かするようなら私許さないよ?」


 広いつばの魔女帽子の中から、藍色の瞳が空たちをじっと見つめてくる。

 その藍色は妖しげな光を放っており、目を合わせれば取り込まれそうな雰囲気を持っていた。


「ちょっとドロシー、それは空ちゃんたちに失礼過ぎよ」


「ユニスは黙ってて、もし何でもなかったら後で謝ればいい」


 空たちへの視線は外さずに答える。

 ドロシーの許さないという言葉の後から、背後のイヴが臨戦態勢をしているのを感じ取っている空は、この場をどう切り抜けようかと頭を悩ませていた。


 理由を話せば納得はしてもらえるかもしれない。

 だが、万能の魔力の説明の合間に、空が創造神である説明をしなければならない。

 

(別に神ってバラしてもいいだけど、出来ればそういうの知らずに生きて欲しいしなぁ……)


 空は神の存在には何も思わずに順応できたが、普通は自分はあなたたちを創った神です、と言われて、はいそうですか、となる適当な人間はあまりいないのも理解していた。

 それに空が創造神として強大な力を持っていると知った国王や貴族などが、空を自分のものにしようと動くのは、本来あるべき自然な営みではないだろうという思いがあった。


「で、どうなの、何かわけがあるなら話して。じゃないとイレイナと一緒にはいさせられない」

 

「え!?ドロシーには関係なくない!?ねぇ!?」


「イレイナうるさい……!」


 いきなり引き合いに出されたイレイナが抗議するが、睨みを効かせたドロシーの眼光に委縮して黙ってしまう。

 そして、その眼光が空へと向き直す。

 心の奥底まで見透かすような鋭い目が空を捉える。



「ほら、答えて」

 


 高橋空、ニューアースに下り立って初のピンチであった。


 

遅れてすみませんでした……


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